殺された二人
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「一平、お楽しみ中か?」
「美優さんが怒るから、事件の話しは止めましょうよ」
「いや、これは緊急報告だ、あの遺体は小泉欄じゃない」
「そうなのですか?」
「まったく違う女の遺体だ」
「誰なのですか?」
「それが判れば、事件は解決だろうが、新婚ボケか?」
「佐山さん、結婚は良いですよ、僕は幸せです」
「アホかお前、」
「美優さん、良いですよ、総て」
そんな電話をしていると美優が髪を乾かして来て「何が総て良いの?あっ、この電話佐山の叔父さんでしょう?私の裸見ているのよ、いやらしい!」
「と、云う事で切ります」と一平が言うと「待て、まだ話が有る、小泉欄は確かに北海道に行っている、それだけだ、まあ楽しめ」そう言って電話が切れた。
「一平さん、もう明日の夜は帰るのよ、今夜もね」そう言ってキスをしてくる美優だった。
美優の身体も性格も最高だった。
一平は一連の事件の犠牲には成ったが、最高の嫁さんだと思っていた。
美優にも初めてSEXした男性だったのだから、元気に成って良かった。
一時は病気かと心配したのに、その後はお互いが満足していた。
友和の学校に欄は出没して、一層友和を恐怖に陥れたのだった。
合い鍵を手に入れた塔子は欄のマンションに忍び込んだがめぼしい物は何も無かった。
適当に持ち帰ったのだっが、ガラクタが多かった。
何処から金を貰っているのだ。
公平もカード以外全く知らないから、南田に言われても答えられなかった。
そんな時欄が順平に「この仕事終わったら北海道に連れて行ってよ」
「何故?北海道なの?」
「私、一度も行った事無いのよ、だから行きたいの」
「北海道も広いよ」
「そうね、知床、阿寒湖、摩周湖良いな」
「そうだね、秋の北海道は良いよね、決着付いたら行こうか?欄とパパで」
「うんうん」
小泉欄は嬉しそうに順平の腕を握った。
「私ね、今日昼間、娘さんが亡くなった場所、ネットの地図で見ていたのだけれど、友和って云う奴、保健所に行こうとしていた、のじゃないか?」
「保健所?」
「要らない犬を預ける場所よ」
「えー、そんな所が有るの?」
「野犬とか飼えなくなった犬を預かって飼い主を捜すが建前だけれど、殆ど薬殺するの、じゃないかな?」
「奥さん京都生まれの京都育ちでしょう、だから判ったのかも知れないわ、フルーレを友和が直ぐに連れて行った?それを奥さんが欄さんに教えていた、欄さんはフルーレが殺されると慌てて追った、それなら話しが判るわよ」、
「欄、賢いな、私は一年判らなかったよ」
「灯台元暗しって言うじゃない、そんなものよ」
「彼奴が犬の鳴き声に怯えたのも判るな」
南田は公平に欄が三ヶ月も何をしているのか?そしてお金は誰が出しているのか?
