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叫び続けて④

トコハナの畑仕事を手伝い終えて、独特の建物が立ち並ぶ、風情が形を成した様な城下町に繰り出す。

ミョルニルとパラシュには、この国に合った衣装を着せてやり、髪も合うように結ってやった。


素直に私を褒めないミョルニルに対して、パラシュは私の鱗を使う事に遠慮し、申し訳なさそうにしていたのを押し切り、無理矢理着せてやった。

トコハナに言われた通り、そんなに目立つ事も無いデザインにしたが、着る者が良ければ、どうしても周りから浮いてしまう。


堂々と私の左を歩くミョルニルは、街の店を見て、時に立ち寄って品物を見るが、ずっと私の陰に隠れて、鱗の服を掴んでいるパラシュは、そんな余裕など無い様子だった。

いつも堂々としているパラシュにしては珍しい光景で、どうしてそうなっているのか、残念ながら私では分からない。


見兼ねたトコハナがパラシュの右を歩き、私の鱗の服を掴んでいた右手を握り、4人親子の様に歩き出す。

トコハナの意図を汲んで、まだ掴んでいるパラシュの左手を取り、自分の左手でミョルニルの右手を握る。


「トコハナ様、遂に子どもが2人出来ましたか? いつ祝言を上げるか心配しておりましたが、トコハナ様のお子が2人も居るならこの国も安泰です。可愛らしい女子ですね」


「その腰に変わった剣を下げてるあんたが旦那か? 随分綺麗な顔してるな、身なりが身なりだったから分かったけどよ、べっぴんさんじゃねぇか、あんたが女子ならお酌してもらいたかったねぇー」


「トコハナ様がお子を連れてるだって? 2人も女子が居るじゃねぇか、やっとトコハナ様にも婚期が来たぞ! こりゃめでてーな」


「ち、違います! こ、こんな奴が私の夫だなんて。まだまだ剣術すらまともじゃない半端者、私は認めませんから! それに私はオシナ様の刃ですから!」


こちらも珍しく顔を赤くしたトコハナが、必死に声を大にして否定するが、つい見てしまっていた私と目が合うと、どの季節問わず巻いているマフラーで、顔を隠してしまう。


「可愛らしい女子じゃろ、私達の自慢の子じゃ。愛情を沢山注いでやっておるぞ」


「違いねぇ、トコハナ様がそんなに照れるなんて、羨ましいね代わった刀の旦那! べっぴんさんな配偶者と子ども。かー! 俺もそんな嫁さんが欲しかったなー」


「私じゃ不満だってのかいあんた! 油売ってないで早くしな」


「痛てぇよ、聞こえてたのか。こりゃ参ったな」


「ははははっ! 良い場所じゃなこの国は、のぅ2人とも」


「か、からかわないで。こ、婚期はまだ過ぎた訳じゃないし。これだけ長生きしてて、まだ若いって言われるし。それに……」


「ぼそぼそ言っておっても分からぬぞトコハナ、それより何やら美味しいものの匂いがするぞ。少し腹も減ってきたからな、行こうではないか」


良い匂いに誘われて、3人を引っ張って歩くと、匂いの発生源に辿り着く。

目の前の建物の鍋から出ている湯気が、中身を気にさせられる。


駆け寄って鍋の中身を見てみると、茶色い汁の中に、白いものや、ネギなどが入っていた。

興味深い様子で近付いて来た私を見て、店主は器にその汁と、具材を入れる。


「トコハナ様また見回りですか、性が出ますね。そのお陰で俺たちは安心して過ごせるんだけどな、今回の味噌も良い出来ですよ、野菜も大きくなって、飲んでって下さい」


「またお金を取らずに配ったってバレたら、奥さんに怒られますよ。今日こそお金は払いますからね」


「トコハナ様からお金を取るなんて出来ねぇよ、ウチのもトコハナ様になら納得してくれますって」


「駄目です、4つ分きちんと払います」


「私が払おうトコハナ、余所者の私ならば払っても構わぬだろ主人よ」


「トコハナ様のお連れさんからも貰えねえ、トコハナ様はいつも1人でいらっしゃるから、あんたたちが支えてやってくだせぇ」


押し付けるように器を渡されるが、袖の中に少し多めの代金を入れておく。

重くなった袖に気付いて、店主が袖の中から代金を出そうとするが、何か言われる前に走って逃げる。



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