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君の心が動くまで①

複数の騎士に囲まれた龍人の女性が路地の端に追い詰められているのを見付けて、ミョルニルを投じて薙ぎ払う。

戻って来ずに人の姿になったミョルニルは、女性に手を差し出して路地から駆け出す。


パラシュを背中に乗せて騎士を探しながら飛行していると、遠くの空を少数の飛龍が凄まじい速さでどこかに向かっていく。

私と同じ光景を見たパラシュが、自らを握りながら思った事を口に出す。


「少数で撤退した一部の人類を叩く様だね、それも独断で。僕たちも行くかい?」


「いや、パラシュは王都を頼む。私が行こう」


「僕は君だけじゃ心配だって言ってるんだよ、最近は特に自分の事は後回しだからね」


「信用が無いのう、この身の限界くらい分かっておるさ」


「信用していないからね。今までの君の行動を見たら、誰でも同じ事を言うんじゃないかな? 何せ君は拗ねてるからね、あれからずっと」


これは痛い所を突かれたと言い返せないでいると、溜息を混ぜた微笑みでパラシュが背中から飛び降りる。

仰向けになって落ちるパラシュは、「気を付けて」と口だけを動かして、体勢をうつ伏せに変えて落下していく。


「気を付けてか、折角時間を掛けて龍力で固めていた花が完成したのだがな。2人に渡しそびれてしまったな」


手の中にあるそれぞれ色の違う花の結晶を仕舞い、パラシュに怒られないように気を付けて飛龍の後を追う。

このまま人の姿で行っても追い付く筈が無い為、飛龍に姿を変えて龍力を使いながら爆発的な加速を生む。


それを繰り返して追い付いた飛龍の前に躍り出て、八の字を描いて停止を促す。

素直に停止に応じた飛龍隊の隊長らしき龍人が前に出て来て、突然胸倉を掴まれて勢い良く引っ張られる。


「邪魔すんなよ、お前あれだろ、ドラゴンの総大将になったって言うトールって奴だろ。そんな事してエルデグラート様を玉座から引き摺り下ろして、自分が龍人の王になろうって魂胆だろ」


「思ってはおらぬよ、おぬしらが今言っても呆気なく散る故、善意で止めに来ただけだ」


「隊長、こいつ俺らを侮辱……」


「分かってる、だからこいつからやらなきゃならねえだろ」


目の前の隊長から膝蹴りを入れられて投げられ、周りの隊員が私の周囲を取り囲む。

仕方無くバハムート型になって全員を纏めて鷲掴みにすると、パラシュの声が脳内に届く。


「王都の騎士は引いたみたいだ、だけど他の飛龍が少し前に出て行ったよ。もう間に合わないから宿主は戻って来てほしい」


「そうか、方角はどっちだ」


「君は僕の話を聞いていたのか宿主、飛龍の速さは君が1番分かっている筈だろ。今行ったとして数10万に突っ込んで帰って来れる保証は……」


「パラシュよ、私が何の為に戦うか分かるか?」


「……君はアナトとの約束を果たす為、この約束の星で星の子を守り抜く。そしてガイアの願いを叶える為に、クロノスを神の王にする為に、こんな出来もしない約束ばかりの為に君は戦ってるんだよ」


「確かに気の遠くなる様な願いかもしれぬ、だが願いは正しい者が叶えるものだ。私は正しくない者を公正に下す」


聞こえなくなったパラシュの声で呆れられた事を察して、手の中の飛龍を龍力で人の姿に閉じ込める。


「すまぬがこのまま王都まで人の姿で帰ってはくれぬか、次はその翼を折る」


「戦えない俺らには撤退しか道は無い、味方の仇を討てとは言われていても、無駄にしろとは言われていないからな」


そう言って大人しく帰った飛龍の小隊を見送り、人類連合が撤退する道を予測して先回りする。

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