救出
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「佐山さん、京都に着いたら、何処から探しますかね?」
「先日の真柴の事務所が怪しいと思うが、な」
「美優が連れて行かれた可能性の高い処ですよね」
「先日もあの上田の奥さんが行っただろう」
「京都府警に待機と駅に迎えに来て貰ってとお願いしますか?」
「そうだな、殺人鬼が居るから、完全な体制を頼んだ方が良いだろうな」
『はい、急ぎます』
「米原か」と佐山が独り言の様に言った。
「米原辺りね」美優も独り言を言った。
そして連続で子犬とシェリーの写真を送った。
「奥様、これ見て下さい、一杯ですよ」
写真を見た公子が「おおおーー、可愛い、可愛い、会いたいね」と携帯にキスをする。
欄は呆れて見ている。
瑠璃はまだ小さく泣いている。
(今から、届けてあげるわ、姉妹と交換よ)
「奥様メールです」南が見せる。
「えー、届けてくれるの、わー会えるのね」
「危なくないですか?」
「犬を持って来たら、捕まえて殺せば良いじゃないか、私をこんなに苦しめて生きてられると思うの、ねえ真柴さん」
「真柴さん居ませんが?」
「何処に行ったの?」
「トイレです」殺し屋が言った。
(私は、行きませんから犬を別の者に届けさせますからね^^)
「奥様、聞こえていますよ、ほら」とメールを見せる。
公子は周りとみんなの顔を見て「誰なの、教えているのわ」と叫き「怖いわ」と言うのだった。
(何処に届ければ良いの?)
「奥様、これ」と南がメールを見せる。
「仕方ないわね、教えないとシェリーちゃんにも子供にも会えないしね」
「危なくないでしょうか?警察かも?」
(お金も百万用意しておけ、子犬はその時だ)
「これ、見て下さい」
「うーん、賢い奴だ、子供はまだ、返さないのだ、百万の金位で」
「教えますか?場所」
「当たり前じゃないの、何処の警察が犬を誘拐して身代金を取るのよ、貴女馬鹿じゃないの」と南に怒る。
「百万明日渡すから、子供も明日返してと送りなさい、丁寧によ、怒らすと怖いわ」
(明日、百万渡すから子犬も直ぐに返して下さい)
(判った、明日は私が子犬を持って行くわ)
「これ返事です」メールを見せるのだった。
「佐山さん、到着しますね」
車内にアナウンスが流れる、その時いっぺいの携帯に(静岡県警の諸君ご苦労様、場所はアールケイスタジオだ、至急、姉妹の救出に向かいたまえ)
「何ですか?これ?」と佐山にメールを見せた。
「念の為だ、二カ所に別れよう、本体の京都府警と二人は真柴事務所に、俺と一平と京都府警数人でこのスタジオに行こう」
もう到着ホームに電車は滑り込んで居た。
「すみません、警察です、先に行かせて下さい」
「一平、場所を府警に確認させておけ」
「知らない、アドレスですよ、悪戯かも?」
「かまわん、確かめないといかんだろう」
人をかき分けて階段を走り降りる。
駅前には数台のパトカーが非常灯を廻しながら待機していた。
「よし行こう、お願いします」そう言って車は駅を後にした。
「途中から音も総て消して近づけ、人質が危ないから」
数台のパトカーが合流して走る。
途中から二台に成って一台は覆面パトで佐山と一平、警察官が五人でスタジオに
「もうすぐ着きます」と警官が言った。
(もう、到着するから、姉妹を帰す準備をしたか)
(はい、いつでも)
二人は縄も解かれて待たされていた。
「佐山さん、此処ですよ」
「人の気配がするな」
「殺し屋が居るから、拳銃を用意して」
「はい」全員が拳銃を持って身構えた。
「よし、行くぞ」と扉を開いた。
「警察だ、大人しくしろ」、
「手を上げて、集まれ」みんなが移動始める。
「奥様、言ったでしょう、危ないって」と南が話した時、上田公子は大きく倒れた。
「奥様――」
左の胸に鋭いナイフが突き刺さっていた。
一面に血が流れ出て「きゃー」
「わー」とか騒ぐ、佐山が公子に駆け寄ったが、既に息が無くなっていた。
「救急車を二台、を」と佐山が言う。
「応援を送って貰え、全員逮捕だ」騒ぎの中、殺し屋は姿を消していた。
真柴は事務所に居て警察が乱入してくると「何か?有りましたか?」
「此処に、小泉姉妹を捕らえているだろう」
