闇の中で聞く光
今回は短いです
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暗いその空間に浮き上がる様に白が散らばる。乱雑に切られた髪が剥き出しの地面に散らばりその持ち主は縛られたままその側に寝かされていた。
白く美しい肌は所々赤紫に染まり、白の髪には赤い血がこびり付き、そして白の中で主張する大きな宝石のような目は空を見たまま動かない。
その少女の表情は無く。無である。なぜ自分がここにいるのか、なぜ生かされているのか、それも分からずただ息をしてその場に転がされる少女。その目は生きているというのに生気がない。
そんな中、光が灯る。その持ち主は彼女をここに入れた村の長……村長ハバドだった。彼は彼女を冷たく見下ろし笑う。
「バケモノ、気分はどうだ。」
その声に彼女が反応し顔をあげる。その目は憎しみに染まり真っ赤な目が燃え上がるよう炎の様に煌めく。
「残念だったな、お前がのこのこ水をもらいになんて来なければあの女は死にはしなかったのに」
その言葉に、村長のその表情に彼女は大きく目を見開いて。「お前がァァァア!」と村長の足に食らいつく勢いで這いずり寄った。しかし縛られてる身である彼女のそんな行動など彼は許さず。必死の思いの彼女を彼は踏みつけ、また嘲る。
「水が欲しかったんだろ?ヨルゼ王都で水精霊王が現れて水精霊達を復活させたらしい」
「……っ」
「残念だったな。本当に?運が悪かったんだよお前は。」
グリグリと足で彼女の頭を踏みつけてハバドはその場を立ち去る。その顔は優越感に塗れ、自分の下になる存在を玩具のようにいたぶる快感を。彼は感じ、知ってしまっていた。
「お母さん…お母さん……」
ハバドが去り、再び暗闇に飲まれたその地下室で彼女は1人、今は亡き愛しい人を思い涙を流した。熱く燃えるような瞳は揺れ、涙がつたい、それを誰も知ることなく流す。彼女の涙は彼女の弱さを隠すように地面に染み込んでいった。