それを聞き出そうとして、余程良い金脈だと思ったのだ。
預かっている犬を病気だと云って一度呼び戻して、問い詰めようと計画するのだった。
「欄さん、マメの具合が悪いので、一度帰って来て欲しいの」と言ったのだ。
「判ったわ、一度公平にも会いたいしね」と公平には嬉しい言葉が聞けたのだ。
その夜欄は「昼間の話し嘘でしょう?」と公平に電話をしてきた。
それは三ヶ月間絶対に電話はしない約束だったから、公平は欄に事情を話して、
マメを預けている金額の事、眠らされて合い鍵を作られた事、坂田獣医と南田が仲間で公平は脅されて居る事を話したのだった。
「一体何が?」
「明日話すよ」
欄は電話を切って間島に相談をした。、
「変なのが乱入してきたな?」
「でも、使えるかも知れませんよ」
「あの上田の馬鹿親子懲らしめるのに?」
「明日帰って嘘の情報流しましょうか?」二人は段取りを話し合った。
私達は北海道に観光に行って高みの見物しましょう。
翌日、欄が帰ると予想通り、熱海駅に公平は南田と塔子と三人でやって来た。
海岸で駐車をして「小泉さん、お金儲けの話し有るらしいね」
「公平から聞いたの?」
公平は車の外に番をする為に出た。
「私達にも儲けさせてくれないか?」
「私もね、実は人手が欲しかったのよ」
「そりゃ、話が早いじゃないか」
「実はね、大学教授の息子がね、大阪の会社の社長さんの娘さんを殺したのよ」
「殺人か?」
「そうよ、それでね、その息子からお金を取ろうとしているのよ」
「それで、私がコンパで客から情報仕入れたのよ、」
「そいつは、何者なのだ?」
「大学教授よ」
「脅し取る訳だな」
「丁度良かったわ、手伝って貰えたら助かるわ」
「何処で、話しをするのだ」
「北海道よ、学会が有るからその時に時間作ると、息子も来るらしいわよ」
「遠いな、」
「目立たない場所じゃないと会えないでしょう」
「そうだな、大きなスキャンダルだからな、息子が殺人なら教授は首だな」
「幾ら貰うのだ?」
「五千万よ、私は顔知られてしまったから、困っていたのよ」
「塔子なら判らないな」
「勿論ですよ」
「危ないのは俺たちだから分け前は?」
「三千万でいかが?」
「よし、決まりだ」
「塔子さんが私になりすまして、お金を受け取りに行けば良いのです、南田さんは陰からガードして下さい」
お金の話しには目のない南田は欄の話しを疑わなかった。
「何故?小泉さんが?選ばれたの?」
「それがね、歳も顔も、名前まで一緒だったのよ、これみて」と写真を見せた。
「おおー、これは間違うよな」
「だから私は幽霊役よ」
「そりゃ、殺した相手が現れたらびっくりするだろう」
「殺人の真相を知っている、黙っているから金を、ですね?」
「そう当たりです」
準備が出来たら連絡する事で別れたのだった。
上田の家には脅迫電話を欄がかけた。
フレールを殺したでしょうと、そして、間島さんの娘さんと奥様が交通事故で亡くなったのはそれが原因だと話すと、
「お金で解決したい、三百万、嫌なら世間にバラス、私を見て倒れただろう?」
「あれは、あなたが?」
「そうよ」
「間島さんは知っているの?」
「知らないわよ、私はコンパしていて、偶然知ったのよ」
「似ているわね」
「私もびっくりしたわよ」
「何故?知ったの?」
「ペットショップ、彼が経営しているから、偶然京都で会ったのよ」
「友和が見られたのね」
「調べるのに時間は掛かったけれどね」
「交通事故が余分だったわね」
「まあ、お金で決着つけましょうよ」
「判ったわ」
上田の家には少額だったから問題は無かったが、何度も揺すられるのではと云う恐怖が有った。
お互い目立たない場所が希望、北海道の釧路湿原で一致した。
上田公子は知り合いに頼んで暴力団を雇っていたのだ。
それは今回で解決を着ける為に、間島が知る前に決着をと考えていたから、気持悪い電話もこの連中だと決めつけていた。
間島と欄、上田友和と公子、殺し屋数名、南田と塔子が釧路に集まったのだ。
お互いの思惑を持って、一平と美優、間島と小泉欄は同じホテルに泊まった。
小泉欄の定期を証明代わりに塔子は持って、陰で南田が見守る。
連絡をホテルで待つ友和と公子。
望遠鏡で見る美優、殺人はその時発生したのだった。
塔子を助けに出た南田を、別の殺し屋が気絶させた。
塔子は顔を焼かれて身元不明にされた。
南田は彼らに船で別の場所に放置された。
塔子には大量の睡眠薬が飲まされていた。
殺し屋達は二人の顔を知らなかった。
お金の受け取りに来たから殺されて、それだけだった。
間島欄に似た女が居て気持悪いから、処分して欲しいと依頼をしていたから、小泉欄の定期券を証拠品として塔子は持参していた。
「私が、欄よ、ほらこれを見れば」と定期券を見せたから殺された。
南田が助ける間もなく、口をこじ開けて大量のお茶を飲ませたのだった。
意外なニュースに驚いたのは間島と欄だった。
慌てて釧路から立ち去ったが、もう熱海に戻れない、公平にも連絡が出来ない。
欄は豊中の間島の家に帰るしか方法がなかった。




