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精霊王になりまして  作者:
水精霊王誕生
19/55

◆昔の約束、訪れた人

 

 

 

         ◆

 

 初めて、目を合わせた時。心がざわついて落ち着かなかった。

 耳長族(エルフ)小人族(ドワーフ)のハーフな私を見てくれる人はいなかったから。

 

 ─約束しよう─

 

 遠く、遠く。遥か遠くから声がする。耳元で囁かれるような。どこか遠くから声をかけられるような。そんな少しでも集中をやめれば聞こえなくなるのではないかという声が。

 

 目の前の男の子は何も言っていないというのに。声が聞こえるんだ。

 

 

 ─君が泣いていたら僕は笑うよ─

 

 胸が痛くて、喉から声が出そうになって。ああ、そうだ。待っていたんだと、やっと会えたねと。抱き着きたいという気持ちが胸をいっぱいにする。

 

 

 ─そして、僕が泣いてたら君が笑って─

 

 柔らかな茶色い目が私を見つめて細められて。癖のある茶髪が、褐色の健康そうな肌が、ひどく懐かしく感じて。その手は私を優しく抱きとめてくれる…何年ぶりかの人の腕の中は温かくて胸が張り裂けそうな、そんな気がして。

 

 

 ─僕は強くはないけど、君が望む限り一緒にいてあげるから、だからね?─

 

 そして胸の奥……ずっとずっと奥……ムズ痒く、熱い。焼けるように、まるで消えないようにするかのように。

 

 ─また、会おうよ。何度も、生まれ変わってさ。僕は待ってるから…だからね、君も約束してよ─

 

 ああ、そう。そうだったはずだ。私はあの時……約束をした。私が何よりも願い欲したことを叶えて、幸せにしてくれて、しわくちゃの私を愛しげに今と同じ様に抱きしめる存在と。

 

 ─約束する、約束するわ…ガリィ─

 

 何度、生まれ変わっても彼の側に帰ってくると。

 「ガリィ?」

 「うん、僕はガリィだよ。困ったよ君のいる場所は分かるのにたどり着けなくてさ」

 

 ああ、待っていたんだ。このお惚けたように笑う存在を。方向音痴でお馬鹿だけど……私を否定せず、優しく笑って迎え入れてくれる存在を。

 

 「ねぇ、僕の契約者である君の名前を教えてよ」

 

 「サリィよ……サリィ・テイスというの……」

 

 涙が止まらなく、ほっとした。

 やっと会えたね。ずっと探してくれてたんだね。私が忘れても前の私が死んでも何度も何度も探して出会ってくれた。

 

 

 私はその日。自分が土精霊王の契約者であると、思い出し、理解した。

 

 もう、一人になることはないのだと。

 

 

         ◇

 

 

 「どういう事か説明して!ガリィ!」

 「どういう事もなにも…ほら言ったでしょ、水精霊王が産まれたよーって」

 

 お惚けた様にガリィは呑気に煎茶を飲んで私に「あと何回言えばいい?」と問いかけてくる。殴れる。ほかの人間が殴れなくても私は契約者だから殴れる。素晴らしいね、最高よ。

 

 

 ゴンッ──

 

 「痛いよ…サリちゃん」

 「ちゃん付けやめてって何度も言ってるでしょ!もうそんな歳じゃないんだから!」


 ガリィと出会ってからもう十五年。長いものだと思うし、我ながら良くこの面倒な精霊王と契約者として付き合っていけると思う。

 

 「そんなことより!なんで水精霊王様が私の家にいるの!王城へ連れてきなさい!」

 

 「え?だって僕王様に用なかったし。アルに紹介する気もないからね」

 こうだよ。決まってこういうんだ。何度も精霊王がどんなに大事で影響力があるかも理解してないし、王様がいつも敬語で話しかけても「気持ち悪いなぁ」で済ますお調子者なガリィに何度拳をおとしたことか。

