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Magic×Logic  作者: 悠唯
法と魔法と高校生
7/11

#0006:男子は基本馬鹿である



20XX年 東京 風見町 公営団地屋上


ダァンッ!!ストンッ


「はいッ、着っと」

「途中から本気だったろ疾風っ!?」

「いやーイイ運動だョ」

「いやいやいや、バディがメインの人物を振り落としにかかるなっ」

「ん?ヒーローは遅れてやって来るモンだゼ?」

「そういうっ、問題じゃっ、ないっ」


風見町、公営団地の屋上。蒼哉と疾風はそこに着地した。

そして、着地したかと思うやいなや、蒼哉が膝に手をつき顔には疲労が表れている。

あの後、何があったかというと。


宣言通り、第七魔検から風見町へ空中短距離走開始

 ↓

と、そこへ何故か疾風が蒼哉へのタックル

 ↓

空中で体勢を立て直し、何かと思えば疾風の手にはラグビーボール

 ↓

状況をやんわりと理解(?)した蒼哉は疾風を追う

 ↓

何故か空中短距離走から空中二人ラグビー開始

 ↓

そして着地点に疾風が蒼哉を振り切り見事トラーイ!!

………何やってんだか。


「だいたいどっからラグビーボールなんか……ってああ!?」

「ン?」


よく見ると、疾風の片手に乗っていたのはラグビーボールではなく、ラグビーボール状に怯えきって固まっている、鴨だった。


「ン、丁度飛んでたモンでな」

「いやいやさっきすれ違った群れと逸れさせて、さらになんつーバイオレンスな扱いを」

「カカ、まさにいいカモってトコだな……ン?どした?もゥ飛んでってイインだゼ?」

「それ泡吹いてる相手に言える台詞じゃないってば」

「オーイ?生きてるかー?」

「どう見ても精神的に死にかけてるって」

「しゃァねェなァ」


片手でラグビーボール状にされてしまった鴨を乗せ、疾風はもう片方の手をその上から翳す。

その翳した手の平が小さく光った約0.5秒後。鴨は手の上でいきなり跳ね起きた。

最初状況を全く理解していなかったのか忘れていたのか、辺りをキョロキョロと見回していたが、疾風の獣目を見るやいなや、ハッとしたように一目散に逃げ飛んだ。

トライした際に擦った尾の部分の羽根が少々多めに散った。


「達者でなー」

「多分君のお蔭様で随分寿命が近くなったよ彼は」


ノった蒼哉も蒼哉だが……ここは鉄則、『男子高校生の馬鹿ノリにツッコんだら負け』、である。


「徽章あるしまぁ目立っちゃいないだろ」

「最初目立つのがどうとか言ったの疾風じゃんか」

「あァ、そゥだっけか」

「それに」


服のホコリを蒼哉が払い落とす。


「お前がそれでいいのかよ?『立場』的に」


いやそれは蒼哉も……?動物愛護としてなら。


「んーまぁ殺してねェし、野生の生物はそんなにヤワじゃねェって」

「どっちかっつーと『自然の味方』だろ?」

「そりゃそうさ、でも生物同士の戯れぐらい日常茶飯事……なっ」


と言って、足元にいつの間やらすり寄ってきた猫を抱え上げる。


「やっぱ疾風だから動物が寄ってくんのか」

「まァ山だの川だのの守護神とか『俺ら』を言う奴もいるくらいだしな」

「その割にはその猫割と素直だったものの今は逆立ってないか?」

「ん……どした?なにも食ィやしねェよッ」


と、いいつつ茶目っ気のつもりか舌なめずりをするので逆効果。

すりよって来た時の穏やかさが猫には既にない。


「まぁ、ともかく、今は仕事仕事ヨ」


疾風が猫をコンクリートの屋上に降ろす。一目散に駆けていった。


「いや問題起こしたのは疾風だ……まぁいいや、とりあえず降りるぞ」


(ラグビーなんて何処で教わってきたんだ疾風は)

と、蒼哉が団地の屋上を見渡す。

そして、二人は団地の階段へ向かい、降りていく。

はて、何故飛べるなら飛び降りないのか?

それも、彼らが先程から言っている『目立たない為』である。

これまた先程から二人は『徽章』についてあれこれ言っているが、この魔検である事を示すアイテムは、少々特殊な魔法がかかっており、付けている事によっと一般的な人間から付けている人間に対する『認識』を弱くする事が出来る。

つまり、突拍子のない行動でない限り、他人がその行動を対して気にする事もなく、魔検として人々の前で目立とうと、去ってから時間が経てば、それが『何処の誰だったか』をすっかり忘れてさせる。

だから、飛び降りても問題は大してないが、今回、風見町のいたるところに犯人は出没しているので、いつ目立った所を見られて、『魔検が来た』とバレるか分からない。

空を飛ぶのは、徽章によりスズメが飛んでいるのと同じ程度の認識になるが、さすがに一昔前なら自殺の定番でもあった飛び降りはさすが見る人は見る。飛び降りるコースには窓、または玄関もバッチリある。

徽章は、『何処の誰か』の認識は減らせるが、『魔検である』事まで減らすようには出来ていない。それは、国家権力として存在を示す事により抑止力になったり、彼らのやった仕事を証明する為でもある。

