三ヶ月契約
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翌日、コンパの仕事を休みたいと事務所に話すと、引き留められたが、間島の家に来月から三ヶ月100万で行く契約に成っていた。
夜、公平と食事に行った欄は
「少しの間会えないの我慢してくれるなら、今から、行っても良いわよ」
「何処に~」
「馬鹿ね、ホテルよ」
「ほんとうなの?」
「本当よ」
「その代わり三ヶ月は会えないわよ」そう言って郊外のラブホに向かったのだった。
「僕、フリーターじぁない、仕事探すから、本気で付き合って欲しいな」
SEXが終わった後公平は欄にそう言った.
「それって、結婚したい?」
「そう思って貰って良いです、今直ぐじゃなくて、二年後とかですが」
「そうね、公平優しいから私も好きよ、動物好きな人は好きだから」
欄には久しぶりのSEXだったが、相性も悪くなかった。
一平と美優は釧路の市内観光でも時間が無かったので大半が市場での買い物に成ってしまった.
夕方警察に行くと、解剖の結果睡眠薬が大量に飲まれて居た事、外傷は無、SEXも形跡無し、血液型0型身長160センチ、所持品無し、服装は白のブラウスにカーディガン、紺のズボン、装飾品は無、その結果を佐山に連絡して、一平達はホテルに帰った。
「何故?男の死体が無いの?」
「見間違いで美優が見た男が小泉欄さんを殺したのだろう」
「それは違うと思うわ」、
佐山から電話で「小泉欄、22歳、湯河原のコンパニオン夢の所属でもう三ヶ月の休暇期間を過ぎている」
「定期券が湯河原~熱海、小泉欄期限は先月で切れていますね、」
「佐山さん普通期限の切れた定期券だけ持って居るって変じゃないですか?」
「それは変だね」
「それとね、美優がね、男の死体を見たと云うのですよ、でも死体は女性なのですよ?見間違いだろうと云うのですが、美優は間違い無いと言うのです、死体の発見場所と美優が見た場所は殆ど同じなのです、どうなっているのでしょうね?」
「また、死体が発見されるかも知れないな、まあ、新婚旅行を楽しんで来いよ、すまなかったね」佐山も遠慮しながら言うのだった。
~翌月小泉欄は大阪の豊中の間島の自宅を訪ねた。
立派な門に緑が庭に茂って「でっかい家」そう言いながらチャイムを鳴らすと
「どちら様ですか?」とお手伝いさんの声。
「今日から来ました、小泉欄です」
「はいはい、ご主人様から聞いていますよ」と扉の鍵が開いて中に入った。
内玄関まで少し歩いて、キヤリーバックを持って玄関に「こんにちは」と言った。
中から出て来た60代のお手伝いさんが「あっ、」と驚きの顔に成った。
「亡くなられたお嬢様は双子さんですか?」といきなり聞いたのだ。
「えー、叔母さん、娘さん知っているの?」
「存じませんが、毎日写真は見ていますから、まあ、お上がり下さい」
応接室に通された欄も三人で写った大きな写真は目に付いた。
「本当だ、この服私持っている」と叫んだのだった。
お手伝いの山田千佳子がコーヒーを持ってきて「ね、私が言うのも無理ないでしょう」と写真と比べて言った。
「はい、私も初めて見ましたから、びっくりしています」
「生まれは何処?」
「滋賀の余呉の田舎なのです」
「雪の多いところね、私は敦賀なのよ」
「近いですね、此処のお嬢様って亡くなられたのはいつ頃なの?」
「一年程前じゃないかな?交通事故でお母様と一緒に即死だったそうよ」
「えー、即死なの?」
「赤信号にお嬢様が突っ込んで、まるで自殺だったそうよ、何でも、子犬を貰いに行っての帰りで、此処のご主人は海外に出張中だったみたいで、私が此処にお世話に成ったのは事故から二ヶ月目だったかな?」
「どんな子犬?」
「それは知らないわ?何でもチャンピオン犬の子供だと聞いたわ」
「高いのでしょうね?」
