瑠璃
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美優は先日の坂田獣医に電話をした。
「昨日お邪魔しました雑誌の野平ですが、今そこに居るワンちゃんの名前シェリーちゃんと言うのでは?」
「それは判りませんが?」
「反応するか?呼んで貰えませんか?」
「お待ち下さい」
暫くして「反応しました、飼い主見つかったのですね」
「はい、見つかりましたが、もう少しの間預かって下さい」
「判りました」
美優は自分の携帯番号を教えて何か有れば電話を下さいと言った。
美優は誰かが誘拐をして身代金を取ろうとしたのだ。
そして逆に殺されたか?
それとも犬の失踪と殺人は別の事件なのか?
あの叔母さんは犬を探しに熱海まで来ただけなのか?
一平に教えて警察にまかせるか?
誰かが坂田獣医に預けて死んだ?
あの、交通事故の事判ったのかしら?
「一平さん、京都の交通事故の事何か判ったの?」
「警察の機密を教えられない、けれど、普通の信号無視の事故で処理されているね」
「そうなの?何か有ると思ったのだけれどね」
「気持悪い写真なら一杯来ているけれどね」
「事故の写真?」
「そうだよ、交通事故は痛ましいね」
「私にも見られるの?」
「駄目だよ、部外者だから」
「じゃあ、こちらも教えてあげない」
「何を?」
「重大ニュース」
「妊娠か?」
「何言っているの?まだ作らないの」
「警察に来てチョコットなら」
「そう、行っても良い?」
「直ぐなら誰も居ないから」
「行くわ」美優は急いで車で県警に向かった。
「一平ちゃん」玄関に居たから声がでた。
「これだから、そこの部屋で見て、」
「トイレじゃないの」
「そう、そこが安全」
美優は仕方無く資料を持ってトイレに美優が入った。
美優は携帯で次々写真に写して資料を一平に返した。
「ありがとう」
「気持悪かった?」
「全然」
「嘘」
「帰るね」美優は微笑んで帰っていった。
家に帰った美優は携帯で撮影した写真を大きくして一枚一枚丁寧に見ていった。
その写真の一枚に小さな籠の様な物が写って居た。
これは何かな?コピーをして更に拡大した。
美優はペットショップのサイトを開いて籠の様な物を探した。
根気の仕事で、執念で見つけた時もう外は暗く成っていた。
「有った、これだ」子犬を入れる籠だった。
美優は子犬を貰って帰る途中に事故に遭った。
でも何故?子犬と事故?シェリーの誘拐?
そして沢山の殺人?バラバラだな、子供より可愛い犬か?判らなかった。
南頼子は一か八かでメールを送った。
それには(お母さんは凄い愛犬家で、今度産まれたチャンピオン犬の子供を僕が留美子さんに差し上げてと言ったら許してくれた。トイプードルで百万円するよ、今度の日曜日に会って渡したい、塾の前に16時に来てくれないか)と、中々未読状態だったが、ようやく読んだ様だ。
南はこれで、後は結果を待つだけだと考えていた。
瑠璃は完全に進二はもう自分の虜になっていると確信していた。
本当に犬貰えるかも、貰ったら直ぐに売ってお金に出来る。
進二には興味が無かったが、お金には大きな魅力を感じていた。
姉に言うと反対される可能性が有る。
瑠璃は貰いに行きますと送ったのだった。
「奥様成功です、瑠璃は来ます」
「これで、姉も呼べるな、シェリーちゃんの居場所が判る」と喜んだのだった。
欄から瑠璃に「もう、相手にしてないでしょうね、危険だから、近づかないでね」
「判っているよ、もう連絡していないよ」と瑠璃は答えていた。
真柴は間島の捜索を止めていた。
もう間島はいらないと公子が言ったからだった。
日曜日に何処か大きい声を出しても構わない場所探して、進二を駄目にした女にお仕置きをそして姉も連れてきて、シェリーちゃんを取り返すのよ、と興奮していた。
