3.死者からの電話
秋野は、羊羹のセットを持参し、開光蘭子に頭を下げた。
「死んだ人間から電話?」
側にいた大曲がゲラゲラ笑った。
「下卑た笑い方するな、元カレ。」
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
富田紋太・・・秋野の友人。
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「嘘だー!!!!!!!」
富田紋太は叫んだ。
電話の主は、亡くなった筈の、富田のカノジョだった。
警視庁捜査一課。
秋野は、羊羹のセットを持参し、開光蘭子に頭を下げた。
「死んだ人間から電話?」
側にいた大曲がゲラゲラ笑った。
「下卑た笑い方するな、元カレ。」
「元カレ、って、いちいち言うのは止めて貰えませんか?課長殿。」
「課長は職階名だ。殿は要らない。」
「パワハラはよくないですよ、課長。」
助け船を出したのは、夫で部下の眩目だ。
秋野は、構わず説明を続けた。
「留守番電話に記録されていた録音を再生、分析したら、電話の受話器の側で再生しているんです。ダイレクトに受話器に流し込むんじゃなくて。台詞もおかしいし。」
そう言って、秋野は、持ち込んだICレコーダーで再生した。
『今日の夜、電話してもいい?』
「電話の内容と行為が矛盾しているな。何度も何度も、繰り返されたらノイローゼになるな。」
「小説家の友人にも、ウチのオヤジさんにも相談したんですが、『対面』で言う台詞だと。動転している富田にはまだ確認していませんが、生前富田がカノジョと話した内容だと思うんです。」
「分かった。家宅捜索の手続きは要らんだろう。秋野が説得しろ。おい、元カレの大曲。それと、亭主の眩目。調べて来い。」
「ひょっとしたら、鑑識、呼んだ?」
井関が入って来て言った。
「オヤジさんって、超能力あるの?」と、蘭子は尋ねた。
富田家。
インターネットを通じて、在宅ワークをしている富田の元に。どやどやと警察関係者が訪れた。
「父さん、見付けたわ。」と井関智子が言った。
盗聴器は5つあった。
「課長。プロパンガスの格納庫に『中継器』がありました。」と、秋野が報告した。
「詰まり、いつの間にか空き巣に入られていたんですかぁ?」と、富田は、素っ頓狂な声を出した。
「秋野。ノイローゼで思い出したんだ、葛飾区の案件を。新しい手口の犯罪だ。地上げ屋と特殊詐欺と空き巣がタッグを組んだ犯罪だった。ノイローゼで揺さぶられた家の主が、相場の10分の1で叩き売ってしまう。空き巣なんかは、リスクが多いし、通帳見れば、どの程度の預貯金かは分かる。」と、大曲は言った。
「先輩。やはり、この辺の土地、狙われています。10年先にバイパス道路の開発が始まります。」と、スマホの電話を切った眩目が報告した。
「富田さん。念の為、お聞きしますが、葬式に喪服で出掛けて、帰りが遅かったんですよね。」大曲は尋ねた。
「はい。」
その後、二課と四課の協力を得て、芋づる式に犯人グループは逮捕連行された。
午後8時。眩目家。
「今、管理官から連絡があった。連続詐欺事件として、検察に送ったそうだ。富田さんは、本当に品行方正だったんだな。私は、亡くなったカノジョの前に『元カノ』がいるかと思った。カノジョの姉は、声質が違った。あ、それと、結婚式あげる時は呼んでくれって、さ。」
浴室で、そんな連絡しなくてもな、と眩目は思ったが、黙っていた。
「真吉。ベビードールって嫌いか?」
そう尋ねられ、眩目は、嫌な予感がした。
―完―
「父さん、見付けたわ。」と井関智子が言った。
盗聴器は5つあった。




