17.手作り作家殺人事件
「発見者は、仏さん、ガイシャの妹さんだ。いつイエ電にかけても繋がらない。ガイシャは、電話会社との契約を打ち切っていた。受話器はあっても、どこにも繋がらない。そして、いつの間にかスマホも契約解除していた。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
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午後1時。捜査一課。『手作り作家殺人事件』本部。
昼食の後、捜査員が帰って来て、捜査会議が始まった。
志摩管理官が、言った。「変な戒名。」
この事件も変な戒名だが、後が恐いので誰も文句は言わない。
妻でもある、課長の蘭子が考えた戒名だから。
戒名とは、事件の通称のことである。
蘭子が仕切り始めた。
「発見者は、仏さん、ガイシャの妹さんだ。いつイエ電にかけても繋がらない。ガイシャは、電話会社との契約を打ち切っていた。受話器はあっても、どこにも繋がらない。そして、いつの間にかスマホも契約解除していた。妹さんは、こう言っちゃなんだが、ずぼらな性格だ。母親の一周忌以来、連絡をしていなかった。ガイシャは、餓死していた。預貯金はまだあったのに。井関さん。」
「ガイシャは、脚を殴打、砕かれていて、立ち上がることは不可能でした。辻君。」
「そして、今、開光課長が言ったイエ電とスマホの件は、自分の意志では無かったと推測されます。腐乱死体でしたが、死亡推定日から考えて、殺される前に解約していた模様です。解約書類は、母親が死ぬ前で、随分前のことで、本人から書類送付の依頼があったので、電話会社は郵送した。考えが変ったのか、返送は無かったと考えています。」と、辻が応えた。
「詰まり、被疑者が解約した。その上で殺害した、ということかね?」管理官は憤慨した。
「その通りです。俺は、このホシだけは許せない。留守電機能の付いた受話器とケータイ、いや、スマホは、亡くなった現場の炬燵の上にあった。シラベは俺にやらせて下さい。」
「判った。大曲、成長したな。」
ここでも、蘭子は嫌味を言った。
大曲先輩は、元カレである。
「開光君。この綴りは、ガイシャのものかね?」
管理官は分厚いA4の束を指して言った。
その書類は、A4で印刷した後、綴じ紐で綴じられていた。枚数は多い。書かれていたのは小説だ。A4のクリアファイルも市販されているが、全て入れると、かなり重たい。
それに、『書き込み』が散見出来る。ひょっとしたら、未完成品だったのかも知れない。
「作家の事件が続いたので、ウェブサイトに当たってみました。すると、同じ内容のものが投稿されているサイトがありました。ひょっとしたら、その下原稿かも知れません。」と、俺は課長や会議出席の刑事達に言った。
しかし、大曲先輩が異議を唱えた。
「それだと、おかしいよ、眩目。原稿が見つかったのは、玄関の『靴脱ぎ台』の下だ。」
「確かに、大曲の言う通りだ。ガイシャは被疑者の目から原稿を守ったことになる。」
そこに、智子と秋野が入ってきた。
「綴りの原稿とウェブ上の原稿を比較すると、相違点が15箇所ありました。PCの方は、復元ソフトで復元できました。綴りの原稿に近いです。」と、智子が言った。
蘭子の要請で、ガイシャとガイシャの妹の通信記録が調べられた。
翌日。午後3時。捜査一課。『手作り作家殺人事件』本部。
取り調べ室から、大曲先輩が出てきた。
「重要参考人の伊丹聡美、並びに神藤俊哉が落ちました。ガイシャの綴り原稿から盗作していました。事件当日。追い詰められた2人は犯行に及びました。PCから消えた原稿をプリントしたものが、綴り原稿でした。『取らぬ狸の皮算用』。儲かると思い込んでいたんでしょうね。電話の解約の日付は弄った跡が有りました。死後、解約したんです。捜査を攪乱させる為に。」
午後7時。眩目家。
「聡美はアイテーオンチ。神藤は少し使える程度。本当は、あの家を売って、金にしたい、と愛人の神藤に言っていたそうだ。駐車場で2人が話しているのを、隣家の子供が聞いている。私は、売らないよ、家も、お前も。」
蘭子の目が光った。
今夜も食事は後回しだな。
―完―




