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怯える親子

 1-9

夜帰った間島は小泉欄が来てくれた事を大いに喜んだ。

「もう判っただろう?小泉さんが私の可愛い一人娘にそっくりだと」

「はい、漸く理解出来ました」

「もう、今私が考えて居る事を説明しておきたい、もし嫌なら帰って貰っても構わない、もう私も愛する娘と妻を同時に失って生きる気力を無くしていた、その時君に会ったのだ」

「はい」

「二人は交通事故だったのだよ、即死でね、その時私は海外に行っていて留守だったのだよ」

「大変だったのね」

「娘は慎重な子だから、信号無視で赤信号に飛び込む様な子じゃないのに、赤信号に突っ込んで大型トラックと激突したのだ」

「。。。」

「車の中には子犬の死骸も有ったのだ、それが先日君にあげた犬と同じ種類の犬なのだ」

「あの叔母さんが倒れたのは、それね」

「この家にはフレールと云う犬が居たのだ」

「隣の部屋の写真の犬ね」

「そうなのだよ、事故と同時に居なくなったのだ」

「あの叔母さんに子犬を貰ったのね」

「多分そうだと思う」

「パパの奥さんって何処の生まれなの?」

「どうして?そんな事聞くの?」

「いや、何となく気に成って、もしかして京都生まれの京都育ち?」

「何故判ったの?」

「勘よ、只ね、昼間お手伝いさんが事故の現場が此処よって、地図で教えてくれたから」

「それと、どんな関係が?」

「だって、大きい通りだもの、普通自殺でも考えないと、、、」

「私も居眠りか、子犬を見ていたか?しか、娘は安全運転の子だから考えられないのだよ」

「だから、私で試したのね?あの叔母さんを」

「実はあの叔母さんの息子と娘は付き合っていたのだよ」

「そうなの」

「君は知らないと思うけれど、八坂神社でその息子にも君を見せたのだよ」

「そうだったの?」

「知らない男がその息子に近づいて口論していたけれどね」

「それ、公平だ!」

「公平って?」

「私の事好きでその日、熱海から尾行していたのよ、その息子さんが私の彼氏と思って話しに行ったのだわ」

「そんな事が有ったのだ」

「まさか尾行されていたとは知らなかったのです」

「欄さんに来て貰ったのは、娘の事故の真相が知りたいのですよ、協力して貰えませんか?」

「無理なら、諦めますが?」

「パパが私に近づいたのには何か有るとは思っていましたが、いいわよ協力する、面白そうじゃない、あの叔母さんが倒れたのが怪しいわよ」

「そう、ありがとう、ありがとう」

順平は欄の手を握って泣きながら礼を言うのだった。

娘さんの事、愛していたのね、可愛そうよね、一瞬で奥さんと娘さん亡くすとねと欄は考えていた。


時が変わって。。。。。。佐山は小泉欄のマンションを捜索していた。

何か?DNAの鑑定も必要だが、実家の余呉の母親にも連絡しなければ、しかし定期券だけでは確定出来ない。

それと美優が見た男性は?

