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今までの繋がりに別れを②

認知されない魔法をドラゴンの姿で空を飛んでいると、二時の方向からジャンヌとアリスが現れた時と同様の閃光が煌めく。


背中の上に乗っているアリスに、閃光の元に行きたいと言う旨を話す、


「すまぬが寄り道をしても良いか」


「行こ行こ、私もすっごく気になるのー!」


アリスが両手を広げてそう言い、左手でジャンヌを乗せたミドガルと、同じくドラゴンの姿になった少年に合図を送る。


光源に着いて着陸すると、ローブの様な物を羽織った人間が倒れていた。

人型になって体を揺すってみると、「ぅぅっ」と呻き声を上げて目を開く。


地面に手を付いてゆっくりと起き上がった人間を補助して、取り敢えず座らせる。


「ほれ、こんな所で寝ておっては風邪を引くぞ」


街で買った糸で作った布団を掛けて、冷えた体を温める。

アリスがその上に乗って人間の体を抱きしめて、子ども特有の高い体温で更に効果を上げる。


「ぎゅぅーだよ、温かいでしょ?」


そう言って少し戸惑い気味の人間の顔を見上げて、笑顔でアリスは胸に顔を埋める。


「あの、有難う。温まった」


そう言って人間は言葉を返すが、寝息を立てたアリスは返事をする事無く眠っている。

初対面の相手の腕の中がそんなに気に入ったのだろうか、私が寝かせるのと殆ど同じスピードで眠りに落ちた。


少し敵対心が生まれた心を理性で圧迫して、腰に下げていた水筒から水を器に注いで人間に渡す。


「有難う、こんなにしてもらって」


器を受け取って水を飲み干した人間は、アリスを抱き上げてから立ち上がり、私、ミドガル、少年に頭を下げる。


「すまぬな、アリスは私が抱いておる」


眠ったアリスを人間から受け取って、話を聞いてみることにする。


「おぬしの名は何と言う」


そう人間に聞いてみるが、すぐに返事は帰ってこず、頭を抱えて、


「えーっと……」


という状態で自分の名前すら分かっていない、ローブの下にはシンプルな服を来ていて、真ん中に裂け目みたいなものが付いている。

裂け目を指で突いてみると、鉄のようにひんやりしていて、匂いを嗅いでみると確実に鉄だと分かった。


「して、その服はなんじゃ?」


思い出す作業をしている人間に問い掛けると、えっ知らないのと言う顔で見られるが、ミドガルに視線で聞いても顔を横に振る。

ジャンヌとアリスも同様に首を横に振り、完全人間がアウェイになる。


「知らないのか、ジャージを」


「ジャージ?」


「これは星坂上ほしざかのうえ高校のだけど」


「ほしざかのうえこうこう? それは未知なるものか? 見慣れぬ服、分からぬ物、随分と博識じゃな」


「面白い世界だな、じゃあスマホすら知らないのか?」


ジャージとやらの穴から板を取り出した人間は、板の表面に文字を浮かび上がらせて、表面を指で擦ったり押したりする。

その度に板の表面が変わり、よく出来た景色の絵まで描き始める。


「ほー、良く出来ておる絵だな。おぬしが描いたのか?」


見せてもらった板を眺めてから少年の顔を見上げると、何やら微妙な顔をして頭を搔く。


「スマホを知らないか。はっ! ならこの世界は異世界で、俺は最強の異能を手に入れている筈。こいつはきっと最初助けてくれて後で死んじまう良いやつ、この場は任せて逃げろのやつか」


突然私が死ぬなどと失礼な事を言い出した人間の頭をひっぱたき、


「聞いておるのか小僧。急いでおるんだ話は空の上じゃ、不思議な板を持っているなら手放すわけには行かぬ」


「頭は駄目よ〜アイネちゃん、ぶつけるなら全て私に〜」


「うるさい違う黙れ間違い不正解ドマゾ変態駄肉。さっさと行くぞミドガル」


「あぁん、アイネちゃ〜ん。もう少しだけ声を聞かせて〜」


飛び上がろうと出した尻尾にミドガルが掴まり、地面を軽く蹴って浮き上がった体が、急速に地面に向かって倒れる。

尻尾に頬を擦り付けるミドガルを振り回すが、まるで変態毒野郎は離す気配がない。

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