9.『クソババア』殺人事件
「早朝。クソババアって声が聞こえたので、ゴミ出しから戻った錦野家の奥さんが、当麻家の玄関を訪ねたら、絶命していたそうですが、所謂『吉川線』が曖昧です。」
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
辻・・・捜査一課辻班班長。
=================================
午後1時。捜査一課。「当麻家扼殺事件」本部。
昼食の後、捜査員が帰って来て、捜査会議が始まった。
課長である開光蘭子が、言った。
「119番をしたのは、お向かいさんだ。井関さん。」
「早朝。クソババアって声が聞こえたので、ゴミ出しから戻った錦野家の奥さんが、当麻家の玄関を訪ねたら、絶命していたそうですが、所謂『吉川線』が曖昧です。」
「目撃者は見当たりませんでした。早朝ですしねえ。」と辻班長が早くも諦めムードで言った。
「おい、元カレ。4時くらいになったら、当麻家に行って、周囲を調べてこい。」
「なんでですか?」「薄暗い環境を調べるんだ。暗いのが恐いのか?」
「恐いのは、元カノです。」
捜査員達は、必死に笑いを堪えていた。
以前、何度か大曲先輩は、転属を申し出た。
そして、管理官は蘭子に確認した。
だが、その度、蘭子は「優秀な部下を失いたくありません。中の下ですが、仕事は出来ます。個人的には憎んでいますが、捜査能力は買っています。」と言って、転勤を阻んでいた。
「眩目。一生辛抱しろ。お前なら耐えられる。」と、鑑識の井関さんは、変な慰め方をした。
午後5時。大曲先輩は、被疑者を連れて帰ってきた。
被疑者は、新聞配達の青年だった。出頭したのだ。
簡単に言うと、『委託殺人』だった。
当麻愛子さんは、優しい人だった。
嫁に行った千子は、愛子さんを介護施設に入れた後、「生前贈与」を迫っていた。
愛子さんは介護施設を脱走、同情した新聞配達の小栗達夫は、自らの母親を重ねて接していた。
小栗は、愛子さんのシナリオ通りに実行した。
愛子さんが細工して自殺した後、工作し、錦野さんのゴミ出し時に、カセットの声を再生した。その声は、愛子さんの声では無かった。
そして、業務に戻った。
夕刊の配達時間。いつものように、やって来てしまった小栗は、黄色いテープを見る。
それを見ていた大曲先輩に声をかけられ、出頭した。
辻班長が、菩提寺に財産を寄贈していたことを調べ上げていた。
午後9時。眩目家。
「介護施設の施設長は泣いていた。『何も知らなくて・・・。』そりゃそうだろう。段ボールを倉庫にしまうみたいに母親を施設に入れた娘は、全く面会に来ていなかった。1年以上な。そんな娘に生前贈与出来るか?真吉。」
「出来ないね。今回ばかりは大曲先輩も活躍したね。」
「ああ。プラスポイント1点だな。」
「ポイント?」「ああ。まだマイナスポイント999だ。」
俺は、井関さんの言葉を思い出した。
―完―