しかし小泉欄がこのマンションから居なくなってもう三ヶ月以上に成っている。

洗面台から髪の毛の付いたブラシを持って佐山は帰った。

これで小泉欄と一致すれば、母親を呼んで遺体も送って貰おう、余呉の自宅に、死体の顔写真が識別出来なかったのだ。

それは油をかけて燃やされていた。


間島順平は欄の協力であの親子の周りに欄を出没させて恐怖を味会わせてやろうと考えた。

身体の体型は声も似ていたから電話でも恐怖を与えられると考えて、母親公子に習字を習いたいと電話をさせてみた。

最初はお手伝いが電話に出たのだが、間島と申します是非奥様にと云ったからお手伝いが「今頃間島さんが何の用なのよ」と欄の父親だと思い電話に出た。

「先生ですか?お習字を教えて頂きたいのですが?」

「どちらの?間島さん?」

間島建設だと思っていた公子は、態度が変わってそう言った。

「お忘れですか?間島欄です」と言ったから公子が「。。。。。」声が消えた。

顔面蒼白になって受話器を切ってしまった。

着信履歴が液晶に出ている。

また鳴った「わーーー」公子は電話から逃げ出した。

公子は昼間から寝込んでしまった。

友和が帰って来て「友和いよいよ、幽霊が家に電話を掛けて来たよ」

「幽霊が電話を掛けないよ」

「でもね、確かに欄の声だったよ、着信履歴見てきて、間島の家からだよ」

「嘘だろう、欄は一人っ子だし、今はお手伝いさんしかいないよ」

「見てきてよ」

「判ったよ」暫くして「間島の家からだよ」

「だろう、怖いよ、動物の祟りかな?」

「誰かの悪戯だよ、一度日曜日に線香でもあげに行ってくるよ」

「そうしておくれ、成仏してないのだよ」と怯えるのだった。


次の日曜日に一応電話をかけて間島の家に行く事にしたのだ。

お手伝いさんから聞いた順平は、聞き出すチャンスだと、欄と作戦を練ったのだった。

日曜に友和はやって来た。

お手伝いさんは休みで「こんにちは、ご無沙汰しています」とチャイムを鳴らすと「ワンワン」と犬の鳴き声がする。

新しく犬を飼ったのかな?

「こんにちは、上田友和ですが」

「ワンワン」

「すみません」ともう一度言うと、後ろから「いやーー、いらっしゃい」と間島順平が声を掛けた。

「ご無沙汰しています、今日は欄さんのお線香だけと、思いまして」

一度も来てないのにと順平は思った。

「新しく犬を飼われたのですね」

「いいえ、飼っていませんよ、私一人だから世話出来ませんよ」

「でも、チャイムの向こうから鳴き声が」

「誰も居ませんよ、私が押しましょうか?」

「。。。。」

「ほら、何も無いでしょう?」

「僕が押したら、聞こえたのですが?」

「まあ、どうぞお入り下さい」

友和を応接に招き入れて「コーヒーでも入れます」と言って順平が立ち去った。

三人で写した写真が飾られていた。

友和が眺めていると「フレール、フレール」と写真の後ろから聞こえる。

「何-」友和は青ざめた。

「返して、返して」と聞こえる。

「あーーー」と応接を出た。、

「どうしました?」順平が青ざめた友和に言った。

「今、応接で欄さんの声が」

「ハハハ、気のせいでしょう」と笑った。

「本当に聞こえたのです」

「折角ですから、仏壇に」

そう言われて仏間に順平と友和が、仏壇の中にフレールの写真が見える。

「あれ、あれ何ですか?」

「娘が亡くなった日から居なくなったのでね、一緒に供養しようかと思ってね」「そうですか、」

「友和さん、コーヒーが入りました」と欄の声が聞こえた。

「わー」

「どうしたのですか?」

「今、欄さんの声が聞こえたでしょう」

「えー、聞こえませんが?私は聞きたい」

「そんな、今コーヒーって」

「友和君、娘と何か有ったの?」

「何も有りませんよ」

「あの日から内では正確には二人と犬が同時に消えたのですよ」

「私は、母が子犬を差し上げただけで、それ以外は知りません」

「ワンワン、ワンワン」と外から聞こえた。

今度は順平が「あっ、フレールの鳴き声だ」と言った。

「僕、僕、もう帰ります、失礼します」と慌てて転がるように帰って行ったのだった。

友和が帰ると欄と順平は大笑いをしたのだった。

「何かをしていますよね」

「あの驚き方は普通じゃないからね」

「次、何するの?」

「友和の学校に行って、彼の友達に会って欄のアルバムにクラブのメンバーが載っているから」

「面白そうね」

「直ぐに消えないと尻尾掴まれるからね」

「判った」

欄は楽しそうだったが、順平は何とか娘の敵をと思っていた。


公平は南田に問い詰められて、欄の事を話してしまった。

湯河原のコンパがそんな大金を持っている事はおかしい、坂田に何かお金の匂いがしますね、と相談をしていた。

あんな雑種に大金を使って預けるには、何かもっと儲かる事が有るのだと思った。、

公平はマンションの鍵も預かって、部屋の空気の入れ換えを頼まれていたから、

しかし公平の行動を柳田塔子に監視させていた。

塔子が公平に近づいてマンションの鍵を盗もうとしていた。

それはあの部屋に何か金ずるが有ると思ったからだった。

公平と塔子は面識が有るから簡単に話が出来た。

スナックに誘い睡眠薬を飲ませて、鍵を盗む事は造作も無い事だった。

古いマンションの鍵だから型さえ取れば直ぐにコピーが作れたのだった。






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