暫くして「撮影所借りましたよ」と真柴から連絡が来た。
「何を撮影するのよ?」
「小さな撮影所ですが、色々な作品で声をあげたりするから不思議じゃあないでしょう」
「成るほどそれは面白い」
「女の口を割らせますよ」
「姉妹を許せないわ、シェリーちゃんがどの様に成っているか心配よ、もう可愛い子犬も産まれているのよ」そう言うとまた泣くのだった。
翌日美優は判らないから、揺さぶりをしてやろうと考えた。
「奥様にお見せしたい、写真が有るのですが?」といきなり上田の家に電話を掛けた南が電話に出て「貴女どなたなの?」
「名前はシェリーとでも呼んで」
「えー、貴女は誰よ、シェリーちゃんを知っている人ね」
「そうよ、メールアドレス言うから書き留めて」南は慌てて紙に書いた。
「今のアドレスに、写真を受け取れる携帯のアドレスから空メールを送りなさい」
「はい」
「そうしたら面白い写真送ってあげるから」
「はい、判りました」南は低姿勢に成った。
もし怒ってシェリーちゃんを殺されでもしたら、自分の命が無いから慌てた。
公子は今日は撮影所の下見に行っている。
南は自分の携帯から空メールを送った。
すると交通事故の写真と籠の写真が送られてきたのだ。
南は腰を抜かす程驚いたのだった。
間島欄の事故の話しは知っていたから、公子が午後遅く成って意気揚々と帰って来た。
南が青い顔して「奥様大変です」
「どうしたのよ」
「シェリーと名乗る女からメールが届きまして」
「何故シェリーちゃんを使うのよ」と怒った。
「その女が預かっているらしいです」
「何―――」と大声を上げた。
「何故判るのだ」
「これ見て下さい」と携帯の写真を見せると、公子の顔色が変わった。
「両方の事を知っている意味ね」
「他にも写真有るそうです」
そう話している時にメールが届いて「可愛い子犬が二匹写っています」と公子に見せた。
今度は公子が泣き出した。
「シェリーちゃんの子供、子供よ、良い子産んでいる、流石よ」と泣き止まないのだった。
これは「留美子の姉が送っているのよ、妹を捕まえたら立場が逆転よ、シェリーちゃんを取り戻すわ」今度は怒るのだった。
「その写真頂戴、今夜は抱いて眠るわ」そう言った。
南も呆れていた、あの人の価値観は何なの?
美優はまた坂田獣医に電話をして、動画を送って欲しいと頼んだのだった、
今頃あの奥様気が狂っているかもね、そう思っていたら思わず笑ってしまった。
美優は朝8時から夜12時までの間、いつでもメールを見られるようにしてないと、受け取ったらお礼のメールを忘れない事、シェリーちゃんを殺すよと脅かしのメールも送ったのだった。
それを見た公子が「何を生意気な」とまた怒りを露わにした。
するとまたメールが届いて子犬の動画だった。
「奥様これが、届きました」と見せたら「可愛いじゃないの、動いているわ、早くお礼のメールをしなさい」と変わるのだ。
今度は飽きるほど繰り返してみるのだった。
日曜日進二の塾の前に、これから撮影します、の看板が立てられたのは15時半だった。
こんな場所で何の撮影だろう?と塾に出入りする人も興味津々だった。
16時少し前に瑠璃は来た。
そこにワンボックスの車が近づいて、二人が車から降りて瑠璃を車に連れ込んだ。
「きゃー、」
「助けて-」と叫んだが誰も反応が無かった。
走り去る車を見て「上手な演技だった」
「リアルよ」
「凄いわ」
「何処にカメラ有るのだろうね」と口々に言う。
富田と岩田が看板を、にこにこしながら片づけて去っていった。
タオルで猿轡をされて粘着テープで手を縛られて、瑠璃は車の中に恐怖の顔でいた。
横には手提げの鞄が有った。
お姉ちゃんの忠告を聞くべきだったと後悔が頭の中を巡った。




