23.剣山殺人事件
ガイシャは、建設会社社員、所沢悦夫。40歳。無断欠勤をしたので同僚が訪ねて行って死体を発見。居間で大の字になった所沢は戸板の上で亡くなっていた
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
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午後1時。捜査一課。『剣山殺人事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャは、建設会社社員、所沢悦夫。40歳。無断欠勤をしたので同僚が訪ねて行って死体を発見。居間で大の字になった所沢は戸板の上で亡くなっていた。戸板は雨戸の戸板の一枚で、異様なのは死体が戸板の裏側から釘が打ち込まれていることだ。井関さん。」
「ホシが使ったのは通称ネイルガン。ガンと言っても火器ではない。正確な日本名は『釘打ち機』。まんまです。で、死因は、その妙な戸板の釘ではなく、ニードルガンは針、あるいは小型の金属製の矢を弾体とする銃である。日本語では短針銃と訳されますが、これを至近距離で打たれている。こっちは火器です。」
「なんで、そんなややこしいことをしたんだろう?」
うっかり言った大曲先輩にまたも蘭子のイジメが入った。
「それを解明するのが腕の見せ所だよな、捜査一課のエース大曲。」
大曲先輩は俯いてしまい、他の捜査員は笑いを堪えた。
「眩目。ガイシャはPC持っていないのか?」
「タブレットですね、開光課長。雨戸の戸袋に、タブレット用のスタンドが転がっていました。ホシが持ち去ったのではないでしょうか?指紋も血痕もありませんでしたが。」
「今、二課から連絡が届いた。ガイシャの会社『ぴったんこハウス』は欠陥住宅として、複数のユーザーから訴訟を起こしている。そして、その被害者の一人が、『中途改革会』の組長のイロ、いや、情婦になったオンナ田山百合子がいた。四課からの情報によると、前の妻を押しのけて成り上がったらしい。『中途改革会』と言えば、隣国マフィアの傘下に入ったという噂がある。」
「じゃあ、田山が組長に欠陥住宅のことで泣きついて反社が動いた、ということか。」
翌日。事件が進展した。
『中途改革会』の鉄砲玉が出頭してきたのだ。
取り調べでは、「姐さんのカタキをうったんです。」と自白したが、タブレットのことを蘭子が問いただすと、答えられなかった。
辻班がケータイキャリアの会社を回ったが、タブレットを売った会社から、ガイシャの会社の支給品だと判明した。
蘭子は、捜索令状をとり、ガイシャの会社のサーバーから顧客名簿やタブレットが持ち去られた理由を見付け出した。
タブレットと共有していたのは、顧客名簿だけでなく、ガイシャが掴んだ政治家のスキャンダル情報データだった。
結果、逮捕者は沢山出た。
『ぴったんこハウス』幹部、『中途改革会』幹部、逃亡中だったヒットマンのコウ・コウコウ。
コウは、何故か『くぎをささなければ』という言葉でニードルガンでガイシャを殺害、更にネイルガンで打った雨戸の上に乗せた。遺体を生け花した、ケンザンに挿したとも供述した。
ケンザンは、生け花の剣山以外に美容用具にもある。
「無茶苦茶だ、と組長が言ったそうです。」と、今日の捜査会議で大曲先輩が言った。
「マフィアより、ヤクザの方がまともか。」と管理官は嘆いた。
午後7時半。眩目家。
「エステしてやるよ。」とベッドの上に寝かせた蘭子は舌なめずりした。
嫌な予感しかしない。
―完―




