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第08話その2

走る走る走る。WBOの頃にはなかった疾走感と躍動感、叩きつける拳からは生きてることを伝えてくれる感触が響く。

自傷行為にて自分が生きていることを確かめるかのごとく。

目の前の障害物を撥ねのけながら彼は進んでいく。


「つまらん」


思い出したかのように唐突に止まった。

ふと背後を振り返り自分の行った自然破壊を見て嘆息する。

自分は何をやっているんだと、自問自答する。

リアルとは違う身体スペックに酔い自分が起こした惨状を見て反省する。

やはり血沸き肉躍る戦いがしたい。

この世界にはPvPもしくはダンジョンはあるのだろうか。


まだ見ぬ敵を想像するだけで期待感が沸いてくる。

軽く走りつつこの欲求を叩きつける相手を探そうと索敵を開始した。

しばらく草原を進みうっそうと茂る林から生き物の気配を感じる。


にやけが止まらない、どんなモンスターがいるのだろうと、いてもやることは変わらないけど、楽しみになり気配へと進む。



そこには三人の美少女が10匹を超える大型犬に囲まれていた。

モンスターの位置を確認しつつ、スキルを併用し強く走りだす。

軽く駆け抜けるような足取りから一歩一歩に力を込め、強く激しく踏み込む。

足元が陥没する感覚を感じながら一匹目に肉薄、横から胴体に掬いあげるにスキルショートブローを叩き込み。

勢いが乗ったまま両手で犬の頭を鷲掴みしスキル兜割を発動、掴んだ両手を思い切り地面へと叩きつける。

叩き潰す瞬間、断末魔なのか小さな唸りをあげたが、気にせず持ち上げる。

頭がつぶれぬるぬるとした感触がする。

つかんだまま振り返り、手の中の物体を握りつぶす。

まだ犬が沢山いることを見て、そして俺はほほ笑んだ。


「ひっ・・・」


思わずといった感じで獣耳の少女が声を漏らす。

目の前の少女たちの顔はさきほど囲まれていたときよりも深い恐怖が浮き出ていた。

高揚感が身を焦がすのを感じつつ、ゆったりと次の獲物へ近付いた。

ジリジリと魔物たちが警戒を強めた。ターゲットをカンナへと変更したようだ。

堪らなくなったのか一番近い魔物が飛びかかり大きく口を開け、その牙をカンナの足に付きたてようとする。

飛びかかってきた魔物に対し少し軸をずらし、横をすり抜けるように移動、すれ違いざまに一撃を加える。

胸から内臓にかけてにしっかりとダメージが通ったようで手には骨を砕く感触と情けない悲鳴が聞こえた。

ふと気が付くと周りから燐光が現れ空中を漂っていた。

なんだろうと疑問に思いつつ飛びかかってきたハウンドの顎へアッパー気味に拳を打ちこむ。


さらに追加で数匹を倒したところで、残ったハウンドたちが吠えた。

瞬く間に仲間がやられ叶わないと判断したのか踵を返し森の中に駆けこむように逃げていった。


「ふむ・・・」


追撃しようと思ったが、先ほどから固まっている三人の事を思い出し立ち止まる。

未だ恐怖に彩られてる三人は自分たちが見られているのを感じたのか武器を構え警戒を始めた。


「助けてくれてありがとうと言うべきなのでしょうが、あなたは何者ですか」


赤い髪の少女が警戒しつつ話しかけてきた。

シグナの時には考えてなかったが普通に日本語が通じてるんだなと思い、ふと文字が読めるかどうかもあとで確認する必要性を感じた。


「お気になさらず、俺はカンナ、旅の冒険者みたいなものだ。お嬢ちゃんたちはこの辺の娘かい?」


敵意がないことを表すため少し砕けた調子で話かける。

元々助けられたという意識はあったのだろう警戒を緩め少女たちは武器を下げた。

しかしお嬢ちゃん呼ばわりされて癪にさわったのか表情と気を引き締めた様子の赤い髪の少女は答えた。


「お嬢ちゃん呼ばわりは止めて頂けますか。私はリュミエ、こちらは治癒士のテッサ、後ろでおびえているのはラウルといいます。」

「リュミエちゃんとテッサちゃんとラウルちゃんでいいかな?」

「ぁぅ・・・僕はラウルと呼ばれるの苦手なので愛称でいいです。ラルでお願いします。」


恐る恐るといった感じで獣耳の少女が声をかけてきた。

そういえば最初に悲鳴あげてたのもこの娘だった気がする。


「今度はちゃん付けですか・・・とりあえず助けて頂いてありがとうございます」

