変わった,叔父さん
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熱海の郊外のペットショップに泉田公平はフリーターで働いて居た.
朝早い日と夜遅い日に分かれての仕事時間に成っていた。
今朝は早出の日で、早く出ると、店の周りの掃除、店内の動物の点検、が主な仕事だった。
店外の隅に段ボールが置いてあって、何かが入っている気配がするのだ。
箱を見ると小さな子犬が一匹入れられていた。
公平は店内でミルクを飲ませて箱のまま置いていた。
店長の南田達が来て「これは?」と尋ねる。
「あの、朝来たら店の前に捨てられていたのです」
「こんな犬どうするの!保健所か何処かに捨てて来なさい」
「でも、野良犬に成りますよ」
「だったら保健所に」
「うちは、血統書付きの高い犬の店だよ、こんな雑種、何の値打ちもない」
「でも、可愛そうじゃないですか?」
「うちの店で犬を買った客が捨てに来る事も有るのだよ」
「そんな、自分が飼っているのを捨てて?」
「犬の下取りなんて聞かないだろうが?」
「はい」
「獣医さんのところにもよく、捨てに来るらしい」
「一度飼ったら可愛くないのですかね」
「高級な犬を飼うと、よく見えるらしいよ」
「そんなもんですかね」
「泉田も美人の方が好きだろう?」
「そりゃ、そうですが」
「まあ、兎に角処分して来い」
そうは云われても可愛そうで、こっそり店の裏に隠す公平だった。
店には高級なチワワ、人気のトイプードル、フレンチブルドック、ポメラニアン、豆柴、と座敷犬の人気が高かった。
テレビのCMで人気の北海道犬別名アイヌ犬も人気だが、中型犬なので庭の無い家では中々飼えなかった。
箱に入れられた犬も子犬に見えたが、雑種の小型犬の様だ。
公平は夕方こっそり家に連れて帰ったが、家はマンションと云う、公団住宅で動物は飼えないのだった。
公団住宅の片隅に餌を持って行って、誰かに拾って貰えたら良いのに「家で飼えないのごめんね、餌は持って来るから」そう言って家に帰っていった。
泉田公平22歳、母と二人暮らし、母民子は熱海の旅館の仲居をしている。
父とは公平が中学の時に離婚していた。
しかし父西村公一は熱海でタクシーの運転手をしているので、時々は顔を見るのだった。
公一はギャンブルが好きで母民子が離婚を切り出したのだった。
その民子の勤めている旅館が大城屋と云って熱海では中堅の旅館だった。
この旅館に毎月宿泊するのが間島順平だった。
今夜も間島は一人で夕方やって来た。
今回で三回目で、前回二回はコンパニオンを呼んでいたが、今回は二名の宿泊に成っていた。
「いらっしゃいませ」と迎えに番頭が出たが間島は一人だった。
「今夜はお二人と予約では、聞いていますが?」と聞くと
「二時間程すれば来るでしょう」そう言うので民子が部屋に館内をした。
「お風呂でも、先に入られますか?」
「そうだね、此処は露天風呂有った?」
「はい、屋上に有ります」間島は今夜初めて小泉欄と泊まるのだ。
二回はコンパニオンとして呼んだのだが、何度も電話、メールの交換で漸く納得して小泉は今夜大城屋に来るのだ。
初めて慰安旅行で小泉欄に会ったのは熱海グランドホテルの宴会場だったから
実際に会うのは四回目に成るのだった。
二回のコンパニオンとして呼んだ時は毎回小百合とセットで、小百合は三万円を貰って遊びに出掛ける。
こんな楽で楽しいコンパニオンの仕事は無いわね、欄、特別綺麗でもないのに、熱心なお客さんだ。、
まあ、愛嬌は有るかな?身体もまあまあ良い方ね、今夜辺りSEXかな?そう考えていたが、欄がいつもと同じで世間話でお酒飲んで終わりだったよ、と云ったのだった。
欄はメールと電話で一晩客として一緒に泊まって貰えないだろうか?
