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物々交換?

 

 ゴブリンに襲われた物のスライムの森から無事帰還し、魚取りに薪の補給に火おこしまで全てを済ませてから今回手に入れた収穫品の確認をする事にした。やっぱりこういう物は落ち着いてからの方がいいよね。

 後、スライムに触れてしまい爛れて熱を持った右手は川の水に浸すと痛気持ちよかったので、タオルを裂いて水に浸した物を巻いている。

 両足首に手にと、もはやタオルの原型は残っていないが吸水性だけはあいかわらず抜群だ。


 今朝超生姜をすりおろした平たい岩に収穫品を並べていく。


 まずはナイフ。ぱっと見で白かったから骨を加工したのかと思ったが、恐らく牙製だろう。刃渡り20cmぐらいで先端に向けて湾曲している。

 鋭い先端で突き刺すのは勿論だが、湾曲した内側にはノコギリ状の刃が付いていて、人間の肉なら容易に切り裂けそう。それが8本見つかった。中にはスライムが吸収してしまったのだろう、元々革を巻いただけの粗末な持ち手が溶けてしまっていたが、牙は無事だったので見つけた物は根こそぎ持ち帰った。

 そして麻袋5つ。

 これはゴブリンだと背負い袋なんだろうが、俺だと肩掛けサイズ。元々溶けずに残っていた物が少なく、残っていても穴だらけだったので袋として使えるのは2つだけ。

 木筒3本。竹の様に綺麗にくり貫かれた木筒には中身が入っている。

 太陽光の下で中身の白い顆粒が浮き上がるようだが、塩や砂糖のように結晶化しているように見えない。大体の検討はつくので一端放置。

 後は石で出来た2本の棒が紐で繋がったもの。

 握れば隠れる長さなので暗器にはなりそうだが短い石の棒では武器として役に立たない。


「堅いな」


 紐で繋がったお互いを打ち合わせるとチンっチンと澄んだ音が小さく周囲に響く。

 これを持ったゴブリンが移動する為の道具を持ち運んでいたのなら、俺が欲しかったり持っている道具だと推理出来るはずだ。


 そしてその名推理はドンピシャ。


 打ち合わせるのでなく擦り会わせると、存在意義を表す為に激しく火花を飛び出させる。

 木の棒を回転させる摩擦式着火はすでに慣れてはいたが、それでも20分30分は掛かっていた。それがこれを使えば一瞬で着火出来るようになる。


 しかし、この火花式?着火となると枯れ葉に直接火花を落としても火にはならないだろう。そこは先ほど広げた状態の悪い麻袋をばらして繊維をとればいいか。


 一通りの確認作業も済まし、今後大いに役立ってくれるであろう道具に満足した所で改めて川のすぐ脇に座り直し、木筒の中に川の水を流し込んでやる。

 日常作業を済ませて落ち着いた俺の名推理は、こちらも発泡して木筒から泡が大量に溢れだした以外は予想を大きく外れなかった。


「うおっ勿体無い」


 容器から白い泡が吹き出したさまに思わず口を近付けて啜ってしまう。

 甘っこれヨーグルトか?

 子供の頃駄菓子屋にあった、サジで食べる半固体のヨーグルト風味菓子にそっくり。

 それが木筒から溢れに溢れ、啜りきれなくなった泡が木筒の目算20倍の容量になって地面にこぼれていく。


 予想では携帯食糧か、毒薬かだと思ったが食糧の方だった。

 容器から白い泡がこぼれそうになったら啜るがジャスティス。高校生だからビールを想像した訳じゃ決してない。


「これ水の量さえ間違えなければ20食分にはなるって事か。大切にしないと」


 我が国に貴重な商品が増えたはいいが、あくまで本題は交易。それも猿相手にどうやって物々交換を理解させればいいんだか。しかも今回手に入れた物は俺が生き抜くのに役立ちそうな物ばかりで消耗品であるバナナと交換するにはもったいない気もしはじめてしまった。


