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精霊王になりまして  作者:
水精霊王誕生
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初めての別れ

 アルヴィスが魔力溜りを見つけてから一週間がたってもシシリーはアルヴィスの元へ帰ってくることは無かった。


 森の広場でただ魔力溜りの力を操作する日々を過ごしていたアルヴィス。

 そんなアルヴィスの前に一人の男が現れる。



 サラサラと絹糸のような銀の髪を後ろに一つに縛る金の目を持つ美青年は、座禅するアルヴィスの前に座った。



 「はじめまして、水精霊王。俺は光精霊王…シュバルツ・クレイトンという。」


 「シュバルツ……?僕はアルヴィス・サークフェイスだよ」


 戸惑いながらもシュバルツに自己紹介するアルヴィスに慈愛を込めた視線を送るシュバルツ。

 優しく柔らかなアルヴィスの頭を撫でつけ、緊張と混乱を解くようにゆっくりと話し出した。

 その声はどこまでも優しい。



 「シシリーは、ここに来ることはないだろう」

 「……」

 「アルヴィスは聡い。分かっていたろう?」

 「…はい」


 アルヴィスの目からまた雫が落ちる。柔らかな頬をつたい、落ちていく雫をシュバルツは見つめ、目を閉じる。

 アルヴィスもシュバルツに流されるように目を閉じた。


 シュバルツの温もりが暗い世界で感じた。自分の吐息や、シュバルツの吐息、愛しい精霊たちの羽音に、ざわめく精霊樹の葉たち。


 その神経は遠くへと伸びていき──アルヴィスは分かってしまった。


 「う、ぁ」

 「…アルヴィス」


 堪らずに目を開けるアルヴィス、そんなアルヴィスをいつから見ていたのか、シュバルツは悲しげにアルヴィスの頭を優しく撫でる。


 「───ぁあっ」


 アルヴィスは理解してしまったのだ。この森のどこにもシシリーがいないことを。近くにシシリーの存在がないことを。

 自分の前にもう帰ってくることはないということを。それは彼女が居なくなってから目を背け続けた現実だった。

 

 ──「…力がつくまでは私が守ってやろう」──


 不意にアルヴィスはあの美しい夜のことを思い出してしまう。

 思い出してしまったからこそ悲しくて苦しくて仕方ないのだ。愛し求め認めた存在それは──何も言わず自分を置いていった。捨てるとも同意ではないかとアルヴィスの感情は揺らぐ。


 「うそ、つきぃ!」


 泣きじゃくるアルヴィスをシュバルツはそっと抱きしめ、優しく優しく撫でる。その手はシシリーとは異なっている。シシリーの手はもっと柔らかく、シシリーの尻尾は何よりも美しく。


 シュバルツはシシリーにはなれない。

 そんなことはアルヴィスは理解していた。


 していたからこそ。


 「ああっ」


 シュバルツにアルヴィスが手を回し抱きつくことは無かった。


 ───アルヴィスはシシリーのあの目が嫌いで、憎かった。だからこそあの目をするシシリーが嫌いだった。本質では好いているのに。


 だがもうシシリーは戻っては来ない。



 一週間前、アルヴィスは魔力溜りを見つけた。……だが同時にシシリーという家族を、師匠を失った。



 アルヴィス生まれてもう少しで三ヶ月が経とうとしていた時のことだった。



 「これから、アルヴィスに色々なことを教えることになるのは俺だ」

 「…シュバルツさんが?」

 「さんはいらない。特別にバルと呼ぶことを許そう。」

 「では、僕のことは──アルと呼んでください。」




 アルヴィス・サークフェイス。世界中に求められやっと産まれた愛しき神の子…水精霊王。


 その永きにわたる運命はこの日に本格的に動きだしたのだと──後にアルヴィスは語った。



【ここまでのキャラ】


《火精霊王》シシリー・ミルーチェ

見た目の年齢 24歳程

見た目の種族 狐の獣人

《キャラ詳細》

アルヴィスを見つけた最初の精霊王。

アルヴィスを守ると誓い、姿を消した謎大き存在。美しいウエーブのかかった金髪に紅のつり目を持つ美女。


《水精霊王》アルヴィス・サークフェイス

見た目の年齢 10歳程

見た目の種族 人間

《キャラ詳細》

やっと生まれた水の精霊王。少し癖がついた勿忘草の髪に、ラピスラズリの瞳を持つ美少年。泣き虫で、好奇心旺盛。シシリーに対し複雑な感情を持っていた。


《光精霊王》シュバルツ・クレイトン

見た目の年齢 25歳程

見た目の種族 人間

《キャラ詳細》

光精霊王。よく人間の前に姿を現す一番名前や存在が人間達に伝わっている存在。嘗ては天使と呼ばれたこともあった。

ヨルゼ王国の第四王女エルメラと契約している(らしい)。

長身で細身。線の薄い美青年。銀の長い髪を後ろに一つに縛り、細めの金の瞳を持つ。

シシリーに変わり、アルヴィスを教育することになった。


《精霊達》

・光の精霊シノ

・風の精霊エノ

・水の精霊ラノ

《キャラ詳細》

アルヴィスを慕っていて常にアルヴィスの周りを飛んでいる。微精霊を纏める存在だったりする。

基本的にのんびりとした性格を持つ。


《ヨルゼ王国》

・国王カルベル

《キャラ詳細》

ヨルゼ王国を深く愛し、大切にしている現国王だが。度重なる戦争と少ない物資で息絶える国民達を憂いている。優しく、強い。まさに賢王。

・第四王女エルメラ

《キャラ詳細》

姿や年齢は未だ不明。ただシュバルツと契約しているらしい。




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