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自分が生き甲斐なやつは④

「よう来はったアイネ、まぁそこに座り」


オシナが生活している城の天守に顔を出すと、座っていた鈴鹿が空いている座布団を手で示し、トコハナと向かい合う形で座布団に座る。

スメラギと共に入って来たオシナが前を横切って所定の位置に座り、オシナの手の動きを見てトコハナが頷く。


「落ち着いて聞いて下さい、貴方が眠っている間に入った報告に、パレス王国の国王が謀叛に遭い、国を追放されたとありました」


すぐに座布団から立ち上がろうと足を出そうとしたが、何かに足を拘束されていて、立ち上がる事が出来なくなっていた。

足の拘束を引き千切って天守を出ようと翼を広げたが、見えない壁に阻まれて、外に出られなくなっていた。


「すまんな、結界を張らせてもろた。慌てて飛び出る思てな」


結界に阻まれている間に背後に立った鈴鹿の刀が、ゆっくりと肩に置かれ、服を掴まれて座布団に戻される。


「この報告の真偽を確かめる為、鈴鹿殿と我が忍びの部隊が調査した結果、真実である事が分かりました。ですが! ……ですが、パレス騎士同士の衝突は無く、クライネ王は砦に駐屯しており、健在とのことです」


途中立ち上がろうとした私に、言葉を強めて制止したトコハナは、オシナに低頭して場を任せる。

二回頷いたオシナは私の方を向くと、扇子を向けて口を開く。


「これに関わりたいならこの国を出て行け、メリュー公国にお前の部隊が集まっていると聞いた。戦争がしたいなら私たちを巻き込むな、但し此度の活躍による褒美は授ける」


「そんなものは要らぬ、褒美ならクライネの味方をしてやってくれぬか。私は私で誰も巻き込むつもりは無い」


「それは約束出来ぬな、気に入らぬやつの味方をするなど、帝国に降るのと同じくらい不快じゃ」


「私よりも素質がある、それに私はもう……」


「何を言われようと認めていない者に味方する気は無い、貴殿が1番分かっておる事だと思っていた」


「分かっているからこそ、私はお前に興味を持たせたいのだ」


「黙らぬか、容易く謀叛を起こされる王に興味を持つと思うたか! 良き王の国に謀叛は起きんわ」


「この国を出る用意をしろ鈴鹿、暫くして私たちはこの国を出る」


龍力を放出させて結界を叩き割り、天守から二の丸まで飛び、用意された客室に入る。

襖を勢い良く開いた私を驚いた顔で見て、ナーガがアリスの背中に隠れる。


「すまぬ、驚かせてしまったな。メリュー公国に行く事になった、準備出来次第発つぞ」


「なら明日が良いな、トコハナに剣を教えてもらってるの。あと、れーぎさほー」


楽しそうに喋るアリスを見ていると、駄目だと制限してやりたくないが、今この国に居場所が無いと言う事を、言えない自分が居た。


「すまんなアリスちゃん、私の大切なものがメリュー公国にあるんよ。それを取りに行きたいんやけんど」


私の後から姿を現した鈴鹿が申し訳なさそうに言う。


「いや、もう1日だけ滞在させてもらおう」


「やき、ここにはもう居られ……」


「オシナに懇願する、子どもの成長の為じゃ、私たち勝手な大人の所為で子どもが窮屈に感じる国に、その後の発展は無い。ならば、私たちが何をしてでも、トコハナにはアリスに剣を教えてもらわねばな」


「はぁ、ほんにあんたさんのそう言うとこ、嫌いやないわ〜。ウチも一肌脱ぐところやな」


「おぬしにそんな事をさ……」


「皆まで言うなんて野暮な事しいへんでや。ウチも一当主として見習わなあかん、えい機会や。たまには格好つけさせえ」


手を振って来た道を折り返した鈴鹿に続き、屋根の無い庭の廊下で、鈴鹿を抱え上げて天守に向かう。

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