面接対策
午前九時五十分。
時間が来た。
僕は静かに席を立って、筆記用具と、面接用の青いノートを持って教室を出た。
職員室の前でそのノートを読みながら待っていると、しばらくして向こうから先生が来た。
「こっちでやろう」
面接の練習は普段使われていない教室で行われる。練習が先生と生徒の一対一で行われるためだ。
一回全部通してみて、そのあと問題点を挙げて、もう一度通す。
だいたいこれで一時間弱。
このためだけに片道一時間の学校の来る事を考えれば、少し時間の無駄かなと思うかもしれないけれど、前期試験が終わって勉強する気は全く起きない人間が家で時間を浪費するよりは、こうやって学校に来て誰かと駄弁って、時には勉強する方がましだ。
これに、これから会えなくなる友達と一緒にいたいという気持ちも手伝って、僕はたいてい、下校時刻ギリギリまで学校にいることになる。
そうだ。面接の練習。
第二志望の大学。つまりは、後期試験で受験する大学のことは、かなり調べた。
逆に、こっちの方が第一志望なんじゃないかっていうくらい。
そのおかげか、基本的なことはすぐに口にできる。
志望動機についても、初めは自分が何をしたいのかわからなかったけれど、何日かじっくり考えてみて、自分の夢が高校に入ってからあまり揺らいでいないことに気が付いた。ただ、それを実現するための手段が、この世界に山ほどあったというだけだ。今はそれを、理系の学科のある学部にまで絞り込んだうえで検討している。だから、それを言えばよかった。
一通り通してみて、やっぱり先生の気にかかったのは「自分の長所」のところだった。
高校入試の面接でもそうだった。
自分に特段すぐれたところがあるとは思えなかったし、僕は特段すごくない能力をかさ増しして堂々と放せるほど度胸のある人間でもなかった。
だいたいのことは、そこそこできる。だけど、とても上手いという段階にはならない。
つまりは器用貧乏。
それが僕の僕自身に対する評価だった。
でも、入試はそんな言い訳を許してくれるはずがなかった。
突破口は自分で開くしかないだろう。
先生は、その手伝いしかできないんだから。
目の前で、先生はそう言った。




