捜査
1-12
小泉欄と間島順平にはこんな事件が起こるとは想像していなかった。
お金を少し払って貰い、それは欄に報酬としてあげよう。
上田親子達が妻早苗と娘を直接殺害した訳ではなかったから、謝罪の一言が聞きたかった。
それに恐怖を味会わせたかったが本音だった。
まさかプロの殺し屋を雇って殺す、幸い小泉欄と自分の接点は上田親子も殺し屋達も知らない。
南田はペットのプロ、間島と南田の接点を殺し屋達に調べさせたがまったく無かったのだった。
上田公子は犬好きでその知り合いには、の様な連中も少なからず居たのだ。
小泉欄はお手伝いの山田千佳子の家に隠れていた。
間島の家は見張られているかも知れないから、南田と柳田が死んだと思われるので、公平にもまったく連絡が出来ない状態に成っていた。
脅かす方が今度は恐怖に陥れられていた。
間島に社会的地位が無かったら、今頃は危険だったかも知れなかった。
上田公子は真柴進に「片づきましたよ、謝礼に一千万あげて下さい」と言われていた。
真柴は愛犬家の仲間だが暴力団関係と交流があり、公子が相談したので任せたのだった。
実行犯も真柴も欄の顔も知らなかったから、自分から小泉欄と名乗った柳田塔子が殺害されてしまったのだ。
「真柴さんの口座に明日振り込むわ」
「奥さん、困ったら何でも相談して下さいよ、大抵の事はお金で決着しますから」
「またお願いするかも知れません、小泉欄に男が居る様なので心配ですがね」
「湖に沈めた奴の他に?」
「探偵に調べて貰ったら、犬の世話をしている男がいるらしいのですよ」
「欄が飼っていた?」
「汚い雑種らしいけれど、あの南田と同じ店の従業員らしい、南田邦夫、柳田塔子が小泉欄の名前を使って私達を脅迫していたらしいけれど、一応、マークはした方が良いですね」
上田は小泉欄の名前を柳田と南田が使って、私達を脅迫したと決めつけていた。
お金を取りに来たのだからこれほど確かな証拠はなかった。
欄がもし行っていたら今頃はお陀仏、顔を焼いたのは間島欄に似ていると、上田親子との関連が露見の恐れが有ったから、新聞には柳田塔子の写真が掲載されたので、上田親子には有り難かった。
もし誰かが見て、友和さんとお付き合いが会った方に似てらっしゃいますね、
とか言われたら大変だった。
佐山と一平は柳田塔子と小泉欄の接点を探したが、欄と塔子は殆ど面識がなかった。
愛犬のマメを坂田獣医に預けたのは公平だったから、一度熱海に帰った時のみの接触だ。
南田は何処にも形跡がなかったが、熱海のラブホで塔子と南田の関係が判ったのだった。
そのラブホの監視カメラに坂田と三原真理子が映っていたのを佐山は見逃さなかった。
公平と欄の姿も見つかっていた。
「柳田塔子は誰かと間違われて殺されたとしたら?」佐山が言う。
「当然女性ですよね、三原真理子か小泉欄のどちらかですね」
「いや、小泉欄だ」
「何故です?」
「三人が話しをしているから、その可能性が高い」
「小泉欄と柳田塔子この関係だな」
「何故会ったか?公平に尋ねてみよう」
二人はペットショップに向かった。
すると店にチンピラ風の男が二人来ていて、泉田公平に何か話している。
「警察だが、泉田さんは?」と聞こえる様に言うと二人は慌てて出て行った。
佐山が車のナンバーを書き留めていた。
「泉田さん彼らは何を聞きにきたのですか?」
「小泉欄さんの居場所知っているか?」
「それで?」
「知りませんと答えると、いつから会ってないと聞くから、適当に答えようとしたら、刑事さん達が来られて」
「ナンバーの紹介だと、京都の探偵社猪原の車だった」
「心当たりは?」
「京都ですか?僕、一度欄さんを尾行した事有るのですよ」
