35.鬼電殺人事件
「ガイシャ村雨慶子は、耳に『編み棒』を挿して死んでいた。両耳にだ。井関さん、これって・・・。」
「ああ、タチの悪い悪戯だ。智子、ドラマかなんかであったか?」
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
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午後1時。捜査一課。『ストーカー殺人事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャ村雨慶子は、耳に『編み棒』を挿して死んでいた。両耳にだ。井関さん、これって・・・。」
「ああ、タチの悪い悪戯だ。智子、ドラマかなんかであったか?」
「ちょっと違う気がするけど・・・とにかく言える事は、刃物でもないと、体の中に道具入れて殺せないと思う。実験してみる?」
「いるか。とにかく、ホシは、ガイシャに大きな怨みを持っていて、デコレーションと言うかデモンストレーションと言うか、腹いせと言うか、見せしめと言うか・・・とにかく致命傷は胸の、乳房の下の方の刺し傷だ。」
「まあ、怨恨に間違い無いな。辻さん、『逆恨み』の線も含めて交友関係を頼みます。大曲、何か言いたそうだな。元カノもカンだが。」
「ん・・・んん。編み棒自体に何か意味がるのかな、ないのかな?と思って。いえね、課長、井関さん、管理官。デモンストレーションなら、『耳かき』でもよくないですか?ペンでも。」
「詰まり、先輩は、編み棒を使うことで、ホシは誰かに何かを訴えたかったって・・。」
「わるくない推理だ。辻さん、編み物も聞いてみてください。前に似た事件ありましたよね。あの時は男だったが。ガイシャも趣味が編み物とか。」
「いや、隣の奥さんが以前あげたものだと言っていました。それと、鬼電がかかってきて困るとか言っていたようです。」
「鬼から電話?」と井関が言うと、「鬼のように電話がかかるから、そう言うのよ、父さん。」と智子が言った。
「じゃ、秋野の電話は鬼電かな?」「もう、父さんの意地悪。」
辻が気を利かせて言った。
「隣の奥さんの話では、引っ越しした時、ストーカー被害から逃げてきた、と言っていたようです。」
「ガイシャの、当時の調書を取り寄せるよ、開光くん。辻さん、引き続き、ガイシャの会社関係、洗って下さい。」と、管理官はしめた。
「了解しました。」
蘭子は、振り返って、
「お前達は、PCスマホを含め、ガイシャの生活跡を探れ。」
俺と大曲先輩は。「「了解」」と返事した。
午後3時。村雨家。
イラストレーターをしていたガイシャのPCは、綺麗だった。何かで染めているとかでなく、きちんと整理整頓されたPCラックだった。俺や大曲先輩は見慣れているからだが、普通なら発見出来ない場所に、あるものを見付けた。
その時、鑑識の智子から電話が入った。
「・・・了解。先輩、編み棒ですが、詳細に調べると、文字が浮かび出て来ました。ケー、アイ、ゼット、ユー、です。」
「おいおい、ダイイングメッセージかよ。これと関連しそうだな。」と、大曲先輩はそう行ってSDを掌に開いた。
「ディスプレイホルダーアームに隠れていた。ホシは、これが欲しくて殺害したんだ。」
午後6時。捜査一課。『ストーカー殺人事件』本部。
取り調べ室から蘭子と大曲先輩が出てきた。
「うっかり、違う方向に向かう所だった。ホシは、杵築桃子。以前、ストーカーをしていた木津健太には、アリバイがあった。箱根に研修旅行に行っていた。それに、木津は木津川の木津だが、なまらない。「きず」ではなく、「きつ」だ。杵築は会社の総務部社員。編み物を教えてあげる、というので、隣人から貰った編み棒で練習していた。耳に挿した編み棒の片方は、杵築用だった。ガイシャは、所謂産業スパイだった。大曲が見付けたSDには、会社の重要機密データのコピーが入っていた。杵築のPCからコピーしたんだ。杵築は取り返しに来たが、白を切るので、千枚通しでガイシャを刺した。凶器は会社にあるそうだ。お前は悪く無い、と3回おまじないかけたら、素直に吐いたよ。」
智子が必死にメモをしていた。
秋野と蒔が呆れて見ている。
午後8時。眩目家。
電子レンジから、冷凍のオムライスおにぎりを出して頬張った。
「たまには、こういうのも悪く無いな。」
「やっぱり蘭子は天才マジシャン。『お前は悪く無い3回』で落すなんて。」
「なわけないだろ。冗談だよ。」
俺は、『落ちた』部類だけど・・・。
―完―
※「鬼電」とは、「鬼のように頻繁に電話をかけること」、または「ひっきりなしに電話がかかってくること」を指す俗語で、子育てアプリの名称としても有名です。執拗な連絡や、親からの頻繁な電話、あるいは子どもが言うことを聞かない時に鬼が電話してくるというシチュエーションで使われます。




