天空の覇者と大地の奏者①
ドラゴンが集まると言う場所に案内されて飛んで行くと、大樹の根本に多くのドラゴンが人の姿をしていた。
そこに降りた追跡者に続いて着陸して、アリスと人間を手から下ろして人型になる。
「ここが集会所となっています。改めまして私はメルト・ターリンスと申します、この度は総大将を引き受けて頂いて有難う御座います」
結局こちらに来ることになったナーガは、随分と長い事口を開いておらず、空気の様にしていた。
それは今も変わらず、ただ俯いて地面ばかり見ている。
「ナーガよ、どうじゃこの花は。まっこと綺麗な花じゃろ」
「本当ですね、ごめんなさい心配かけてしまって。実はよく分からなくなってしまって」
私が差し出した花を笑顔で見つめるナーガは、久し振りに口を開いて言葉を発する。
やはり花には心を癒す能力があるのだなと改めて感じて、次はクライネにどんな花を持つて行ってやろうかと考える。
「皆さん、トール様が総大将を引き受けて下さいました。ナーガ様とお仲間おふたりもこちらに付いてくださり、勝利は確実になりました」
メルトがそう言うと、周りに居たドラゴンが一斉に群がり始めて瞬く間に囲まれる。
中にはまだアリスくらいの幼い者まで居て、現状は余程深刻なのが伺える。
だが、アリスと人間に向けられる視線は徐々に悪いものに変わり、敵意をぶつける者まで居た。
「そいつらは人間なのか、なんで人間と一緒のやつが総大将なんた」
「そうだ、人間は殺せ。今まで無抵抗の俺たちの仲間が何人やられたと思ってるんだ」
ふたりのドラゴンが前に出て来て、ドラゴンの今の考えを代表してぶつける。
「ライルドさん、メーリアさんそれはトール様に失礼です。そして何よりもお二人に」
「良いメルト、この二人は人間と別れを決めて私の方に来てもらった。信用出来ぬのなら私を殺してから手を出せ、それをする度胸が無いのなら今すぐこの場から消えろ。戦場は甘くないぞ」
「トールだか何だか知らないが、突然現れて偉そうな口聞くなよ!」
「度胸が無い訳ないだろ、俺たちは人間を殺し尽くす為に集まったんだよ」
水色と赤色のドラゴンに姿を変えた二人は、私目掛けて渾身の一撃を溜める。
ミョルニルを取り出して右手で構え、左手で雷の槍を作る。
「アイネを傷付けたら駄目ー!」
飛び出して来たアリスが剣を抜き、千の刃を二人に向ける。
直ぐに両手の武器で剣を弾き飛ばして、進路に居るアリスを抱えて飛び立つ。
渾身の一撃が空振りになった二人は、森の木をなぎ倒して暫く進む。
「皆を傷付けてはならぬ、おぬしは優しい子だ。そんなおぬしが私は好きだ」
「分かったアイネ、ごめんなさい」
「だが、私を守ろうとしてくれた事には礼を言おう。まっこと優しい子だおぬしは」
笑顔になった所で空まで追撃して来た二人を片手で叩き落として、口に龍力をありったけ溜める。
輝きを放って伸びる閃光が落ちた二人に向かい、着弾してからドームの様に衝撃波が広がる。
龍力を受けても何も被害が無い森に降りて、アリスを地面に下ろす。
「アイネ、アリスの武器を弾く為に武器を出したんだな。本当に凄いよ」
「はて、何の事やら。人間は突飛な事を言のじゃな」
「名前まだ教えてなかったっけか、俺の名前は降魔隆介。最近までは高校生だったんだけどな 」
参ったなと言うような顔でそう名乗った隆介は、下手な笑顔を作って私に向ける。




