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龍人種の王②

良い機会だと城を飛び出して空を駆け、人類連合の群れを目指す。

共に付いて来る者は無く、たった一人の寂しい戦争になる。


アリスは行きたがったが、ナーガはアリスから離れたくないらしい。

ならメルトかナーガを連れていこうと提案したが、エルデグラートが許す筈も無く断念。


かと言って人間を連れていっても足でまといになり、好きな様に暴れる事が出来ない。

ドラゴン連合の総大将でありながら付いて来る者は居らず、皆メルトの側を離れようとしない。


ミレニアとメアは絶対に連れて行きたくない、後ろから刺されて殺されかねない。

その二人は最初から選択肢に入れず、声すら掛けなかった。


ふと遠くの空を見通してみると、しっかりと私を捉えている女が浮遊していた。

美し過ぎるその容姿は美の神アフロディーテにも引けを取らず、体を取り囲む様にして漂う雷は踊り子を思わせる。


右手を天に掲げたかと思うと、こちらに向かってゆっくりと切っ先を向けるように下ろす。

その直後電撃に晒され、しつこく体にまとわりついて離さない。


「何故こうも好戦的な莫迦が……多いのだ!」


まとわり付いた電気ごと微量の龍力を投げ返すと、弓を構えて雷の矢を番えていた。

雷と雷がぶつかり合って地上に降り注ぎ、木を焼き地を抉る。


速度を上げてイシュタルの脇をすり抜け、不自然に曇った陽の落ちた空を駆ける。


「無視は酷いんじゃない?」


背中に乗って、先程の行動が無かったかのように語りかけてくるイシュタルは、自分で作った黒い空を手で払い除ける。


「古き朋でも、突然攻撃して来たら無視もしたくなるであろう。そしておぬしの強さはよく分かっておる、敵に回せば厄介だ」


「あんなの攻撃に入らないじゃない、挨拶よ挨拶。好きな人には挨拶がしたいものでしょ、それともキスの方が良かったかしら?」


「おぬしに関わるとロクなことが無い、帰れ我儘娘」


「手伝いに来てあげたのに酷いのね、さっき見てきたけど凄い量よ。それと魔力持ちがちらほら居たし」


「人間如きが魔力を持っても問題はないであろう、有象無象に繁栄は無い。この私が自ら手を下す」


「私も良い機会だわ、丁度人間に恨みもあるしね。何よりも貴方が行くんだもの、久し振りに戦う姿が見たいわ」


下手に返事をせずに飛び続けていると、飛龍に乗った人間が見えた。

売り飛ばされたドラゴンは人間の衣服の素材にされたり、戦争に駆り出されるなどが多く、少し前から始まった競りでは一万近くの龍人が取り引きされた。


今目の前で人間を乗せている飛龍も、その一人なのであろう。

少しずつ燃えていた怒りが膨れ上がり、空模様が怪しくなる。


「下は私に任せて、トールは上のドラゴンたちを解放してあげて。じゃあ武運長久を」


「うむ、頼んだぞイシュタル。我も早く終わらせてそちらに行く」


頷いて背中から飛んだイシュタルが落下を始めると同時に、速度を最大まで引き上げる。

刹那人間を掴んで握り潰し、編成を組んでいた後方の騎士に投げる。


統率の取れた動きで散開した敵を追い、一人ひとり潰しては投げ捨てる。

もう何度引き裂いて千切ったか分からなくなる程高揚し、手の中が血でどろどろに染まっていた。


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