 とりあえず穴だらけの袋にナイフで小さく切ると糸を抜き取る。それを解して丸めると火打ち棒の長くてザラザラしている方を左手に握り、その繊維の固まり間に挟み持つ。

 右手で表面が滑らかで堅い棒を持ち、滑らして発生した火花を繊維に当てる。

 火花は消えやすいので難しいが、何度か繰り返すうちに着火。

 初めてやった行為なのでコツを掴んだとは言えないが、短時間でしかも疲れず出来るのがいい。


 出来上がった火種はもったいないがたき火に投入してやる。折角手に入れたんだから一度ぐらい試してみたかっただけだ。

 日も暮れてきたのでこちらに来て初めて魚を捌いていく。

 日本では母親が料理を作っていたので料理となると自信はないが、ナイフの先で腹を突き刺し刃の部分で裂いてやる。日本の包丁ならもっと綺麗に切れるのだろうが身がぼろぼろになる事もないので日常使うにしても切れ味は十分だろう。

 内蔵を取り出して川で洗い流していく。本当は串にS字に刺すのかも知れないが、食べる所にそこらで拾った木の枝を刺すのには抵抗があったのでエラと尻尾の2カ所だけにしておいた。


 思い付きと言うか今更なんだが、乾燥させたのに放置していたアケビの皮を揉みほぐし、とれた塩を魚の身振りかける。


「たしかヒレや尻尾に塩で白くなるぐらい振るんだよな。これなんでなんだろ?」


 わからないが、様式美は大切なのでその通りに。問題は火加減。前回イメージしたのは焚き火の上に豚の丸焼きをグルグル回す原始人の食事だったがこれは大失敗に終わった。

 今回は囲炉裏のイメージで実験だ。

 子供の頃行ったサービスエリアには、囲炉裏(当然火がついていた訳ではなくて赤外線? 保温の機械だったが)に串に刺した魚を周りに並べていた。恐らくあれが魚の塩焼きをする時の模範解答なんだろう。

 イメージした位置に魚を刺していく。位置はわからないので遠くからちょっとずつ近付ける作戦。


「ききっ」

「また来たのか。バナナと交換ならやるぞ」


 魚を指さし、次にバナナの木を指さし流石にこれで通じるとは思えないが……って子猿がバナナの木に向かい1本のバナナを持ってきた。


「おいおいお前言葉わかってるだろ」

「き?」

「そのバナナ、バ、ナ、ナをくれ。プリーズだ魚とチェンジ」


 小首を傾げる子猿に指を指したり手をグルグル回したりと必死の身振りで交換を伝えようとはするが、理解してはくれなかった。それどころか俺のマネをして爆笑してやがる。


 そんな事をしている間に魚がいい感じに焼けた。

 恐る恐る歯を当てると、身にまでしっかり火が入って克つパサパサになっていない。


「きーきー」


 悲しそうな顔しているがやる訳にはいかない。

 バナナが手に入らないなら魚は俺の文字通り生命線だ。


「……わかったよやればいいんだろ」


 自分でも甘いとは思うが、捨てられた子犬みたいな顔して見つめられていては折角の食事も美味しく感じられなくなってしまので、もう1匹の焼き魚を串から抜いて放り投げてやる。


「うきっきっきい」

 実に嬉しそうに食べているが、塩まみれになっている魚の尻尾が気に入ったのかちびちびと味わう様にそこばかりを舐め続けていた。


「お前焦げや塩だらけの尻尾食べて、そんなんじゃ体壊すぞ」

「きっきぃ」


 高血圧とか猿にあるのかわからないが、流石に体にいいと訳がない。それでも味がなくなるまで舐め倒してから魚を丸ごと飲み込んだ小猿は足下に置いたバナナと俺を見比べてこちらに放り投げてきた。


「いいのか?」


本人は俺のマネをしただけだろうが、両手を打ち慣らして喜んでいる。その様子を静かに眺めていた母猿も俺がバナナを持っている事に何か感じている訳ではないようなので問題はないらしい。


震える指を押さえつけバナナの皮を丁寧に剥いていく。こればかりは実物をみないとわからないだろうな。神々しいと言うかオーラを放っていると言うか、とにかくエネルギーに満ち溢れた身を口に含む。


「ふぉおおおおおおおお!!」


 口から食道から胃から膨大なエネルギーが体に吸いこまれていく。もっちりねっとり甘いバナナの性質が何十倍と凝縮されて体が歓喜に震える。

 


 

 ☆今回は主人公君やる事なす事大成功でしたね。

 道具もナイフなどは今後必須となるでしょうし、かといって自作するには難しいので他から入手出来たのは幸いな事でした。

 物々交換とは言いがたいですがゴブリンから道具を、大冠猿からは高エネルギー食品の超バナナを獲得し、次回からはようやく原住民を探す準備を始めるようです。




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