「リュミそんな言い方ダメよ。ちゃんとお礼言わないと。カンナさん助けて頂きありがとうございました。あっという間にハウンド倒しちゃうなんて強いんですね。」


釈然としないリュミエを諌めつつ先ほどからこちらを注視していたテッサが丁寧に頭を下げてきた。


「気にしなくていいよ。ついでだっただけだしね」

「ついで?」

「ああ、気にしないで」


そしてリュミエがこちらを探るかのようにジッとこちらを見つめている。

真っ向から迎え撃つように綺麗な薄紅色の瞳を覗きこんだ。

しばらくすると顔を赤く染めリュミエが顔を背ける。


その視線をおっていくと倒した魔物が光と共にうっすらと消えていった。

空を舞う燐光はしばらく浮遊したあと三人の少女のもとへ吸い込まれていった。


「ん?」

「は?」

「あれ?」


三者三様の反応を見せ、困惑した様子で俺を見ている。


「どうした?」

「いえ、本来カンナさんに行くはずの魔素が私たちに来てしまったので・・・」


(魔素?さっきの燐光の事かな。)


「あなたは冒険者カードを持っていないのですか?」

「あー、無くした」


リュミエの問いに先ほどの状況と言動から推測して、持っていないといけない類のものだと推測。

しかしとっさに出た答えは納得できかねるものだったらしい。


「冒険者カードを無くすなんてどんな旅なんですか・・・」

「気が付いたらなかったんだからしょうがないよね」


テッサも疑問に思ったのか余計な言い訳をしてこじらせるのもあれなのでさらに肯定を重ねる

あきれたといった感じのリュミエとテッサに、ラルが驚きの声をあげた。


「素材がいっぱいあるよ!」


テッサの服の袖をちょいちょいと引いて目を輝かせ、尻尾をパタパタさせながら落ち着きない様子のラル

(ん?尻尾?)

すすっと近づきラルを上から下まで満遍なく眺める。


「ぁ・・・ごめんなさい」

「謝られることをされたつもりはないよ」


涙目になったラルの頭をポンポンと撫でる。

大きめな犬耳が髪にまぎれて存在することを発見し思わずと手が伸びた。

ふさふさしている耳を撫で、付け根を軽く引っ掻いた。


「んひゃぅ・・・」


ラルがちょっと艶やかな声を上げる。


「あー、いきなりごめん。」

「いえ、獣人珍しいです?」

「エルフはみたことあるけど獣人は初めてみたよ」


頬を赤く染めたラルの様子が子犬のように見えまたまた頭を撫でる。


「獣人を毛嫌いしないひとなんですね。」


テッサは嬉しいとばかりに頬笑みを湛えつつラルの肩に手を置いた。


「あー、迫害とか差別とかされてる感じなのかな」

「はぃ・・・」


本人も獣人ということで割と嫌な目にあっていたらしい。空気が重くなりかけたところでリュミエが声をかけてきた。


「とりあえず、話は終わりましたか?素材のほうは拾ってきました。結構ありましたよ」


はいっとリュミエがこちらに素材を渡してきた。いらないなぁと思いつつポーチに適当に放り込む


「これは剥いだのか?」


意外と量があったのでリュミエに聞いたのだが、こいつは何を言っているんだといった感じの視線が飛んできた。


「魔素濃度の高い部位が残るのは知ってますよね?」

「ああ、うん・・・」


生返事したせいで余計に視線がきつくなった気がする。




その後は近くに街があると言うことなのでそこに移動しつつ色々と話を聞いた。

最終的に俺は遠方の地からきた冒険者という設定で話を進め。

このあたりの治安状況なども聞く。三人とも情報の大事さを結構知っているみたいで情勢についてはかなり詳しかった。

魔物や魔素についても詳しく聞いたところ、この地は魔素の濃さで出る魔物の強さが決まるらしい。

この辺はE~D-のランクの魔物が出るとのこと。

D-といっても限りなくEに近く先ほどのモンスター、ランクD-ハウンドがあんなに大量に出ることは殆どないそうだ。

魔物は魔素でできていて死ぬと大地に還るが冒険者カードを持っているとそれに蓄積することができるらしい。

魔物の身体で魔素の濃度が特に高い場所は還元されずにその場に残り各種素材になるそうだ。

冒険者カードもかなり便利らしく、魔素がたまればそれをギルドや指定の場所に持ち込むと肉体強化ができ、魔素をお金の代りに使うこともできるそうだ。

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