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里帰り①

「非常識、人で無し、鬼畜ドラゴン」


助けた直後からひとつ国を通った今も、ずっとミレニアの罵倒は続いていた。

アリスは鼻歌で歌いながらミレニアの腰に腕を回して、天馬の背中の上に乗っている。


「もう良いだろうミレニア、国境じゃ」


「一旦全員地上に降りさせますか」


先頭に居たメルトが最後尾まで飛んで来て、先頭まで見渡しながら疲労を顔に浮かばせている。


「そうだな、その方が良かろう。ミレニアと私で入国許可を取ってくる、おぬしらは休んでおれ」


「私が行きます、貴方はこの軍の総大将なのですから。危険な地に足を踏み入れてはなりません」


「すまない、なら疲れておるだろうが頼む。私はここで待っておく」


「そうして下さい。では」


ミレニアの天馬の背中からアリスを抱き上げて、手を振って二人を見送る。

全員に降下の合図を送って、ゆっくりと翼を大きくゆっくり羽ばたかせて地に足を着ける。


久し振りに足を地に着けたアリスは、喜んで辺りを駆け回る。

いつの間にか腕の中で眠っていた鈴鹿が目を覚まして、腕の中からすり抜けて着地する。


「久し振りによう眠れ……東北東に敵や、騎馬兵が約五千。いや六千」


「私が行こう、飛んでばかりで体が少し窮屈だ」


「待ち、どこの兵か分からんやろ。まずは敵を増やさん事や」


「見てこよう、おぬしはアリスを見ておいてくれ」


地面を力強く蹴って空気を切り裂いて、人間の体の器を割って本来の姿に戻る。

認識が出来ないように龍力を纏い、久し振りに全身で風を感じる。


暫く踊るように飛行をしていると、平原を約五千から六千の騎馬兵が疾走していた。

インメルマンターンの軌道を描いて先回りして着陸し、人型に戻って進路に立つ。


少しして到着した騎馬隊の先頭が手を掲げて後続を止め、周りを囲んで視線を私に注ぐ。


「何をしている」


「私はメリュー公国から戻ったばかりで、村に帰る途中です」


「そうか、調べろ」


数人が馬から下りて私の体を触ってボディーチェックして、一通り終わった後指揮官らしき男に頷く。


「一緒に来てもらう、怪しくはないが息抜きは必要だからな。美しい女ならより良い」


「貴方たちは何者なのですか?」


「何って、そこの村を潰して来た。所謂山賊って呼ばれる者だな」


「そうか、なら加減はせずとも良いな」


隠していた全てを出して飛翔し、合図の火球を天に打ち上げる。


「天を穿ち地を焼き尽くせ、メテオライオット」


打ち上げた火球が千千り咲き、数多の火球となって降り注いで賊を蹂躙する。

一斉に散った賊にそれ程被害は無く、主に中心に居た者だけが潰れていた。


賊にしては統率の取れた動きは、元は騎士団かと思わせる。

列を成して波のようにうねり始めた陣形は、非常に捉えにくい。


「飛んで来たぞアイネ、私を呼んだからには楽しめるんだろうな」


「アイネー! 私も来たよー!」


光る馬に乗って来た鈴鹿とアリスは、波の中に飛び込んで陣形を突き崩したかに思えたが、それに対応するように両脇と前方から攻撃が当時に繰り出される。


前は鈴鹿、右はアリスがしなやかな受け流しで防いだが、左から振り下ろされた斧で馬がへし折れる。

当たる前に飛んで避けた二人を拾って、少し離れた所で下りる。


「さぁ、始めよか」


「アイネを守るの」


「あまり無理をするでないぞ」

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