ネルヴ平原
テルナマリンからアラーシュトへと向かうまでの道のりにある平原が存在する。名はネルヴ平原。元々ネルヴ草原には一つの国があったという。その国を収めていた王の名がミネルヴァといい、珍しい女帝国家だったと古くからこの土地に住んでいるものならよく知っている。
しかしネルヴに一頭のドラゴンが降り立ち家も人も全てを消してしまった。国だった後すらない地は荒れ果て草木は育たぬ生命の生まれぬ呪われた土地とされていた。
だが木精霊王がこの土地で一つの卵を見つけたという。その卵はドラゴンの卵であり、この卵があるから草木は育たなかったんだと木精霊王は言ってその卵を持ち去った。
ネルヴはドラゴンの卵を持ち帰りドラゴンに滅ぼされた国の後に広がった平原だ。だからミネルヴァの名を取りネルヴと名付けられた。
「うーん、疎らだけどちゃんと木々は生えてるんだね」
『ここらは木精霊王様の力が強いですからな、主が水精霊たちを目覚めさせるならばネルヴ平原ではなくネルヴの森と呼ばれるまでに木々が育ちましょう』
木精霊王の力によって木々が育ちやすくなっており、水精霊を目覚めさせるだけで、急速にそれらが育ち。森になるというのは想像に容易い。荒れた土地だが、未来はあるのだ。
「勿論、起こすに決まってる」
アルヴィスはそう答えるとベルグの背から降りる。そしてフードを外すことなく、オカリナを吹き曲を奏でる。
そしてその音の余韻が消える前に優しく、愛しい家族を呼ぶかのような声で呼びかけるのだ。
「おいで、みんな。起きる時間だよ」
その声に、その音に、その雰囲気に水精霊達は地面から目覚めていく。丸く小さな青い光がぽつぽつと光だし、それらはアルヴィスとベルグの周りを踊るように回っていく。
《起こしてくれて、ありがとう》《水精霊様》《はじめまして、おかえりなさい》《素敵な音色、素敵な声》
「うん、僕のことはアルヴィスと呼んでね。君たちはこの土地のことをよろしく」
《アルヴィス様》《分かったわ、任せて》《大好きよアルヴィス様》《ときどき、あいにきてね》
幸せそうに瞬きを数回して彼女達は消えた。水精霊達はみな女性の姿をしている。
精霊によく似た種族で妖精族というものが存在するが、大きく異なる部分がある。羽根があるのは同じだ。小さな体も同じ。違うのは目と精霊達は全て女性だということ。
妖精族の目は普通の人間と変わらない。だが精霊達の目は魔物や、魔獣の体内に出来る魔石と同じ物質であり、人の目とは違う。むかしとある土地では魔石を持つ精霊を魔物と呼び狩って売っていた国があった。その国は精霊王達からの報復と精霊の悲しみと憎しみの中で滅んだとされる。
精霊達は精霊樹に実る卵から生まれる。だからこそ男性を作る必要が無い。そのために精霊は全て女性で、その見た目の特殊さ、美しさから魔石以外の事でも愛玩動物として捕えられたこともある。
そのために精霊達は姿を人の前に晒すことは無い。微かな光だけで自分がいるのを仲間に伝える、それを人も見ることは出来るが姿を表すことはしない。精霊たちの力で生き物は生きれるというのに彼女達を害する者も確かに居るのだ。
「ここはもう大丈夫そうだね」
『ええ、次期にネルヴの名は有名な森として名を馳せることでしょうな。主よ、日もじきに暮れます。そこの木の根元で休むのはいかがですか?』
「そうだね。そうするよ、ありがとう…ベルグ」
アルヴィスとベルグは近くにあった木の根元に向かい、必要な荷物を下ろして寝床とする為に準備をしていく。
赤い陽が落ち、段々と、夜へなっていく。
次話はネルヴ平原の夜です。
お楽しみに




