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16.『二度寝向上委員会』心中事件

午後1時。捜査一課。『二度寝向上委員会』本部。

昼食の後、捜査員が帰って来て、捜査会議が始まった。


志摩管理官が、言った。

「気色悪い。だれ、こんな戒名考えたの。」

『戒名』とは、警察用語で、捜査対象の事件の通称である。


 

 ========== フィクションです ===========

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。

 井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。


 辻・・・捜査一課辻班班長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。


 =================================


 午後1時。捜査一課。『二度寝向上委員会』本部。

 昼食の後、捜査員が帰って来て、捜査会議が始まった。


 志摩管理官が、言った。

「気色悪い。だれ、こんな戒名考えたの。」

『戒名』とは、警察用語で、捜査対象の事件の通称である。

 コンピュータが流行る前から、通常は事件は記号と番号で組み合わせたシリアルナンバー、つまり、名前が重複しない記録が作られる。

「私ですけど、何か?捜査一課ですけど。」

 俺の妻でもある課長の開光蘭子は、管理官すら指揮下におく『凄腕』だ。


 蘭子は捜査会議を始めた。

「現場は、リーダー小室弘の自宅。部屋には目張り。中央に練炭が置かれ、3人はコートを羽織り、使い捨てカイロを何個も抱いて発見された。発見者は、ゴミ出しの日に来たホームレス。何か煙りが出ているのか異様な臭いがしていたそうだ。火事だと思ったホームレスは近所の家に声をかけた。犬を飼っている家が2軒先にあり、そこの犬が飛びだして吠えた。近所の住人の誰か通報して、パトカーと消防が駆けつけた。」

「ここまでだったら、この寒さに無用心なことをした、いや、これは自殺だ、目張りしているし。シャンシャン・・・って訳には行かなくなった。」

「どういうことです、井関さん。」と尋ねたのは、大曲先輩だった。

「大曲の疑問は珍しく、正しい。智子。」

 蘭子は、課長権限でいつも井関さんを同席させる。仲のいい妹分の智子もだ。

 智子は、大曲先輩に数枚のレポート用紙を渡した。

「これは・・・そっくりじゃないか。現場と。」

「詰まり、被疑者・・・まだ判らない犯人は、ガイシャ達を使って、レポート用紙に書かれた文章を再現したのさ。文章は殺してから書いたものではないと推測出来るから。」

「辻さん。ホームレスについての聞き込みは?」

「いつもと違うオームレスじゃないか、と。水曜日は、ペットボトル回収日。てっきりいつものホームレスだと思い込んでいた、でも、いつもの自転車は無かった。そのホームレスは歩いて帰った。そして、近所の人が消防士越しに見たガイシャの一人が、いつものホームレスに似ていた、と。蒔。」

「ガイシャの小室弘ですが、小説の同人誌を趣味で作っていあたそうです。小室と一緒に死んでいたのは上条哲也。上条には妻から捜索願が出されていて、以前上条の妻は小室に尋ねてみたそうですが、最近親交がないと返事されたらしい。詰まり、上条は、学生時代の同好会『二度寝向上委員会』の仲間宅に居候していたことになります。」

「ゴミ置き場、防犯カメラありますか?辻さん。」

「ありますけど。ああ、ホームレス写ってるかも。」

「その写真を、上条の妻に見せて下さい。」


 午後3時。やはり、蘭子には確証があったようだ。

 辻さん達が上条の妻に見せた上で、『第三の男』下谷長一郎宅に行き、確認すると、素直に下谷は自白した。


 それぞれ事情があり、死にたがっていた。4人目、即ち、本物のホームレスは彼らの後輩だった。

 下谷が実行犯になったのは、くじ引きで負けたからだった。

 下谷は『自殺幇助』をしたのだ。


 午後7時。眩目家。

 夕食を採りながら、蘭子は言った。

「よく勘違いされるが、ホームレスとハウスレスは違う。大会社の社長がホームレスをしていた例もある。『心を無くした』んだ、絶望して。下谷は、どんな刑でも服します、と言っていた。怒りもせず泣きもせず叫びもせず。」

「俺はホームレスにならない。」

「当たり前だ。私の奴隷だからな、一生。」


 俺は、言葉を失った。


 ーー完―







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