「それが、京都?」
「そうです、グリーンで京都迄行って八坂神社に行きました。欄さん私と付き合っていながら月に一度位の間隔で旅行に行くので、誰か男がいると思いまして尾行したのです」
「一平糸口が見つかりそうだ」
「八坂神社で欄さんに近づいてくる若い男がいたので、話しかけたら別の人を待っているのに何を言うのだと叱られまして」
「その人は?」
「名前覚えていますか?」
「誰だったかな、待って下さい、スマホのメモに残っているかも」
「そんな所に書くのだ?」
「有りました、北村真弓さんです、誰かの友達の北村真弓って言っていました」「貴方の知っている人ですか?」
「いいえ、北村さんも知らないです」
「それで?」
「二人で口論していたら、小泉欄さんは消えてしまいました」
「一平コンパニオンクラブに行こう」
「泉田さん狙われているかも知れないから気を付けて」
二人は湯河原のコンパニオンクラブ夢に向かった。
「おい、一平あれ、先程の探偵社の車だ」
「一応手配させて、何処に行くか調べさせろ」
直ちにナンバーと車種が連絡されて尾行された。
各所にカメラが有るので早い「高速を西に向かっています」と連絡が入ったのは、コンパニオンクラブ夢で待たされている時だった。
漸く担当者が出社してきた。
先程の探偵社の二人は話しを聞かずに、帰って行ったのだと佐山は思った。
「此処に、勤めて居た小泉欄さんの事で聞きたいのですが?」
40代のマネージャーが「私も困っているのですよ、人気の子だったのでね、三ヶ月休むと言っていたのですが、もう三ヶ月は過ぎていますからね」
「実家には?」
「連絡したのですが、帰っていないのです」
「一度も、ですか?」
「はい、母親の看病とか言っていたのですがね」
「小泉さんに付いて変わった事は有りましたか?」
「そうですね」暫く考えて
「休む少し前から、化粧とか服装が変わって、凄く人気が出ていましたね」
「特定のお客さんがいましたか?」
「そうですね、大体気に入っても二三回呼ぶ程度でそれ以上頻繁な客は居なかったですね」
「そうですか?」
「それに、当店では二人一組でお座敷に出ますから、一人で呼ぶ客は少ないですよ、大体少なくても客二人ですね」
「相当高いでしょう」
「小泉さんを小百合さんとセットで二回程呼んだリッチなお客さんがいましたけれどね」
「その小百合さんは?」
「小泉さんと仲が良かった、コンパですよ」
「小百合さんは?」
「もう辞めましたね、小泉さんが休んでから、暫くして」
「そのリッチな客はどうして、小泉さんを指名したのですか?」
「ああ、数ヶ月前慰安旅行で熱海に来られて、その時偶々小泉さんが座敷に数名のコンパと一緒に行ったのがきっかけで、小泉さん関西の出身で話しが会ったので、次に来た時にも呼んで貰ったみたいですよ」
「小百合さんと、ですか?」
「はい、二回程度だったと」
「その後は?」
「それからは有りませんでしたね」
「二人の実家の住所教えてもらえますか?」
「いいですよ」
小泉欄は滋賀県の余呉、小百合は本名本田百合、愛知県岡崎の出身。
「念のために、この二回呼んだ人は?」
「確か、関西の建設会社の社長さんだったと」
言いながら台帳を調べて「間島建設ですね、最初は熱海グランドホテルの慰安旅行、次の二回は大城屋さんですね」
「ありがとう」そう言って二人は湯河原を後にした。
その時「探偵社が岡崎で高速を下りました」と連絡が「岡崎?」二人の声が同時に言った。
「彼らは此処で小泉欄の友達の住所を聞いたのだ」
佐山は本田百合の住所を伝えて警戒してくれる様に頼んだのだったが、本田百合はコンパを辞めて熱海のスナックに勤めていたのだった。




