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精霊王になりまして  作者:
旅の始まり
30/55

泣いたカナリア

初めての予約投稿ですん。

テスト週間も終わり更新増えさせれるように頭を捻ります。



 朝、アルヴィスは、浅い眠りから目覚める。いつの間にか眠っていたらしい。人間ほど睡眠を必要としない精霊王なのだから、眠りが浅くてもこたえた様子はない。ベルグも既に起きていて近くに少し生えていた草をつまみながら自分の主に目を向ける。


 『おはようございます、主よ』

 「うん、おはよう…草美味しいの?」

 『不味いですよ、腹にはたまりますが』


 また草を食べ出すベルグに、アルヴィスは手持ちで用意していたベルグの御飯を魔法袋から取り出して与える。嬉しそうなベルグの胃にそれはどんどんと呑み込まれていく。最初は興味深そうに見ているだけだったが立ち上がってアルヴィスは大きく体を伸ばして腕も空へとぐっと伸ばす。


 『たすけてええええ』


 爽やかな朝に聞こえる高く美しい鳴き声の持ち主はアルヴィスの伸ばされた腕にピタリと止まる。そして羽を休ませてビクビクと周りを見回す。アルヴィスは声の持ち主が鳥なことに驚き、ベルグを見る。もちろん腕は下ろして指先に移動し離れる気がなさそうな鳥について聞くために。


 「……どういうこと?君以外に話せる子がいるなんて……」

 『はぁ… 普通の鳥ではないことは間違いないでしょうが、私はわかりませんね。』


 そんな会話をしていると、また鳥は騒ぎ出した。ピーピーと鳥としての鳴き声と『来た! 来た! 』という言葉が二重に聞こえ、うんざりとしながら鳥が見る方へと目を向けると大きな土埃を立てて何かがこちらへ向かってくるのをアルヴィスは目にする。


 「その鳥をこちらへ渡せ!」

 数人の男たちから一人の男は出てきていきなり剣の柄に手を添えながら怒鳴るように要求する。爽やかな朝はいつの間にか消え去り殺伐とした空気が辺りを包む。どうやら、男達の目的はアルヴィスから離れない鳥であるらしいが、物々しい様子に飼い主という訳ではなさそうだと理解した。そしてさっさと鳥をベルグの背に移らせベルグに任す。見た目は馬でも魔物なのだから任せても大丈夫だろうという考えだった。


 『嫌だ、嫌だ!たすけて!たすけてっ』

 「さっさと渡した方が身のためだぞ!!」

 人数はリーダーらしい叫んでいる男を入れて五人。とても鳥を捕まえに来た人数ではない。それに鳥の大きさからしても食べる為でもなさそうだと考え至り寝るためにはずしていた剣を手にする。それを見て男達も剣を抜き始める。



 「ごめんね、この子嫌がってるみたいだ。食べる為じゃなさそうだし、去ってくれると嬉しいんだけど」

 「うるせぇ!! 渡さねぇなら渡す気にさせてやるよ! テメェら! 殺すなよ、コイツらも売って金にすんだからよぉ! 」

 「「「「おおおお!」」」」


 男達は馬から降りて剣を握りジリジリとアルヴィスへ近づいてくる。アルヴィスは飛び出しそうなベルグを背で押して誘導しながら後ずさる。にやにやと笑う男達にウンザリしながら剣を鞘から抜く。



 リィ─ンと剣ではならないような音を出しながら抜かれた剣は美しい白く細い刀身で、淡い青色の光を反射している気がする。何処までも切れるようなそんな美しい剣を目にして男達は息を呑む。そしてリーダーらしい男は一層笑を深める。


 「本当にごめんね、殺さないように気を付けるね」


 アルヴィスはそう爽やかに告げてフードの下で微笑む。口元だけしか見えてないだろう男達でも、魅せられるようなそんな笑みで。男達が気づくと五人は四人に減っていた。慌ててアルヴィスの足元で倒れている男を見つけると男達はアルヴィスから慌てて距離をとる。


 柔らかな笑を浮かべるアルヴィスだが、男達には何をしたのか見えていなかったのだ。うっすらと白い刀身に人の油がつき鈍く光る。


 「大丈夫、殺さないから。」


 男達はその言葉に一気に後ずさる。ゾッとしたのだ。どこまでも美しいアルヴィスの声と笑が消えない口元に。


 さらさらと素通りするように男達の足に切り傷を与えてサッと魔素を通して意識を刈り取っていくアルヴィス。すぐに地面に全ての男達は意識を失いながら倒れている。


 『お見事、さすがは我が主』

 『す、すごい』

 「ふぅ……どうしようベルグ…僕油拭き持ってないんだ」

 『その男達の服で拭いてしまえばいいのでは?』

 「うーん、拭かないのよりはいいよね」


 気絶する近くにいた男の服で剣を撫でるように拭うと剣を鞘に戻してアルヴィスは一息ついてから鳥へと目を向ける。


 「それで? 君は誰? どうして追われてたの?」



 『わ、私はカナリア…カナリア・マールブルク』


 (カナリア)はそう答えた。美しい金に近い黄色の翼を持つ彼女は……そうして語ったのだ。


 『あなたが誰かは知らない……でも助けて……私を元の姿に戻して』


 ピィピィと鳴くカナリアに流石のアルヴィスも唖然とした。普通の鳥ではないとは分かっていた。だが、まさかこんな返答をされるとは思っていなかった。旅の途中だと言うのに面倒事に巻き込まれてしまっている事に今さらになって自覚し、思わずため息をこぼしてしまう。


 「はぁ」

 『わ。私、使族なんだよ、ほんとは。でも奴隷狩りにあってなんか魔法かけられて…気が付いたらこんな姿に……ねぇお願い、助けて』




アルヴィスだいぶ大人っぽくなってきました。

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