そう言いながら先日ペットショップで引き取って貰った値段を想い出していた。
「そうそう、向こうの部屋にもお嬢様の写真飾って有るわよ、そこにも犬が写って居るけれど、あれはどう見ても雑種だと思うけれどね」
「見ても良い?」
「良いですよ、廊下の右の部屋よ」
欄はその部屋に行った。
電気を点けると先程よりは小さいが間島欄が犬を連れてポーズを「あれ?この服も私待って居るわ」と小声で言った。
犬は雑種の可愛い感じの犬だった。
「叔母さん、この犬、今は居ないの?」
「私が来た時、犬は居ませんでしたよ」
「あの写真の服も私持って居るのよ、それに名前も同じ欄、顔も似ているし体格も歳もでしょう、びっくりね」
「此処のご主人、貴女に娘さんを見ているのだね、可愛そうだよね、一人娘と奥様を同時に亡くしたのだからね」
「ほんとうね」
「私が来た時は殆ど喋らなかったけれど、最近はよく話しをする様に成ったのは、貴女のせいだったたんだね」
「娘さんの変わりか?取り敢えず三ヶ月の約束だからお願いします」
「何て呼ぼうか?」
「欄で良いですよ、それの方がパパも喜ぶでしょう」
「そうね、じゃあ、そうするね」
「手伝う事有ったら言ってね」
公平は三ヶ月の我慢だ!そして三ヶ月の間に就職を探さないと、二年後には小泉欄と結婚するのだと決めていた。
今日はマメを坂田獣医病院に預けに行く事に成っていた。
獣医も豆柴の雑種だから、場所も要らないし簡単に引き受けてくれた。
でも三ヶ月は長いなあ、そうは思ったが、兎に角職安に行って仕事を探そう。
それが欄さんと結婚する最低条件だ。
昨日も母民子にその事を話したのだった。
坂田獣医病院と公平が勤めているワールドペット熱海の店長とは、知り合いだった。
それも子犬の売買からそれ以外の事まで、飲み友達だった。
公平はその事実をまったく知らない。
その夜も熱海の料亭に二人プラス二人、それは受付の三原真理子と柳田塔子である。
真理子は坂田の愛人で塔子は店長南田邦夫の恋人だった。
餌の紹介、子犬の売買でお互いが利益を得る関係に成っていた。
偶然坂田が真理子とラブホから出て来たのに出会ってしまった。
それからの付き合いなのだ。
妻の良子は南田と提携して利益を得ているから、商売上の付き合いだと理解していた。
現実はお金持ちのペット好きからお金を巻き上げるのが四人の共同作戦だった。
「南田さん、今日お宅のバイトの泉田君が雑種の犬を三ヶ月も預かってくれと持って来たが、どう云う事だ?」
「三ヶ月は長いですね」
「良い客なのでは?お金持ちでしょうな」
「そうですね、三ヶ月も預かると、凄い値段ですね」
「それも、雑種の豆柴よ、信じられないわ」
「血統書付きの良い犬が買えるわ」
「一度調べて?、お金を儲けましょう」
「取り敢えず、病気だと言って治療費でも」
「そうね」
その後四人は別れてラブホに消えていった。
そして数日後、泉田に坂田病院から電話が有って、預かっている犬が病気で治療したので二万掛かりましたと連絡が有ったのだった。
南田店長が「泉田、おまえ坂田獣医に犬を預けているらしいな?」
「何故?ご存じなのです?」
「知らないのか?坂田獣医さんに餌も卸しているし、子犬の世話、交配と色々交流が有るのだよ」
「そうだったのですか?知りませんでした、その預けている犬って雑種らしいじゃないか?」
「はい」
「飼い主、金持ちだな?」
「そんな事無いです、三ヶ月預けたら良い犬が買えるよ、勧めて売りつけら?」
「可愛がっているから、無理ですよ、今海外に行っているから話しも出来ませんから」
「そうか、海外旅行か、三ヶ月も?豪勢だな」
南田は益々商売に成ると考えたのだった。
公平は欄からカードを預かっていた。
もしマメでお金が必要なら使って、公平の事信じているからね。
そう言われて暗証番号まで教えて貰っていたから、自分は欄に信頼されているし、愛されていると信じ切っていた。




