#0000:プロローグ
あくまでしがない一大学生の趣味でありまして・・・・連載ながら更新速度は遅くなります、あらかじめご了承ください。
警告タグは一応つけましたが、今のところそういうキャラ設定、ストーリー予定が後々存在するのみで、最初は割と大丈夫かと思います。
逆に、タグの要素をお求めの方は、ご要望には沿えない場合が多いと思います。
再度ながら、あくまで現段階では趣味として投稿しております。
♯0000:プロローグ
20XX年 初冬 東京
地獄絵図。
――――――そうとしか言いようのない景色が広がる。
かつて、此処は日本で一番、世界でもトップクラスで文明の発達した都市であったはず。
新しいものに溢れ、若者が行き交い、世界からも畏れられる日本の誇るべき高度文明首都……だが、どうしてこうなった。
男が、歩いていた。
空は、昼過ぎにも関わらずどす黒い雲により幾分暗く、周囲のビル街は優れた耐震構造で崩れこそしないものの、窓は割れ、壁は砕かれ、ほぼ柱のみの廃墟ばかり。道は、瓦礫や血、かつてはヒトとして生命を持った――――――もっとも現状を言うなれば『抜け殻』か――――――モノで埋まり、アスファルトなど見えやしない。
そんな、想像すらしたくない凄惨な景色の中、彼は、歩いていた。
服装は相当汚れてはいるが、軍服だとわかる。顔に現れるはひたすらに焦燥と困惑。息が荒い。銃を抱える腕も傷だらけ。しかし、それでも何かを警戒するように、その歩みを止めない。
――――――此処でさっきまで何があったか。
想像はつく。だが、理解はできない。いや、その想像が当たる筈もない。
この天災とも言える事態に見舞われた日本、世界、全世界の人類そのものですら、その実態を知らない。
数年前、人々の間で『人類滅亡』が提唱されていた。
元は、マヤ文明の千年カレンダーの解釈より始まり、オカルト学者、メディアにより様々に捻じ曲げられ、結局信じるような、どこか嘘でしかないような、そんな事象でしかなかった。
だが、滅亡とも言えるその時が、本当に来た。
世界中に和名『黒奇獣』、世界公式名称D.U.C.C.(Dark Unidentified Cannibalistic Creature《黒い人食い生物》)と名付けられた正体不明の未確認生物が突如、何の前触れもなく大発生した。
原因は不明、異次元への門が開いた訳でも、ワームホールが開通した訳でも、誰が召喚した訳でもない。
ぱっ、と脅威はそこに現れた。
意味が理解しがたいだろう。実際それに遭遇した当の人類達ですら、理解できなかった。
突発的に世界各地に現れたそれは、まずは名の通り人食いから始まり、人類の数をあれよあれよと減らし始める。それだけに留まらず、寧ろしばらくすると、その行動は純粋なる破壊へと変わっていった。姿形は黒い事以外何も秩序がなく個体によってバラバラ、自我や意志、思考能力もない。
街を、命を、人類が長く積み上げて来たものをまるで子供の遊び、当たり前のように破壊していく。
完全正体不明の絶望。人類は、それに身を任せるしかないかのように思われた。
しかし、この世の理はそれ以上に残酷であり、神は大層賭け事好きである。
もしくは、地球での積もり積もった罪のせいか、人類は、簡単に終わらせてもらえるほど安易な道に居なかった。
人類が絶対絶命の次に与えられたもの。
それは、人類にとって絶対的な力であり、人類の長い歴史で多くの者が渇望し、まさに夢見てきたもの。
もっとも簡易な言い方をすれば、『魔法』。
黒奇獣の出現から抗ってきた人々の反抗の火がその勢いを失い始める頃だった。世界中にまたもや突如、『魔法』を使い、戦う力を得た者が出現した。
どう得たかは様々、能力も厳正な錬金術から超能力、さらに夢のような森羅万象を操るまさに魔法、といったものまで様々だった。
勿論、その力は人類に光をもたらす。人類の命を、存在意義を護る為、夢の力で黒奇獣共に果敢に反撃を開始した。
その反面、時に希望は、人を荊の道へと導く。
こうして、人類は黒奇獣との全面防衛戦争を開始する。正体不明の敵。勝っても得るものはない。
そんな戦いが幕を開けた・・・・・・
そうして、今に至る。
男の記憶が正しければ、戦いが始まって早二年。
男は、未だ歩いている。ボロボロの軍服を纏い、静かにそびえ立つ廃墟の間を歩いていた。
そう、静かな。
男は、警戒していた。それもその筈、戦場の地獄絵図の中、突如訪れた静寂。
今まで信じられない事に散々襲われてきたその心は、理解に困った。
「…一体…何が……?」
先程まで、この東京も、大量の黒奇獣に襲撃されていた。
たくさんの血飛沫が飛び、悲鳴が上がり、逃げながら、命を抱えながら、人々は己のやれるだけを尽くしていた。
そして、そんな中、突如空がまばゆい光を放ったかと思うと、次に訪れたのが――――――この静寂。
黒奇獣の影は跡形もない。現れた時同様、パッと消えていった・・・・・・のなら有り難いが。
(…終わ……った……?)
