8.『怨恨偽装』殺人事件
「ガイシャには打撲痕と刺し傷が7箇所ありました。どちらの凶器も発見出来ていません。犯人が持ち去ったものと思われます。現場はアパートの一階なので、ゲソコンを詳しく調べましたが、昨夜は雨交じりの雪でした。綺麗に流されたものと思われます。」
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
辻・・・捜査一課辻班班長。
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午後1時。捜査一課。「アパート住人殺人事件」本部。
昼食の後、捜査員が帰って来て、捜査会議が始まった。
課長である開光蘭子が、言った。
「119番をしたのは、隣人だ。井関さん。」
「ガイシャには打撲痕と刺し傷が7箇所ありました。どちらの凶器も発見出来ていません。犯人が持ち去ったものと思われます。現場はアパートの一階なので、ゲソコンを詳しく調べましたが、昨夜は雨交じりの雪でした。綺麗に流されたものと思われます。」
「庭には?」と管理官が尋ね、辻班長が答えた。
雑草の手入れが面倒なので、大家は除草剤を撒いて、雑草1本生えていません。まあ、アパートの周りは、通路としか言えませんが。」
「井関さん、賊は窓から侵入したようですが、ガラスの破片は?」
「流石、開光さん。今、修復作業中です。凶器は見つかっていないと言いましたが、予め分厚い手袋を用意していたなら、割れた破片で凶器に使うことは可能です。」
「発見者は、アパートの管理人で、すぐ側の『文化住宅』に住んでいます。通いの管理人ですね。」と大曲先輩が言った。
「古いアパートに古い文化住宅。タイムスリップしたみたいでした。」と井関が言い、「文化住宅って、あの長屋スタイルだったんですね、実物見るの、初めてで。」と、智子が言い、「あの頃は、そういう言い方が流行ったんだ。文化包丁とかね、何が文化なのか分からんが。」と、井関が言った。
午後3時。わが妻でもある、開光蘭子の目が光った。
「おい、元カレ、眩目。発見者の郷里聡美の経済状況を洗え。管理官。あのアパートの近くにバイパス道路建設計画があります。四課にも協力要請願います。」
午後5時。捜査一課。「アパート住人殺人事件」本部。
郷里の経済状況は悪かった。ビットコインで大損したのだ。
地上げ屋は、大家がうんと言わないので、郷里を抱き込んだ。
郷里は、嫌がらせをして、ガイシャの神明寺さなを追い出そうとしたが失敗。
持っていた懐中電灯で後頭部を殴った。
脅しのつもりがやり過ぎた。毒を食らわば皿まで、と偽装し、発見者を装った。
ガラスは懐中電灯で割ったのだ。
だが、甘かった。
地上げ屋は「交渉を依頼したが、殺人教唆はしていない」と主張した。
午後8時。眩目家。夕食後。
蘭子は、俺の爪を切りながら、「夜、爪を切ると親の死に目に逢えない、って聞いたことないか?」と俺に尋ねた。
「ありますね。」「一生懸命、夜に爪を切ったが、死に目に間に合ってしまったよ。」
「間に合わない方が良かったんですか?」
「答は・・・体で教えてやるよ、真吉。」と言いながら、蘭子の口角が上がった。
俺は悪寒が止まらなかった。
―完―