「自由にお探し下さい、何の事だか理解出来ませんな」と悠然としていたのだった。
その時佐山達から連絡が入って救出したと連絡が入って、警察は引き上げた。
「あの公子が居なければ中々、殺人事件の解決は難しいだろう」
そこに公子を殺した男が帰ってきた。
「ご苦労だった」
「どうも」
「しかし、金の出す処が減ってしまったな」
公子の家から犬の血統書とか、我々と関わりが有る物を持ち帰る様に指示した。
美優が南にメールを送ったが返事が無かった。
終わったのだと確信して、疲れたわ、と大きく背伸びをした。
(静岡県警の諸君、救出ご苦労だった、気を付けて帰りたまえ)
「佐山さんまた、メールが着ましたよ、救出ご苦労だって、何故判るのですかね?」
「怖い世界だな」
「スパイが居たのですかね」
「間島さんに、小泉さん達が行く病院教えてあげなさい」
上田公子が死んで真相が闇の中になるかも知れないと佐山は考えた。
一応京都府警に取り調べは任せて、佐山達は翌日静岡に帰る事に成った。
南田、柳田、三原、松本、丸山殺しの関係自供が有ればまた捜査をする。
今回は形上、上田公子が小泉欄姉妹を誘拐監禁、上田公子が殺害された事件に成ったのだった。
翌日朝から二人は小泉姉妹の病院に行った。
午後から警察の取り調べが有るらしいので、病室には綺麗にショートカットになった瑠璃と欄。
そして間島が午後の取り調べに一緒に行く為に二人を迎えに来ていた。
「元気に成って良かったね」
「ありがとうございました」
「でも変でしたよ、私達が危なくなったら、あの上田にメールが届いて、助かるのですよ、私も坊主にされる寸前でした」
「それって?」
「私が捕らえられてから、直ぐに始まりましたよ、メールの交渉が」
「どうやら、上田の愛犬を誘拐している人じゃないでしょうか?」
「シェリーちゃんがと言って、泣き喚きでしたから」
間島が横から「もう判ってらっしゃると思いますが、娘の欄が原因なのです、欄と上田の息子友和は大学のサークルで知り合って付き合っていたのです、犬好きの女性なら交際を許すと言われた友和は娘に聞いたら娘も高校の時拾った犬を飼っていましたから、まあ嫌いじゃなかったと思いますよ、ある日子犬を貰って欲しいと友和から申し出が有ったのですが、二匹も飼えないと私が怒ったから、
友和が友達に内の飼っていた犬を譲るから、貰ってくれと強引に言われ、娘も友和と付き合いがしたかったので、申し出を受け入れて、京都まで妻と貰いに行ったのだそうです、私は丁度海外に出張中の出来事なのですが」
二人は黙って聞いていた。
「その帰りに、私の想像ですが?妻と娘の車の横を友和が内の飼っていたフレールって云うのですが、それを連れて車で走り去った、妻は京都生まれの京都育ちだから、友和が曲がった先に、犬を処分する施設が有る事を知っていたのです、
その事を娘に話したから慌てて後を追ったのだと思います」
「それで、赤信号に突っ込んだ」
「そうです多分、その後海外から帰った私は何も判らなかったし、二人を失って失意の底の毎日でした、会社の慰安旅行で、この欄さんと知り合って、不審に思っていた事故の真相を探ろうとしました。
欄さんが急にお金を持っている事に、南田達が不審に思って近づいてきたのです。上田公子はお金で解決する予定だと思っていたら、いきなり南田さんと柳田さんが殺されて怖くなって逃げていました」
「公子は事件の真相が暴露されて、継続で揺すられると思ったのですね」
「小泉欄さんがあまりにも娘に似ていた事が、恐怖を煽ったのだと思います、
柳田さんを欄さんだと思って顔を潰したのがその証拠でしょうね、それが別人だったと気が付くまでは相当時間が有ったと思いますね」
その時電話が府警から掛かって「今の話しの裏付けが、有りましたよ、友和が母親に言われて直ぐに間島さんの犬を処分しに行ったと、まさかその後あの様な惨事が起こるとは思いもしなかったと言ったそうです」
「どんな犬でも飼えば可愛いのに、本当の犬好きでは有りませんね、上田さんは」
「じゃあ、行きましょうか」
「我々もまだ事件が残っていますので、一旦静岡に帰りますが、また、協力をお願いするかも知れません」
一平と佐山は午後の新幹線で帰っていった。




