狙う
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新幹線の中で一平が「誰が公子の犬を誘拐して、姉妹を救ったのでしょうね」
「誘拐した人はもうこの世に居ないのかも知れないぞ」
「じゃあ、メールの写真とかは?」
「事件の真相を我々よりも早く知った人がいたのだ」
「警察より早く事件の真相を知って、姉妹を助けて逮捕させたのですか?」
「それしか考えられない、正確な場所、時間、それが判らないと出来ない芸当だとは思わないか?」
「間島さんの話で南田さんと柳田さんの事件は判りましたね」
「府警が真柴達を逮捕出来るかだな」
「そうですね、あの現場に居たら、逮捕出来たのですが、」
「後は残った者たちの自供待ちだな」
そう言ってから、一眠りするよと佐山は言うのだった。
県警に帰ると、京都府警から取り調べで、南頼子がメール交渉でやられましたと言っていたと、また資料を送ると云ってきた.
まだ真柴を捕まえる材料に苦労している様だった。
殺人関係に捕まった連中は関与が少なかったから、断片的には判っても決定打がなかった。
「美優待って居ますので、今日はこれで帰ります」
「名探偵に宜しくな」
「また調子に乗りますから、褒めたら駄目ですよ」そう言いながら帰っていった。
真柴があれは誰なのだ?
あの一連のメールで上田のお奥さんを殺人まで追いやった奴は?
犬の事を知っている?あの姉妹を知っている?
奥さんの犬を飼える場所?ペットショップ?獣医?
「この血統書の犬を探して金にするか、ついでに、あのメール野郎もぶっ殺してやる」と怒りを露わにするのだった。
一平が自宅に戻って「只今、美優!寂しかった?」
「いいえ、面白かったわ、ニュースで見たけれどあの叔母さん殺されたのね」
「そうなのだよ、僕達が踏み込んだと同時位に殺されたと思うな、」
「事件は終わってないのね」
「殺人者達は一人も捕まってないと思う」
「何人位の人が殺人しているの?」
「4~5人かな?」
「怖いわね」
「今度は何をするだろう?」
「恨みを晴らすかな?」
「誰の?」
「公子を殺した奴の」
「殺人者が殺したのだよ」
「それは口封じでしょう、本当は殺したく無かった」
「そうか、流石に名探偵だな、それでその恨む奴は誰?」と一平が言うと美優は自分を指さして笑った.
「面白い、冗談」そう言いながらお風呂に誘うのだった。
美優も佐山も同じ事を考えて居た。
次に狙われるのは泉田、多分もうすぐ小泉欄が帰って来る。、
でも悪いが囮に成って貰おうかと佐山は考えたのだった。
「美優何を考えているの?」
そう言いながら抱き寄せ、そしてキスをしていた。
翌日から真柴は殺人者に小泉欄を見張らせてい。、
自分の手下達に罪は軽いし、総て公子に命令されて仕方なく行ったと言えと面会の弁護士に話させていた。
それは殆ど当たりだったから、進二は大学受験を諦めて、父親も大学教授を退職、友和も大学を中退した。
南の携帯のメールの記録が静岡県警にも送られてきて、佐山と一平は凄い駆け引きだなと見ていた。
「佐山さんこのアドレス、僕に来たのと同じですね」
「そうだろう、我々の行動も知っていたのだよ、新幹線の時間まで計算されている」
「でも、凄い事しますね」
「お前は凄いの、貰ったよ」と笑ったのだった。
佐山にはこのメールが誰なのか判ったから、しかしそれは誰にも言えない。
勿論本人にも、殺人者達が知れば家を吹き飛ばすかも知れないから当分秘密だ。
いや永遠に秘密の方が一平も幸せかも知れない。
「ところで、帰ったら美優さんに、次に殺人者が狙うのは誰って聞いてみて」
「もう聞きましたよ、そうしたら自分を指さしましたよ」
やはりなと佐山は思った。
「いや、今晩だよ、もう一度聞いてみて」