 

 「あの、大丈夫?」

 困惑したような水精霊王様は目を見張るような美しさがある。光精霊王様とも違う美しさ……繊細で透き通るような、それでいて儚い。そんな美しさがある。

 そんな水精霊王様はガリィとは違って空気が読める良い子だ。ガリィの方が何百歳と上なのにどっちが子供なのか、たまったもんじゃない。

 

 

 「大丈夫です、心配に及びません。失礼致しました、水精霊王様。私の名はサリィ・テイスと申します……一応ガリィの契約者をしております」

 「一応って何さ?」

 「ガリィは黙ってて!……光精霊王様もわざわざ足を運んでくださり──」

 

 

 そこで気がつく。

 光精霊王様笑ってない?ちょっと、肩震えてる気がするんだけど。気のせいかな?……いや、やっぱり笑ってるよね。光精霊王様ってあんまり会わないけど笑わないイメージ持ってたからびっくりした。

 きっと笑った顔も綺麗なんだろうな。 

 「…はぁ」

 「あの…ほんとに大丈夫?」


 光精霊王様といいガリィといい変な人ばかりね。唯一の救いは水精霊王様が良い子ってことかしら。ほかの精霊王様に会ったことがないからわからないけれど。

 

 さて、それよりもこの可愛らしい水精霊王様に何よりも言わないといけない事を忘れてたわ。

 

 「ようこそ──テルナマリン王国へ」

 そう告げて深く礼をした。

   

        ◆

《水精霊王》アルヴィス・サークフェイス

見た目の年齢 14歳程

見た目の種族 人間

《キャラ詳細》

やっと生まれた水の精霊王。少し癖がついた勿忘草色の髪に、ラピスラズリの瞳を持つ美少年。泣き虫で、好奇心旺盛。シシリーに対し複雑な感情を持っていた。人に対して疑問を持つが根は優しい、良い子。




《光精霊王》シュバルツ・クレイトン

見た目の年齢 25歳程

見た目の種族 人間

《キャラ詳細》

光精霊王。よく人間の前に姿を現す一番名前や存在が人間達に伝わっている存在。嘗ては天使と呼ばれたこともあった。

ヨルゼ王国の第四王女エルメラと契約している。

長身で細身。線の薄い美青年。銀の長い髪を後ろに一つに縛り、細めの金の瞳を持つ。

シシリーに変わり、アルヴィスを教育することになった。

アルヴィスに対しての何かを言おうとしたエルメラに口に出すのを禁じ、エルメラもアルヴィスも守ろうとしている苦労人。



《土精霊王》ガリィーヴ・テンルスタ

見た目の年齢 13歳程

見た目の種族 ドワーフ

《キャラ詳細》

方向音痴な上に忘れっぽい。のんびり屋で自由人なため唐突に知り合いに会いに行くと告げて出てったきり一年行方不明になるなどざらである。

ふわふわした茶髪に茶色い目。

幼いドワーフの外見だがドワーフらしくない柔らかな笑みを浮かべる。



《光精霊王の契約者》エルメラ・チャカル

年齢 10歳

種族 人間

《キャラ詳細》

光精霊王の契約者。命を助けられ思い出した。

シュバルツにはエルと呼ばれている。

契約者であるためか元々なのか10歳の可愛らしさとそれに反した思考力を持っている(みたい)。

ヨルゼ王国第四王女



《光精霊王の契約者》サリィ・テイル

年齢 32歳

種族 ドワーフとエルフのハーフ

《キャラ詳細》

頑固者ドワーフと高慢なエルフのハーフのため珍しく、また戦争のせいで混血と言うだけで人から虐げられてきていた。そんなサリィだがガリィとの契約を思い出し、今は幸せ。

ドワーフの中では長身。エルフの中では短身。長命種族の混血な為若々しく寿命も長い。ガリィに対してよく拳を振るう。



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