6.『年賀状じまい』殺人事件
「そやから、『年賀状じまい』送っただけやんか。何、送ってるんねん。あ。お前。」
「ここで電話が切れている。『あ。お前。』は、被疑者を見付けた痕跡だ。井関さん。」
『年賀状じまい』殺人事件
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻・・・捜査一課辻班班長。
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午後1時。捜査一課。「断捨離殺人事件」本部。
昼食の後、捜査員が帰って来て、捜査会議が始まった。
課長である開光蘭子が、言った。
「110番をしたのは、ガイシャ自身だ。ガイシャとホシは近くにいた。110番の録音を聴いてくれ。」
あれ?どこかで聞いた台詞だ。
「そやから、『年賀状じまい』送っただけやんか。何、怒ってるねん。あ。お前。」
「ここで電話が切れている。『あ。お前。』は、ホシを見付けた痕跡だ。井関さん。」
「滅多刺しにされてますな。脚立が転がった事件に似ているけど、今回の電場は台所。門扉からゲソコンが続いています。インターホンが外で切られている。ホシが忍び込み、ガイシャが口論しながら、スマホを弄った。ホシは当然スマホを切った。警察が来る前に十徳ナイフで、こう・・・おい。秋野。」
井関は秋野をガイシャに見立てて刺す動作をした。
「管理官。ピンポイントで喉の急所を狙ってます。途中で口答え不可能になったに違い無い。そして、側に、用意した年賀状を置いた。」
「この『断捨離』ってどういう意味でしょうね?」と、大曲先輩は余計なことを言った。
「よし。元カレは、『断捨離』班を作れ。辻班は怨恨、聞き込み。眩目はPCを確認。タイムスタンプ見れば、何か手掛かりがあるかも。」
「年賀状は、指紋はありませんでした。」と、知子が割り込んだ。
「5枚とか10枚とかセットで買うとビニール袋に入っているからな。手書きなら筆跡鑑定頼みます、井関さん。」
「了解。」
皆が出て行った時、管理官が「開光君。気持ちは分かるが、いい加減『元カレ』は止めてやれよ。」
「命令ですか?」「お願い。」「却下。一生後悔させます。」
「「「うわー。」」」
皆、驚嘆した。
午後3時半。聞き込みから辻達捜査員が帰って来た時、「あのー。」と女性警察官が顔を出した。「出頭みたいですけど。」
午後4時。取り調べ室。
蘭子が、出頭した被疑者の取り調べを行い、管理官が立ち会っている。
「すると、被害者典雅一郎は、あなたが5年前に『絶縁』年賀状を送ったにも拘わらず、『年賀状じまい』を送ってきて、また『なぶり者』にした、と思い、犯行を思い立ったのですね。被害者を庇うつもりは毛頭ありませんが、一括印刷したのでしょう。印刷アプリは印刷履歴が残るタイプでした。で、『絶縁』年賀状のことを思い出したのでしょう。あなたをのけ者にしたことは、他の同級生から聞きました。彼は悪戯心だったが、あなたは真剣に怒り、あなたを同窓会に巻き込んだ、もう一人の同級生辻野に3年前に『年賀状じまい』を送られたことに腹を立てて、あの時のことを忘れたのか、と詰る返信をした。典雅はそれを思い出した。それで、返信不要と書き足した。」
「彼らは、私をいつも『世間知らず』として見下していました。だから、『年賀状じまい』は当然のごとく知らないものと思っていたのでしょう。」
大曲先輩は、そこに入って来て言った。
「もう一人の幹事の同級生に、今聞いて貰っている。異例だが、彼から他の同級生に伝えて貰う。君たちは、自分達の妄想で走り過ぎた。同窓会が開かれた時、本当に、君は親の介護で大変だった。出来れば欠席したかった、と思う。彼らは嘘や方便で介護を持ち出したと思い込んでいた。君の性格を知らなすぎた。知っていれば、出頭する潔さも分かっただろう。」
「大曲。もういい。」
外の廊下で嗚咽が聞こえた。
午後9時。眩目家。
静かに雑煮を食べる2人。
「情状、つくといいね。」「ああ。」
「なんで、断捨離?」「捨てたかったのさ。過去の思い出、同窓会を。同級生を。」
「断捨離かあ。」「あいつは、いつ捨てようかな?」
「え???」
―完―
「この『断捨離』ってどういう意味でしょうね?」と、大曲先輩は余計なことを言った。
「よし。元カレは、『断捨離』班を作れ。辻班は怨恨、聞き込み。眩目はPCを確認。タイムスタンプ見れば、何か手掛かりがあるかも。」
「年賀状は、指紋はありませんでした。」と、知子が割り込んだ。




