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誘惑

  1-13

間島順平は上田親子の恐ろしさを知ってしまった。

小泉欄の身代わりに柳田塔子と南田邦夫も、多分犠牲に成っただろうと身を潜めていたが、二人にはどうしても上田が許せなかった。

単なる交通事故から殺人事件に成っている事と、人の命と犬の命をどう考えているのだと、怒りが込み上げていた。

欄は南田と塔子の欲の深さが招いた不幸だと思ったが、一度上田の一番大事な物を壊してやりたいと思っていた。

欄は自分の妹瑠璃が可愛くて、瑠璃を利用して馬鹿息子の誘惑を考え出した。

上田の弟進二と瑠璃が同級生で高校三年生、受験の最中、瑠璃は高校で卒業して就職で、余呉の田舎では仕事が無いので京都の観光施設に決まっていた。

面接の人が一発で採用を決めた位だから、芸能界でも行けそうな可愛さだった。

土日の休みに京都に呼んで受験勉強の邪魔をさせたら、面白いと思ったのだ。

順平は欄に上田の可愛がっている犬を何とかしてみないか?と持ちかけていた。

「南田と塔子は間違い無く殺されているから、坂田獣医に教えると何かするかも?」

「それは面白いかも、同じ獣医仲間もいるだろうし」

「私ね、妹に手伝って貰って、上田の弟の高校生の受験の邪魔をさせよと思って妹に言ったら、お小遣い貰えるなら、何でもしてあげるだって」

「妹さん巻き込むのは良くないのじゃない?」

「もう就職決まったし、京都で働くから下見だって、可愛いのよ、高校生を誘惑するのはイチコロよ」

「怖いね、」

「でも、付き合っている男居ないらしいよ、馬鹿に見えるのだって」

「でも学校有るだろう」

「休みに来るらしいよ、京都のホテルに部屋欲しいのよ」

「判った、ツイン予約しておくよ、気を付けてね」

「弟の行動調べて、瑠璃来たら直ぐに行動させるわ、携帯も用意してね、坂田獣医には手紙送って置くわ」

順平も時々欄に会うと気が休まるのだ。

いつまでもお手伝いさんの家には難しいので、契約ホテルを借りる事にしたのだ。

今後妹が時々来ても自由に泊まれるし、間島は直ぐに手配したのだ。

数日後坂田獣医に手紙が届いた。

京都の上田公子が暴力団を雇って柳田を殺した事、南田と柳田が上田の秘密を知ったから殺されたと、可愛がっている犬に関連しているらしい、上田は三原と貴方の関係も知っているから、気を付ける様にと書き加えていた。

