2.Web小説作家死亡事件2
サイトの話では、1年位前から、共同執筆していたようです。折角コンテストに入賞したのに、数日経って辞退してきた轟さんに担当が直接会いに行って確認したそうです。そしたら、受賞作は3人で共同執筆した合作だから、私のアカウント名で受賞したからといって受け取れない、と。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
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「嘘だー!!!!!!!」
俺、眩目真吉は叫んだ。
クリスマスの日。ある小説家は死んだ。
不思議な遺書を背広に隠して・・・。
午後4時。『Web小説作家札事件』の捜査本部。
「サイトの話では、1年位前から、共同執筆していたようです。折角コンテストに入賞したのに、数日経って辞退してきた轟さんに担当が直接会いに行って確認したそうです。そしたら、受賞作は3人で共同執筆した合作だから、私のアカウント名で受賞したからといって受け取れない、と。驚いたことに、共同執筆者は、ウチのユーザーでした。轟さんは、宇野絹、後の2人は別のアカウント名でしたが、共同執筆者として、富田世、鱈糠輪というアカウント名でも執筆を始めました。共同執筆では、岡島二人先生や藤子不二雄先生が有名ですが、3人というのは前代未聞でした。アカウント名の命名者は、勿論轟さんです。実は、この3つのアカウント名合わせて、アナグラムで置き換えると、『捕らぬ狸の皮算用』になる、という洒落です。アナグラムというのは、一種の暗号遊びなんです。詰まり、コンテストに受かるように、と言う暗喩でもあったんです。」
担当者の駒井に話を、サイトに行った捜査官の報告を受けて、「その時点で、轟さんは計画を練っていた、ということか。」と言った人物がいた。
俺の彼女でもある、開光蘭子課長だ。
「どういうことかね、開光君。」と志摩管理官は尋ねた。
「鑑識の井関さんによると、背広に縫い付けたのは、糸から判断して1年以上前だということです。詰まり、轟さんは、殺害計画があったことを知り、その実行日として計画された日に『ダイイングメッセージ』になるように仕組んだんです。」
「俺と眩目で手分けして、共同執筆のメンバーである、宅食便の配達担当と、当該ホテルの支配人山本氏に話を聞きました。轟さんは、目が不自由になってきたので、と宅食便の配達担当の赤坂あゆみさんに、背広に縫い付けて貰いました。小説のネタだからと手袋つけさせて。亡くなった部屋と隣の部屋をすり替えたのは、ホテル支配人でした。彼は大学の同級生でした。彼にも、クリスマスだからドッキリだと偽って轟さんが依頼したんです。」
「詰まり、『捕らぬ狸の皮算用』とは、殺害計画は頓挫させてやる、という意味か。」志摩の言葉に、「補足します。轟さんのPCの『隠しファイル』に2人の交遊関係を書いた日記があり、その中に『捕らぬ狸の皮算用』も出てきます。轟さんは、がんでした。妹の奸計で殺されたくなかったんだと思います。」
「そう、彼らは『殺す必要』は無かったんだ。」と蘭子は虚空を睨んで言った。
午後6時。取り調べ室。
「嘘だー!!!!!!!」
被疑者である餅好磯子は叫んだ。
蘭子の前に、被疑者である轟さんの妹がいた。
計画は完璧だった。
又従兄弟の保険会社で組んだ生命保険金合計1億5000万円は、手に入り借金はチャラになる筈だった。
磯子は、結婚する前、ホテルのベッドメイキングの仕事をしていた。
磯子の夫孝夫は薬剤師をしていた。ワインに入っていた毒を用意していたのは、夫だった。
轟さんは、通院している診療所には内緒で病院で検査を受け、がんが発見された。
まだ初期のステージだった。
そして、轟さんは、母親が亡くなった後、防犯カメラを2台設置、来客があるときは、センサーでの自動録音を設定した。
そして、奸計を知った。
妹は、腹を立てていた。「たった50万円?それも辞退した?何考えているのよ!!」
そんな台詞を耳にした。
後ろめたい気持ちもあるが、同じサイトを利用している、同級生と宅食便吐配達人を巻き込み、『完全犯罪』を不成立にする計画を立てた。
クリスマスは、偶然、轟さんの誕生日だった。
事件当日。轟さんは、妹夫婦をクリスマス&バースデーパーティーと称して呼び、シャンパンも抜いた。
「家の用事があるから」と、妹達は、フロントを通って帰宅した。
轟さんは、後でまた来るけど、『ドッキリ』をするので、と支配人山本に頼んで隣室に移動した。
夜中、見つからないように防犯カメラの死角かた侵入した妹達は、轟さんのスキを見付けてワインに毒を混入し、飲ませた。
そっと帰ってきた妹夫婦は、又従兄弟の待つファミレスに戻った。
アリバイは完璧だった筈だ。
警察は馬鹿ではない。アリバイ工作はいずればれ、保険金のことも露見するのが常道だが、轟さんは、警察に『捜査協力』、いや、『告発』をした。
結果、妹達の計画は、『捕らぬ狸の皮算用』になった。『遺書』の通りに。
「背広の裏側に縫い付けたもの。背広の裏側の遺書には、何故かグラスの破片が付いていました。その破片には、あなたの指紋がありました。もうお分かりですね。あなた方は嵌めるつもりで嵌められたんです。殺す時、毒を盛ったグラスには指紋が無かった。でも、あなた方が最初会った時のグラスは処分していなかった。予約の部屋を取り替えることが出来るのは、ホテルマンだけです。この時期、いつにも増して繁忙期ですからね。50万円じゃ、不足でしたね、借金には。」
午後8時。眩目家。
「やっと一件落着だね、課長、いや、蘭子。」
「真吉。クリスマスアフターをやろう。私は眩目蘭子でも開光蘭子でも仕事する。後で署名捺印しろ。」と、蘭子は婚姻届をひらひらさせている。
ちょっとエッチな、サンタガールの格好で、準備万端の蘭子。
ここからは、大人の時間だ。
ところで、何故大曲が酔った勢いで真吉に蘭子を押しつけたのか?
それは、大人の事情だ。
その後、事件は、世間に公表されることは無かった。
宅食便の赤坂さんとホテル支配人山本さんは、『自殺幇助』や『殺人幇助(未必の故意)』には当たらないとして不起訴になったが、賞金はやはり辞退した。そして、轟の小説を引き継ぐことを世間に公表した。『3人の共同執筆』として。
―完―