お小遣いは10万差し上げるから、普通は近くのラブホがお決まりなのだが、欄自体お客とSEXは殆どしないのだった。
しかし今回の間島の再三の申し出に、一度位良いかなと思って、お金が魅力だった。
間島は五時から露天風呂にゆっくり入って、マッサージを呼んでゆっくりしていた。
欄が部屋に来た時はマッサージの終わりだった。
今日は普通の若者の服装で、いつものコンパニオンのスタイルではなかった。
コートを脱いで薄手のセーターにミニのスカート、普通の22歳の女の子だった。
コンパの化粧でなく薄めの感じだった。
「早かった?」
「いいや、もう終わる」
そう言って間島は起き上がって、「今日は良い感じだね、娘さんらしくて」
「そう?化粧薄いからよ」
「今の方が可愛いよ」
「そう、ありがとう」
助平爺さん、マッサージで頑張るつもりだわと心で思って、薬も飲んでいるの?
怖い年寄り、いるらしいからね、友達のコンパの子、終わらなくて困ったって言っていたよね、10万の元とらないでよね、色々な事が頭を巡る。
「欄さん、お風呂に入ってきたら?」
「食事も今夜は一緒にだからね」
いつもはコンパだからお酒以外は飲めないのだが、今夜はお客だから食べられるのだ。
「じゃあ、お風呂入ってきます」
普通は一緒に入るだろう?
此処の露天貸し切り出来るよと喉迄でかけたが、まあいいか、一緒に入らないのに、態々誘わなくても、そう思って欄は一人で大浴場に行った。
「ここの、お風呂初めてだけれど、良い感じね」
大浴場には二人の叔母さんが入っていた。
欄に「若い娘さんは肌が綺麗ね」と云われて思わず、
そりゃそうだよ、叔母さん幾つなのよと苦笑していた。
本当は髪も洗いたかったが、また、汗をかくから後でもう一度入ればいいか、そう思い早めに上がった。
叔母さんが「カラスの行水だね」と笑ったが、でも間島さんが待って居るから急いでいるのよと言いたかった。
部屋に戻ると机には一杯の料理が並べられて、そこに仲居の民子が生ビールを持って来た。
「お風呂上がりには、これでしょう」
間島がそう言って「乾杯」「乾杯」
この叔父さん気が利くね、最高に旨いよ。
「さあさあ、一杯飲んだから食事にしましょう」そう言いながら間島は刺身から食べ出した。
「欄さん、今夜は時間有るからカラオケ行きましょうか?」
「良いけど、外に行く?」
「館内で良いよ、湯冷めするから」
「そう」
残念そうに言う知り合いのスナックに連れて行って、おこぼれを貰おうと思っていたのだ。
「そうだ、酔う前に渡しておくよ」間島は封筒を差し出した。
お金だ「ありがとう」暫く食事が進んで、仲居の民子が次々と料理を持って来る。
「欄さんはペット飼ってないの?」
「飼っているわよ、柴犬の雑種だけどね」
「そうなの?犬好き?」
「好きよ、本当はね、チワワが欲しいのよね」
「叔父さん犬好きなの?」
「好きって程じゃないけれどね」
「そうなの、私のマンションだとね、大きい犬は飼えないからね」
「柴犬って、そこそこ、大きいのじゃ?」
「豆柴の雑種よ」
そんな話をしている時に民子が天ぷらを持って来た。
「ペット買われるのですか?」
「いや、まだそこまでは話が進んでないのだけれど、どうかしたの?」
「いえ、私の息子がね、近くのペットショップに勤めていましてね、もし、買われる、ならと」
「そうなのですか?また用事が有ればね」と微笑む欄。
ペットの話は終わって、食事の後は館内のカラオケに二人は行った。
流石に建設会社の社長さんだから上手だ。
宴会とか飲み会が多いから、覚えてしまうのだと間島は笑った。
欄も宴会で歌うから年寄り向きの歌も歌えるから、二人のデュエットも上手で間島は上機嫌で部屋に帰った。
部屋には布団が並べて敷いて有った。
欄はさあ、叔父さんとSEXか私の相手では多分最高齢じゃないかな?
「楽しかったね、今夜は、私はもう一度お風呂に入ってから寝るよ、先に寝てもいいから、鍵持って行くから」
そう言ってお風呂に行ってしまった。
どうなっているの?寝ていたら起こしてするの?
それとも、朝?不思議な叔父さんだ。
今までも一度も私の身体を触った事もない?
欄は今夜の出来事、そしてこれまでの事を思い出していた。




