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龍人種の王④

散り散りになった人類連合は残りの兵を各々で纏め、少数の波状攻撃となってドラゴンに迫る。

賭けた一撃で大半の龍力を失って人の姿に戻り、出来るだけ龍力の消耗を抑える。


同じく大規模な一撃で魔力を使い切ったイシュタルが落下を始め、受け止める為に手を伸ばして追い掛ける。

軽い体を受け止めてゆっくりと着地すると、後詰の人類連合約十万の兵が到着する。


疲労で眠ったイシュタルを寝かせて、自分の鱗で作った布を掛ける。

ミョルニルを武器として顕現させ、パラシュを人型として呼び出す。


「僕の番かなトール」


「あぁ、頼んだぞパラシュ」


「当然君の期待には応えるさ。いや、それ以上の成果を上げよう」


「なら、ミョルニルを呼んで競わせるとしようか。私はあちらの少数の様子を見てくる、どこの国か分からんが賢明な判断だな。森の中を只管進むとはな」


「む、まぁ良いさ。どうせ勝つのは僕だからね」


「よく言ったものだわ、最強の武器である私に勝てると思ってるの?」


人型になったミョルニルは小さな手の中に自らを落とし、二人同時に十万に走る。

雷を纏った二人を見届けて森に飛ぶと、イシュタルの雷が足に巻き付く。


地面に振り回されて着地すると、足がジーンとして背筋が伸びる。

座り込んでイシュタルの下に四足歩行で向かい、隣で止まって話を聞く。


「龍力をくれないかしら、私たち回復が恐ろしいくらい遅いから」


「それで向かわせてくれるなら構わぬ、だがどうやって渡せば良い」


「勿論キスよ、それも半端なのじゃ……」


「受け取れ莫迦者」


取り敢えず手のなかに溜めた龍力を胸に押し付けると、吸い込まれて絹のような雷が漂い始める。

曇り始めた空を眺めていると、落ちた雷を受けたイシュタルに翼が生える。


雷の魔力が半分まで元に戻り、人間相手なら十分凌駕出来る程になる。


「引き時じゃない? これ以上一気に使うのは寿命を磨り減らすだけよ」


「人間如きに負けぬよ、数も少ないしな」


「レーヴァテインが居るのは気付いてるでしょ? 」


「人間に真価は発揮出来ぬ、戦うのなら負ける気はせん。心配なら付いてくると良い」


イシュタルの手から伸びていた雷の鎖を断ち切り、跳躍して勢い良く飛翔する。


「待ってって、私も十万を食い止めてあげるから貴方の牙を頂戴」


「私が使おうとしておったのだがな、まぁ良いか」


自らの牙で作った剣をイシュタルに投げ、受け取ったのを確認せずに森に飛ばす。

雲を突き抜けて全身から力を抜き切り、放物線を描いて雲に突っ込んで翼を広げる。


風を翼で受けてゆっくりと降下し、森の中にある筈の自分の一部を探す。

森を端から端まで見回していくと、真ん中辺りで三人の眷属と爪を見つける。



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