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迷犬イチ

  1-26

「突撃してくれ」と佐山が山城屋に居た刑事達に言った.

館内にいる客に鍵をかけて、絶対に外に出ない様に、従業員と警察が手分けをして廻ったのだ。

相手は殺し屋だそれも四人、他の客に迷惑がと言うより危険が及ぶからだ。

数十人の警官と刑事が各階に待機。

エレベーターにも数人が階段を少しずつ上がって行く。

人質三人の安全が第一だ。

その時フロントに電話が「特別室だが、飲み物が無い、適当に数本ビールを持って来てくれ」と連絡が有った。

「どうします?」

「此処の制服貸して下さい」二人が着替えてその後に数人が続いた。

「中の様子を見てきましょうか?」

「そうだな」

「全く判らないから、飛び込んで人質が殺されたら」

「相手が多すぎますね」

取り敢えず見てきます、そう言って二人がビールを持って入った。

「そこに、置いて帰れ」

「はい、判りました」

中を見回した時、刑事の頭に拳銃が突きつけられた。

「お前、警察だな」

もう一人も二人がナイフを突きつけていた。

二人の刑事は縛られて風呂場に連れて行かれた。


しばらくして一平達が到着して合流した、

「今、飲み物をと言うので刑事が中の様子を見る為に持って行ったのですが帰りません」

「捕まったな」

「一平、真柴の携帯に掛かってきたら、今は話せんと、言わせろ、三原の妹が姉を殺した訳を聞きたいとでも言って」

車に戻った一平は真柴の携帯を持って「今から、三原の妹がお前と話ししたらしい、一言、今は話せんと言ってやれ」

「どうしてだ、」

「何故殺したか聞きたがっている」

そう言っていた時に携帯が鳴った。

「いくぞ」

「今は話せん」

直ぐに切った。

大きい声だったが、携帯が遠かったので相手には小声で聞こえた。

一平は「言わせましたよ、誰からの電話ですか?」

「屋上の殺し屋だ」

「えー、刑事が行ったから、真柴の安否を確かめたのだ」

今の携帯にメールで「こちらも、警官で一杯だ、上手に逃れと送れ、喋れないと」

「はい」

(真柴さん人質はどうしますか?)

「佐山さんこれ」と見せた。

「もう要らない、三原の妹と犬は手に入れた、この警官達を尾引寄せて逃げればいいと送れ」

(判りました)

「人質を使いましょう」

「寝ている三人は駄目だ、警官を使おう」

捕まえた警官を先頭に四人が部屋を出た。

四人の警官と一人の刑事が居るだけだった。

七人で此処に来たのだと殺し屋達は思った。

露天風呂を背に刑事を盾に前に進む、前方にはエレベーターが扉を開けて待って居る。

その時露天風呂から数人の刑事が背後から襲いかかった。

一人が階段を刑事と一緒に転がった。

もう一人は露天風呂に引きずり込まれた。

二人は隙をみてエレベーターに乗った。

何故か二階のボタンを押したが、そこで停まって電気も消えた。

「ネズミが二匹捕まりました」

「疲れるまで待ちましょう」

「そうだ、拳銃持って居たからな」

佐山と一平が笑い会った。

公平達三人は薬を飲まされていたので、救急車が三人を運んだ。

同じ頃、百合もオーナーのママが見つけて救急車で病院に運ばれた。

殺し屋三人は警察の病院に一人はトランクに挟まれて、階段から落ちて骨折、露天風呂の石に肩を当てて脱臼、後の二人は二日目哀れな姿でエレベーターから、警察に連行された。

「二日間食べなくても出る物は出るのですね」と一平が笑った。


取り調べで真柴は観念したのか、事件を喋りだした。

友和の事件で揺すられて、二人を殺した事。

間島欄に似ているから顔を潰せと言われたが、我々は間島欄の顔を知らなかった。

まさか柳田が南田と来たとは思わなかったと自供した。

三原がシェリーの誘拐をしたので、それを丸山が手伝ったので殺した。

刑事の奥さんを間違えて拉致して失敗だった。

警護の刑事もそれで殺す事に成ってしまった。

三原の妹に翻弄されて上田が狂ってしまったので、我々の身の安全の為に殺した。

唯、三原真理子に妹は居ないよと真柴に言ったら「あれは誰だ」と狂った様に叫いたのだった。


間島は泉田公平に自分の会社に就職しないか?

そして小泉欄と結婚して、近くに住んでくれないだろうかと持ちかけた。

いつまでもフリーターでは欄と結婚出来ないと思っていた公平は「はい」と返事をした。

妹の瑠璃も京都で就職をする。

シェリーは坂田獣医がそのまま飼う事に「主人の形見ですね」そう言って引き取った。

一平が「佐山さんの最後のメール作戦、何処かで見た様な感じでしたね」

「そうか?」

「京都の時と似ていましたよ」

「この事件で何人が犠牲に成ったのだ」

「南田、柳田、三原、丸山、坂田、松本刑事、そして上田公子」

『七人か、凄いですね』

「もう少しで殺されかけた、小泉欄、瑠璃、泉田親子、そしてお前の美優さんもだ」

「でも最後は糞まみれでしたよ」

「笑えない事件だった」

「静岡県警の諸君は誰だったのでしょうね?」

「判らんが、彼女が居なければ解決してない事件だっただろう」

「何故、彼女なのです?」

「女文だからだよ」佐山は少し慌てた。

「じゃあ、今日はこれで帰ります」

一平は嬉しそうに帰って行った。

後ろ姿を見て、今夜は美優さんにサービスしてくれよと心で呟いていた。


一平が家に帰ると「ほら、ほら可愛いでしょう」

「どうしたの?」

「坂田獣医さんから二匹頂いたのよ、お礼に」

「何故?お前にお礼?」

「ひ、み、つ」

「それに、一匹しかいないじゃないの?」

「ほら、此処に居るわよ」

(こんばんは、ご無沙汰しています、新田由佳里です、可愛い子犬頂きました)の動画

「義理の姉の所か」

「この犬幾らすると思う?」

「判らん」

「百万以上だって」

「うえー、この子犬が、タケー」

「そうよ、本当はもっと高いかも?」

「価値が判らないよ」

「私には判るわ、この子犬の方が一平よりは上だって事が」

「何―」と追いかける一平に逃げる美優、

檻に入った子犬が二人を目で追って「ワン、ワン」と鳴いた。

二人は抱き合ってキスをした。

「ご苦労様でした」

「ありがとう」と一平が言った。

それは総てを知っていたのだろうか?

それは美優にはどちらでも良い事だった。

一平がお風呂に入って、後から美優が入って行く、幸せな一時が今夜は続く予定だった。

携帯が鳴って「一平事件だ、直ぐに来てくれ」

「何ですか?今から何ですよ、良いのは」

「殺人事件だ、今度は何処ですか?」

「三島で他殺体だそうだ、頼むぞ」

「美優ちゃん,そう云う事で、出掛けます」

「そうなの?内容教えてね、我慢するから」

「また、探偵するのか?」

「私は名探偵美優です」

「犬の名前決まったの?」

「イチ」

「何、それ?」

「ペイだと屁見たいじゃん」

「それ、俺の名前じゃないか」そう言いながら出掛ける一平だった。



                    完


                   2014、07、21


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