「何故?」
「多分俺が思っている人の名前を云うと思うがな」
「それは誰です」
「まあ、お楽しみにしておこう」と笑ったが、佐山は本当に凄いと思っていた。
彼女の働きが無かったら今頃、三人死んでいた可能性も有ったから、感心してしまった。
夜、一平が「美優名探偵に次に殺人者達が狙う人を聞いて見てと言うのよ」
「昨日の答えじゃないとね、泉田公平よ多分ね、もうすぐ小泉欄さんが帰ってくるから」
一平にキスをした。
不意だったので一平が驚いた。
「今のが、答えよ」
「判った、今夜もSEXしたいのだね」
「馬鹿じゃないの」と笑った。
翌朝「どうだった?」
「それがね、笑いますよ泉田公平よ、チューしてそれが答えよ、だって言うのですよ」
「流石だな、そこまで読んでいたか」
その後の捜査会議で佐山は、24時間泉田公平を監視警護しましょうと発言した。
理由は小泉欄が泉田公平に迷惑をかけたから、今まで以上に愛情が湧く、そしてまめマメと云う欄の愛犬を世話していたから、欄は公平と結婚までいくだろう。
殺人者達は、公子の愛犬を誰かが隠して飼っていると思っている。
例の交渉メールの主が泉田だと思うから殺しに来るから、そこを逮捕するのだ。
数日後予想通り小泉欄は熱海に戻ってきた。
本田百合に連絡をして今夜お店に行くと言った。
それは公平と食事をしてから行くと言う事だった。
欄は公平の勤めるペットショップに向かった。
刑事が警護して、殺人者も尾行していた。
「ごめんね、公平君」そう言って欄は抱きついた。
周りのみんなも事情は知っていたから、拍手をするのだった。
「マメ、元気だった」と欄が抱き上げると、喜び一杯に表情に表した。
「どんなに、高い犬もマメの愛情は表現出来ないわよね」そう言って頭を撫でるのだった。
「公平さん電話で話した様に、今夜私の友達の店にも行こう」
「その予定にしています」
静岡県警に京都府警から、監視をしていた真柴が熱海に向かったと連絡が入った。
佐山は多分公平を捕まえて、公子の犬の所在を聞こうとするだろうと考えていた。
但し聞く為に欄に何をするか判らないのが心配だった。
夕方公平の勤務が終わるまで待って二人は食事に行った。
熱海の商店街の料理屋さんに、此処からなら歩いて百合の店に行けるから、殺し屋達はもう既に百合の店を調べていた。
それは、熱海に帰れば必ず会うだろう事を、山城屋の母の事も調べていたのだ。
真柴は今夜の宿を山城屋に予約をしていた。
それは山城屋と昔関係が有ったから、暴力団関係の繋がりだったから、断れなかった。
五階の上に屋上が有ってその横に露天風呂と部屋が有るのだ。
特別なお客しか泊まらないのだが、真柴はその部屋を要求していた。
仲居の民子もあれは物置?旅館の持ち主の家と思っていたのだ。
百合はスナックを代わっていて、(スナック赤い鳥)に勤めて居た。
開店は8時だが今夜に限って早くから来ていた。
欄が早く行くかもと言ったからだった。
久しぶりに会えるうれしさも有って早く来たのだ。
店主が来るのはいつも10時頃で夜は遅くまで営業するのだ。
芸者とかコンパとかと一緒に来る客も多い歓楽街だから、客足は遅いのだった。
まだ、8時前なのにもう扉が開いた。
欄早いと思ったら危険な匂いの男が二人だった。
「あの、まだなのですが?」
「ビール位有るだろう」
そう言われて百合は恐る恐るビールを出した。
ふたりは「お前も一杯飲め」と言われて仕方なくグラスを差し出した。
「乾杯だ」
「乾杯」と小声で言った。
一口飲んで置くと「もう一本持って来い」と言うのでまた持って行く。
「グラスを空けて、もう一杯注ごう」
もう一人は飲まないのだった。
百合が一杯を飲み干して「さあ、注ごう」と言う言葉が遠くに聞こえた。
即効で意識を失った。




