7.『大きな栗饅頭』殺人事件
119番をしたのは、ガイシャの親族だ。昨年亡くなったガイシャの連れ合い、詰まり天満春子さんのご主人茂さんの法事の打ち合せを兼ねて親族が新年会をしていた。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
辻・・・捜査一課辻班班長。
=================================
午後1時。捜査一課。「断捨離殺人事件」本部。
昼食の後、捜査員が帰って来て、捜査会議が始まった。
午後1時。『栗饅頭殺人事件』本部。
課長である開光蘭子が、言った。
「119番をしたのは、ガイシャの親族だ。昨年亡くなったガイシャの連れ合い、詰まり天満春子さんのご主人茂さんの法事の打ち合せを兼ねて親族が新年会をしていた。発見されたのは、仏間。夕食を食べよう、と娘高槻真知子が誘いにきたら、血を流して和式テーブルの上に突っ伏していた。側には、一口で頬張れない程の栗饅頭が転がっていた。救急搬送した時は、既に息絶えていた。井関さん。」
「えー。死因は服毒死。栗饅頭に、その毒が混入されていました。注射針で混入したようです。」
井関が着席すると、辻が「ガイシャは介護施設に入居していて、正月だから、と外泊許可を得て天満家に戻っていたようです。まあ、どこも同じだそうですが、高い金額を毎月払わされて、おやつは形だけだそうで、他の入居者が『大きな、大きな栗饅頭。美味しい美味しいほっぺが落ちる』、と歌っていたそうです。」
「それって、おやつに小さい栗饅頭が出て不満だったってことですか?」と、俺、眩目真吉は辻班長に尋ねた。
「ご明察。親族に確認しましたが、栗饅頭は好きな方だったようです。」
「好きな方って?」と今度は管理官が尋ねた。
「好物だったのは、おかき。歯がもう無くなってきているし、堅いおかきは施設では出さないそうです。」
「当日は、詰まり、昨日の1月4日は、親族だけで集まったんですね、日曜だし。」
課長は、辻班長に念押しした。
「いや、それが、親族が集まる前に来客があったようなんです。隣家は初詣に行っていて、駐車場から出るのを見ただけだそうです、黒いクルマを。」
「その後、親族が来たなら、痕跡は消されているなあ。介護施設ということだが、ケアマネージャーは施設の所属?」
「いや、介護施設に入る前からデイサービスの施設を利用していて、その介護施設に入ってからも通所していたようです。ケアマネージャーは、デイサービスの施設の所属です。」
「おい、元カレ。そのデイサービス、行ってこい。今日は恐らく仕事始めだ。眩目も行ってこい。」
元カレこと大曲先輩は、「早く異動にならないかなあ。」と俺にぼやいた。
「辛いですか、パワハラ。」「辛い。今更退職出来ないしなあ。婆ちゃんも婦人警官上がりだから、警察啓蒙だし。」
「お婆さん、恐いんですか?」「蘭子の方が恐い。」
午後3時。介護デイサービス『明日も頑張る』。
ケアマネージャーは、アポを守って事務所にいた。
雑談中に、ケアマネージャーは平伏した。
「申し訳ありません。わ、私は犯人じゃありません。天満さんに栗饅頭を調達しただけです。」
午後5時。『栗饅頭殺人事件』本部。
蘭子は激怒した。
「一体、年寄りを何だと思っているんだ!!」
ガイシャの天満さんは薬科大学卒業だった。
そして、親族は日頃『生前贈与』を迫っていた。
このことは、天満さんの介護の世話をしていた、代理人の息子松男から聞き取れた。
再び、現場検証が行われ、仏壇から注射針と毒液が見つかった。
天満さんは、覚悟の自殺を図ったのだ。
「黙祷“!!」
課長の蘭子が叫び、捜査員達は一斉に天満さんに黙祷を捧げた。
午後8時。眩目家。
「真吉。明後日のお通夜、行くぞ。喪服はあるか。」
「はい。」
「心配しなくても、葬式で暴れないよ。今は暴れるけど、いいよね?」
俺は、蘭子の涙を拭き、蘭子の夫で良かった、蘭子の部下で良かった、と思った。
そして、そっと抱きしめた。
―完―
※一部、実話をネタとして練り込んでいますが、事件はフィクションです。
クライングフリーマン




