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精霊王になりまして  作者:
月と闇と綻び
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竜とドラゴンの違い


 

 「そういえばネルヴ平原の逸話をカナリア聞いた事はある?」

 不意にアルヴィスが口を開き、カナリアに問いかける。

 

 『あのドラゴンに滅ぼされた国の話?』

 「うん、そのドラゴンの話」

 『軽くなら聞いた事あるわよ? 国を滅ぼし、卵を残して消えたドラゴンでしょ?』

 

 有名よね、とカナリアが首を傾げる。アルヴィスに以前と同じように砕けた話し方をするカナリアに小さく微笑みながら頭を人差し指で撫でた。

 

 「さて、問題だよカナリア」

 『えっ?』

 「ドラゴンと竜の違いは?」

 

 え?え?と混乱するカナリアを呆れた様子でベルグが鼻で笑う。それにむっとしたのか『分かるわよ!』と言い放つ。

 

 いい暇潰しになるし、カナリアにも勉強になる。さらにアルヴィスも説明することで復習できるのだ。分かると言った手前引けなくなったカナリアが必死に言葉を紡ぐ。

 

 『えっと、りゅ、竜が善で、ドラゴンが悪…とか?』

 「うーん、その返しは予想してなかったや」

 

 思わず困った表情で立てていた人差し指をアルヴィスは自分の頬をかくことに変えた。アルヴィスを乗せたベルグが鼻で笑ったのをカナリアは見落とさない。

 

 『何よ! ベルグはわかるって言うの!?』

 『当たり前だろう、そもそも善悪など人間が勝手に押し付けたイメージでしかない。 神は竜から蛇を作り、ドラゴンから狼を作ったと言われている』

 『竜…蛇…ドラゴンから、狼って…何それ』

 

 苦笑いを浮かべアルヴィスが補足する。

 

 「姿形がそもそも違う。在り方も違うよ、善悪では破綻してしまうね、助けられれば善、助けて貰えなかったら悪とするのは人に近しい種族だけだよ」

 『…むぅ』

 「ドラゴンは太い四つの足を持っている。そして蝙蝠(コウモリ)に似てはいる大きな翼があり、魔力を使用して飛ぶんだ。逆に竜にはドラゴンに比べると細い手足しかない。そして竜に翼はないし体自体も細く長い、飛ぶのに使用するのは魔素で、細く長い体をしている」

 

 アルヴィスは水を少し生み出すと、竜とドラゴンの形をとる。

 まるで本物の様に少し動いてみせるそれにカナリアは目を輝かせる。

 

 『じゃあ竜人は…?』

 「そのまま竜の血が入った人の事だよ、竜もドラゴンも力が強い者は姿を変えられるというから、人に変えた竜が人との子を作ったんだろうね」

 『ドラゴンも?じゃあドラゴン人もいるの?』

 「ドラゴンと人が混じったのはドラグニルという呼び名だね、まぁ、竜人より数は少ないらしいから出会うことはないかもだけど」

 

 少し混乱気味なカナリアに、じゃあと今度はカナリアに分かりやすいように例えることにする。

 

 「使族はずっと飛ぶことが出来る?」

 『出来ないわ…長く飛べるのはそれだけ魔力が高いとされてるから、少ない人は…ってあれ?』

 「それと同じだよ、ドラゴンも自分の魔力を使ってるからずっとは飛べないんだ」

 『じゃあ竜って』

 

 ベルグが鼻を鳴らすのを聞きながら、アルヴィスはゆっくりとカナリアの頭を指先で撫で続ける。

 

 「そう、竜は魔素…自分の周りの力を使って飛ぶ、つまり果てがないんだよ」

 『じゃあずっと飛べるんだ、ならなんで山脈になんて住んでるの?』

 

 最もな質問だろうがアルヴィスはそれの答えを濁した。知らないと言うよりも、どう言ったらいいのかと言った様子で。

 

 

 「運が良ければ竜に会えるみたいだから、聞いてみるといいよ」

 『えぇ…実際会ったら聞く余裕ないでしょ、絶対無理よ』

 

 ベルグの背に止まり、項垂れる小さなカナリアの頭を撫で続けるのは彼女自身がアルヴィスに怒るまで続いた。

 

 『アルヴィス!いい加減にして!そんなに撫でたら禿げちゃうわっ』

 『ふむ、主…唯一美しい羽を失うのは可哀想だぞ』

 『唯一ってなによ…しっぽの毛毟るわよ』

 『はん、抜けるなら抜いてみろ、そんなヤワじゃないからな、無理だろうが』

 

 むきー!と怒りを露にベルグの背を啄くカナリアにアルヴィスは良かったねと声をかけそうになる。

 

 今そんなことを口にすればアルヴィスの頭に巣を作られてしまうかもと直ぐに口を閉じたが。そうして傍から見れば静かな、本人達には賑やかな旅が始まった。

 

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