油断はできない。ただ、そんな考えはただ浮かんでしまう。
その時、少し先の瓦礫の向こうにいた、同じ人間の生存者が現れた。
「……人間……だよな?」
「…ああ、君も……」
「……」
「……」
「わ、悪い、ちょっと心配しすぎたか、はは…」
「い、いや、俺も疑ったから……」
「お互い真っ黒だしな」
「そうだな…」
人に会ったところで、何を話すべきかわからない。再び、二人の男が黙り込む。
「……何が起きたか、わか…らないよな」
「さぁ…二年前みたく突然すぎて…」
「そうか、二年か…」
「長かったな…」
「ああ…本当だ…」
「油断ならないとはいえこうして立ち話できるのも久し……ゲホッゴハッ…うっっ」
「大丈夫か…と聞くのもナンセンスか……」
「ああ、お互いにな……」
ボロきれみたいな二人は、瓦礫の中に座り込み、水筒の蓋を開ける。長く洗わないせいか、中から異様な匂いがする。何も飲まないよりマシだが。
もう……こうなっては戦う気力など残ってはいない。
相も変わらず、静寂が辺りを支配していた。
「静かだな……」
「でも……何かが違う」
「?」
「だってよ、いつもなら奴らの姿がなくたって、いっつも不安は絶えないし、次の襲撃に備えなきゃ、ってなる筈……」
「……た、確かに嫌な静けさじゃない」
「寧ろ……何か安心しないか?」
「何なんだ…?俺達がもうおかしくなったのか……?」
「……」
やはり、会話が続かない。今までずっと、口から発する言葉は軍事用語か、仲間への指示か。その仲間とだって、友好を深めあう間などなく、戦場で別れてしまう。無理はない。こんな人間として基本的な事であっても、出来なくなるほどの酷い戦争だっただけの事だ。
二人は、静寂に身を任せる以外なかった。
そんな静寂は、二人をやさしく包み込む。不安こそ消えていないが、それ以上の安堵感が二人にもたらされていた。
長く黙っているうちに、二人とも眠っていた。寝息を立て、安らかに。
こんな事は、勿論戦場ではあってはならないことだ。
だが、二人はまだ知らない。そこには既に戦の火が消えていた事を。
二人が幾日振りかの眠りに落ちたその数時間後、空を覆っていた雲がだんだんと割れはじめ、夕暮れ時、橙色の柔らかな陽の光が、廃墟と化した街へ、霞んだ眼を凝らす人々の眼へと、西の空から溢れ出す。
太陽を母、と呼ぶなら、今こそその意味を誰もが実感出来ただろう、柔らかく、眩しく、温かい、もう忘れかけていた陽光。廃墟の街に、人影がだんだんと現れる。
その時、空から轟音が響いてくる。一瞬人々は音に驚きはしたものの、皮肉にも、それが戦闘機のモノであることは、すぐに理解した。
滅びた東京上空を滑るように飛ぶ戦闘機。そこから、大量の白い紙が地上に向けてばらまかれていた。夕日に染まり、ひらひらと白と橙の二色が入り混じる。
――――――その燃えるように舞い降りるモノは、人類にとってもう一つの確かな光となる知らせでもった。
『黒奇獣世界全土にて消滅を確認』
そう小さく書かれた次には、
『人類の勝利』
急いだのだろう、たったそれだけを書いた、短冊のような紙。眠る二人の勇者たちにも降り注ぐこの上ない歓喜の速報。
二人はまだ知らない。それは、本当に訪れた奇跡。人類は、初めての滅亡の危機を乗り越えた。乗り越えてしまった。
それが、この世界の望みかはわからない。だが、確かに人類は何かに勝った。
人間とは、大層丈夫な生き物だ。それからまた――――――過去の世界大戦後そうだったように――――――世界は再生への道を歩き始める事となる。
この時はまだ知らない。危機は消えた。しかし、何の神の悪戯か、或るモノが世界に落とされたまま。
人類を守った、『力』が。
世界の運命を変えた、『魔法』が。
――――――そうして、早幾星霜が流れた。すっかり元通りのようで、大きく変わった世界と人間――――――
――――――これは、そんな勝者達の成功、そして――――――
『罪』の物語。
To be continued......