もちろん、魔検であると強制的に他人に認識させる訳ではなく、あくまで魔検だとバレたらそう認識される。何処の誰かは別として。

しかし今、何処に犯人が居るかも分からないうえ、折角私服で来ているので、なるべく特定出来るギリギリまで事情聴取以外他人には魔検とバレたくはない。

もちろん認識されなくなり具合には個人差がある。徽章の魔術効果が効かない例外もあるが、それはまた特殊な話。


「さて、と」


階段を降りきり、団地から出ると蒼哉は軽い伸びをした。


「とりあえずは、まず今までの事件のあった所を廻るか」

「そーだな」


二人は風見町の地面をようやくを歩き出す。

ここ、風見町はいわゆる郊外の住宅街。

建物が密集し、その度合いは駅に近づくほど増し、人々の活気に溢れる下町情緒あふれた、とも言える町である。

そのため、初めて来た徒歩移動をすると割と迷うくらいの町並みだが、いたる所に人がいるので、道案内を聞くにも困らない。

そして、風見町には二人とも慣れっこなので、するすると路地を抜けていく。


「それにしても」

「?」

「何でこの人の多い所で続けてるんだろうな、犯人」

「そりャァ店もあるし強盗する相手もわんさか居るだろゥに」

「それでもさ、人が多いここじゃ同時に第三者に見られる可能性も高まるわけだし」

「ココでスグ捕まんないってコトはそんだけ擬態、もしくは透過能力に自信のあるヤツだろ」


実はこの風見町、このご時世珍しい程に、なかなか町の人々のチームワークが良い地域もある。

どれだけいいかというと―――


「まあ確かに」

「駅前のオヤジどもとかが見つけようものならまず俺らントコに回ってこねェヨ」

「そう…だな」


蒼哉が何を思い出したのか。

それは以前、駅前でひったくり事件があった時の事。

駅前の商店街に逃げ込んだ犯人をまずアーケードに入ってすぐの八百屋がトマトをペイントボール代わりに投げ、水やりをしていた花屋がホースで素早く足掛けトラップを仕掛け、逃げ立とうとする犯人を寿司屋の親分が長包丁を持って立ちはだかり、引き返そうとした犯人を本屋の店主が流行りの魔法で撃退!!

警察に犯人の身柄を渡し、はいめでたし、めでたし。

………という風に、これじゃどこぞのゲームの協力プレイに見えなくもない、この商店街はかなり風見町の中でも特殊だが、他の場所でもこんな風に風見町は町民自身で何とかしてしまう事が比較的多い町である。

他にも、水を操って放火事件を消防が駆け付ける前に片付けたり、銀行強盗を難無く撃退してしまったり。

そんな街で犯罪を連発出来る馬鹿さが寧ろあっぱれなくらい、と正直蒼哉は書類を見たとき思った。


「スーパーの店長の中にも能力ある人は居るだろうしな」

「まァそゥいうヤツのトコはやってない可能性もあるがなァ」

「そうなると相当面倒だけど…早く終わらせなきゃな」


と、蒼哉が議論を閉めくくる。

そうして普通に歩いて居たのだが、疾風が軽くニヤついているのに気付いた。


「どした?」

「イヤ、立風蒼哉ボーヤもねェ……」

「はぁ?何の話だ?」

「やーコイツァ早く解決してやらんとなァ愛しの亜弥菜チャンのた・め・に」

「…は?お前亜弥菜のコトを!?」

「違うヤイ、お前ェの愛しの亜弥菜お姫様だろが」

「はぁ!?いや仕事だしそんなつもりは更々」

「いやーでも純粋無垢な蒼哉坊ちゃんは心配なんでショー?」

「それは当然だろ、ここに住んでるんだから」


知っての通り、亜弥菜の家、希崎家もこの街だ。


「そりゃ早く解決しないとキミは心配で心配で夜も眠れず…」

「いやいや亜弥菜とは別そんなんじゃ」

「ホゥ?『そんなん』とは?否定してるが本当に彼女が被害者になッてもいいと?」

「んなわけあるかっ、いきなりいきすぎだろ」

「お?『彼女』を否定しねェな?いやーついに幼なじみから進展」

「変な揚げ足を取るなって、んなこたないっ……」


顔を赤くした蒼哉から言葉が出なくなる。

いや、もしくは詰まらせたか。


「……エ、まさかもゥ既に結ばれて」

「ねぇよ!!告白なんかしてねぇしされてねぇ、彼女になんかしてないっ、ただ……」


そう言うと途端に何を思ったのか、少し表情が暗くなった。


「『ただ』?」

「……何でもねぇよ!疾風も変なタイミングで変なコト言い出すなよ!」

「別に変じゃなィろゥに、もう蒼哉も人間としちゃ高校生、青春といわれるお年頃」

「だからって仕事中に私情は挟むなっ」

「アーァ出た出たそういうのってホラ…アレだ…あの……」

「何だよ」

「…!ア、そうそう、『ツンデレ』だ」


―――そうだっけか?


「疾風っお前なぁっ」

「カカ、何だよ、冗談冗談からかってみただけだよ、蒼哉もまだまだお子ちゃまだなぁ」

「ったく、亜弥菜は幼なじみだけど恋愛対象とかそんなんじゃないって」

「フーン、弁当貰ってるクセにな」

「アレは亜弥菜のお母さんが作ってくれて届けて貰ってるだけだよ」

「そりゃゆくゆくはお前ェの嫁に……」

「だから違う!!うぁーぁもう、ほら、もう着くからこの話は止めっ」

「ハイハイ」


蒼哉の目線の先には、スーパーマーケットが一つ。

ここが、今回の事件の第一の現場である。


「フン、外見は何の変哲もねェな」

「まずは入って事情聴取しよう」


着くやいなや、早速ドアから二人は店内に入る。いらっしゃいませー、と数名の声が聞こえた。


To be continued......




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