それは、南田が坂田達にも手伝わせようと言ったから欄が知っていた。

この一文が書いてあるので、坂田は相談出来る相手が限定的になったのだった。

警察、嫁には言えなくなった。

坂田は欄の予想通り、知り合いを通じて上田公子を調べた。

人より犬が好きで、主人の博は京都の私立の大学教授、子供は大学生の友和、

高校性の進二、公子は習字の先生もしている。

そして怖かったのは真柴進の存在だった。

暴力団との繋がりがある愛犬家だったから「この手紙は本当の事が書いて有るよ、真理子」

「南田さん達、何をしたのかしら?」

「でもこんな手紙が私に届くのは、彼らは私達が、南田、柳田の同類だと思っているって事だよ」

「でも殺されるような事、何も私達知らないし、怖いわ」

「どうすれば?」

「殺されない保険が必要かも」

「例えば?」

「子供より大事な犬を誘拐するとか?」

「どの様に?」

「何か方法を考えるしか助かる道は無いかも知れない」

「警察はだめ?」

「我々の関係と南田達との関係も暴露されてしまうよ」

「獣医の知り合いで誰かいないの?」

「探してみるよ」

坂田は我が身を守る為に京都の獣医かペットショップを探す事にしたのだ。

それは意外な所から見つかった。

南田のペットショップは全国に数店舗有って、南田の後輩の丸山大輝が京都の店の店長をしていた。

休みに坂田は真理子を連れて店を尋ねた。

そして南田さんが多分殺されて居るだろうと話した。

そして犯人は上田と真柴だろうと、南田が何をして殺されたのかは判らないと話したのが、この丸山の欲を引き出したのだ。、

丸山は南田の友達だから、もっと悪だったのだ。

金と女が大好きな男だったから、始末が悪い、真理子に一週間手伝って欲しいと言ったのだ。

頼み込んだ関係で坂田は来週まで三原真理子を、京都に滞在させる事にしたのだった。

日曜日に坂田だけが帰って行くと、「上田の家に、習字を習いに行って、私の紹介のお嬢さんが習いたいと言えば教えてくれるから」

「そうなのですか?」

「知り合いだから多分聞いてくれる、上手くいけば、直ぐにでも、犬の一匹位持ち出せる」

「上手くいくと良いですね」

「今日にでも電話しとくよ、詳しい打ち合わせはその後でな」


同じ日に小泉瑠璃は京都のホテルに姉欄と着ていた。

「此処よ」

「わー、お姉ちゃんこんな所に住んでいるの?」

「少しの間よ」

「でも豪華ホテルじゃない、余程良い男捕まえたの?」

「違うよ」

「週に何回来るの、その彼氏?毎晩SEXするの?」

「馬鹿じゃない?そんな関係の人じゃあないの、娘さんと奥さんを殺された可愛そうな人なのよ」

「そんな人が何故?」

「娘さんがね、私に似ているの」

「そんな事有るのだ、それで復讐の手伝いしているの?」

「それだけじゃないのよ、もう少しで殺されかけたのよ」そう言って新聞記事を見せた。

「これ少し前の新聞ね?釧路で柳田塔子さんが殺された?これ?」

「そうよ、私と間違われて殺されたの」

「えー、何?この死体本当はお姉ちゃん?」

「そうなのよ」

「何故?警察に言わないの?」

「証拠がないの、今私を捜しているの、だから熱海には帰れないの」

「その上田の息子を虐めるのね、私なら判らないからね」

「そうよ、瑠璃の魅力で受験を失敗させてよ」

「面白いね、高校生でしょう」

「土日は塾よ、今日は五時に終わるの、休憩して夜はまた勉強、明日は十時から夕方五時迄塾よ」

「上手く、引っかけたら十万くれるの?」

「今手間賃で五万あげるよ、上手にやったら十万あげるよ」

「まかして」

「でも身体使ったら駄目だよ、ホテルなんかに誘ったら許さないからね」

「判っているよ、そんな事はしないよ」

「じゃあ、これが進二の写真、これが親父、これ母これが兄だよ」そう言ってスマホの携帯を渡した。

「この携帯使えば判らないからね」

「OK」

早速塾に出掛け瑠璃だった。

夕方丸山は真理子と打ち合わせを目的に夕食に誘った。

それはもう女癖の悪い丸山の常習手段だった。

常連の寿司屋に行って「明日から行けるよ、井原真理子にしたから、親父は犬好きの工務店の社長にして置いたから、今週二回は行けるからチャンスは有ると思う」

「子犬だから、簡単かも」

「家の中ウロウロしているらしい」

真理子は上手くいく様な気がしていた。


瑠璃は塾の前で待って居た。

出てくる男の子が全員瑠璃を一目見てから立ち去って行く、遅いなあと思っていたら、漸く写真の進二が出て来た。

「こんにちは」瑠璃の行動はびっくりする程積極的だった。

「は、はいどちらさまでしょうか?」

「上田進二君でしょう」

「はい、そうですが」

「お茶飲みに行こう」

いきなり言われた進二はびっくりした。

「貴女、何方ですか?」

「ああ、私、工藤留美子よ、お兄さんが、弟は勉強ばかりしているから、一度息抜きに、お茶でも誘ってやってと言われて、頼まれたのよ」

「あの兄貴が?信じられない」

「貴方のお兄ちゃん今私の姉と付き合っているのよ、知らないの?」

「前に好きな女の人いたけれど、今はいないと思うけれど」

「貴方のお兄さんの一目惚れみたいよ、ほら?これ姉の写真」と欄の写真を見せた。

「これ、これ、お姉さん?」

「そうよ、工藤好美って言うのよ」

進二は何度か欄に会っていたから、その写真のインパクトは相当な物で

「ね、だからお茶行こう」

「はい」と付いて来たのだった。




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