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そして朝に

 彼女の家で一晩を明かし目が覚めると少女に声をかける事もなくただ置手紙だけを残して僕は立ち去る事にした。少女の家はマンションでその部屋は3階にあった。泊まったからと言ってとくになにかが起こるなんて事はなく、むしろ会話すらなかった。少女が用意した場所で眠った。朝起きると服を乾かしてくれていた。コンビニで買ったTシャツを脱ぎ棄て服を着替え外に出る。まだ陽は出ておらず少し肌寒い。雨はやんだが湿った空気がまだ残っていた。昨日Tシャツを買ったコンビニで朝食を購入する。おにぎりを買いレジに持っていくと昨日と同じ店員だったらしく、昨日は大丈夫でしたかなんて声をかけて来る。僕は適当にごまかすと店を出て『リセット』について考えを巡らせる事にする。

 駅のホームは人が集まり始めておりザワザワとしていた。ほとんどの人が街の方に向かう一方で僕はその反対側のホームのベンチに座る事にした。ちょうど特急が出た後なのでホームに人はおらず、僕はただ一人で気兼ねなく朝食を食べる。

 そんなとき不意に少女の顔が浮かぶ。少女はかわいいというよりも美人と言った方がいいと思う。僕のクラスにもそんなタイプの人が何て名前だっただろう。長い間いたはずのクラスメイトより昨日会ったばかりの名前も知らない少女の方が僕の記憶に鮮明に焼き付いていた。きっとクラスでも人気があるのだろう。ただぼんやりと少女を思うがしばらくしてその無意味さに気がつく。僕が予定通りに『リセット』を進める限り少女に合うことは二度とない。そんな少女について考える必要なんてないのだと。朝からなんとも調子が悪かった。





 私が目覚めると既に少年はいなかった。私が乾燥機で乾かした服のお礼や泊めてもらったお礼などといったものが書かれためもみたいなものはあったがそれ以外は何もなかった。その簡潔な内容に感心する。不要なものは完全に取り除かれていた。そこで私はおもわずアッと声を出した。昨日乾燥機に入れる前に少年のポケットから折り畳み式のナイフをだして返すのを忘れてた。いやわざと忘れていたのか。ともかく私はナイフを片手に外に飛び出した。鍵なんて占めている時間はない。どうせ取られて困るものなんて入っていない。雨は降ってはいなかったがどんよりとした雲が出ていて暗い。駅に向かう多くの人達をよけながら私は駅に向かって走る。普段は見知らぬふりをする人たちもこんな時だけ私を奇妙なものを見る目で見る。適当な切符を買うと街に向かう電車が到着するホームの階段を駆け降りる。丁度反対側のホームに各駅停車が入って来たところだった。




 ガチャンとドアが開き僕は電車に乗り込む。その車両には誰も乗っていなかったが僕はそのまま反対側のドアの前に立つことにした。そこで階段を駆け下りて来る一人の少女が、いや見間違える事はなかった。あの少女が駆け下りてきた。右手にはどうしてか僕のナイフを持っていた。そして少女はくるりとこちらの方を向く。そして少女と目があった。あわてて降りようとするが既に遅かった。ガタンと到着した時と変わらず音を立ててドアが閉まりそのまま発車した。そして景色は僕の心とは裏腹に流れていく。



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