第09話その2
「私たちは学園の寮に戻ります。今日は本当にありがとうございました。」
三人が頭を下げ感謝を告げた。
そんなに感謝されるようなことだったのかなぁと思ってはいたが、感謝されて悪い気になる人はいないだろう。
「いえいえ、こっちこそ街に入るときに便宜してもらったしね。気にしないで」
「カンナさん。また機会があったらよろしくお願いしますね。」
「ああ」
何度も頭をさげつつ三人は街の中央のほうへ向かって歩いて行った。
遠目からみてもわかる大きな建物もあるしあそこが学園なのだろう。
「不思議な人でした。」
「ええ、そうね。でも優しい良い人なのはたしかね。強者にありがちな驕りや助けてやったんだぞーみたいな態度も殆ど取らなかったもの」
「僕のことも凄い優しく撫でてくれたよ!」
三人は先ほど助けられた人の印象を言い合う
「ハウンドを殆ど一撃で倒してたあの実力といい何者なのでしょうか。」
「カード無くしてたって言っていたけど、最低でもCは超えててもしかしてAとかかもしれないわね」
冒険者に登録するとランクが定められる。
F-からはじまり最上級はS+と定められる。ランクが上がれば上がるほど報酬も良くなるが難易度も格段にあがる。
B以上になると滞在している街の状況にもよるがある程度の規模の討伐などが発生すると、参加することになっている。とはいえ冒険者の都合もあるので支障がなければというところだが。
断るとランクが強制的にB+ならB-に、A以上ならA-に下げられるというペナルティもあるのでよほどのことがなければ断る冒険者もいないのが殆どだ。
ちなみにA以上になると騎士団や国のお抱えになることが多い。
「また会えるでしょうか……」
「一目惚れ?」
「なっ……違います。単純に気になっただけです。」
「でもでも、リュミエが頬赤くしてるの僕見たよ?」
紅いサイドテールの先を指でいじりつつ、そんなことない……と、か細く告げた。
(さてはて、これからどうするかねぇ……)
かなり広い通りを進みながらカンナは今度のことを検討していた。
夕暮れになりあと少しもすればあたりは夜になるだろう。まわりはまだまだ騒がしく商店の殆どは締まり始めていた。
夜にやるお店もあるのだろう。外にテーブルとイスが並べられそこには仕事おわりなのか。
冒険者だと思われる人たちが酒を飲んで騒いでいた。
そんな町の中を進みんでいくと様々な人たちを見ることができた。
人間が比率的には多いが、時折獣人やエルフ、WBO時代にみたリザードマンに酷似した者
様々な人種が歩いていた。
途中見回り中の騎士がいたのでオススメの宿を聞くと、評判が良いという場所を教えてもらった。
「それなら、この街道を東に進んで突き当たったら右へいくとすぐのところにある宿屋がオススメだ。目立つからすぐわかるよ」
「ありがとう。行ってみるよ」
もうすっかり日も暮れ松明の炎がまだらに付き始めた。
教えられた場所へいくと平屋の家に挟まれて三階建てくらいの建物があった。
明らかに目立っていたので間違いないだろう。
「いらっしゃい。お、あんた新顔だね。」
「ああ、さっき着いたところなんだ。空いてるかい」
「宿泊でいいんだね。一泊銀貨2枚、飯は言ってくれれば用意するよ。」
ハウンドの魔石代といって抜いた銅貨数枚のほかにさらにリュミエちゃんに銀貨を3枚を貰っていたのでそれを渡す。
「確かに。この魔法符を入口にかざすと開く。なくすと大銀貨3枚の弁償だから気をつけてくれよ。部屋から出るときは俺か他の店員に渡してくれ」
「わかった。ありがとう」
早速受け取り階段を上がる。カウンターの奥には食堂と思われる場所があり、そこにも冒険者と思われる者たちが酒を飲んで騒いでいた。
(ふう……)
部屋につき渡されたカードをテーブルに置く。あまり期待してはいなかったが部屋自体は結構綺麗だった。
人に反応して光り輝く石が天井に埋め込まれており室内は思った以上に明るい。
ベッドは硬いが許容範囲、あとはテーブルとタンスが置かれてるくらいだった。
ベットに腰掛け装備を外す。
ふと思い出し、耐性装備を別の物へ変更する。
武器:なし
頭:博愛のカフス <効果:誘惑に抗う力を得る。魅了無効。一定確率でHP吸収>
肩:なし
鎧:なし
脚:なし
靴:なし
装飾:フェアリスタの指輪 <効果:困難に抗う力を得る。火水風雷ダメージ半減>
装飾:癒しの指輪(白龍の魂)<効果:癒しの加護を得る。装備者のHPを一定時間ごとに120ずつ回復>
魂……それはWBOのモンスターに設定されたレアドロップである。
超低確率のそのアイテムは基本的にかなり高額であり、1日1体沸きのBOSSモンスターの魂は一般プレイヤーには縁がないくらい破格の値がついていた。
白龍はBOSSではないがレベル120の上位モンスターだ。
効果は物理ダメージの12%を吸収し、各種状態異常無効の付与だ。
ここまで聞くと破格の装備のように思えるが魂はその超とつく高性能のほかに超がつくデメリットがあるのだ。
白龍のデメリットは攻撃速度88%低下と属性魔法の受けるダメージが50%UPという素敵仕様なのだ。
(あとはとりあえず持ってる装備を確認しつつこれからのことを考えよう)
カンナは現状のこと、これからの身の振り方など今度のことについて考える。
初日はシグナを撫でるので精一杯だった(夢中ともいえる)
夜は深くなっていった。




