13.お門違い殺人事件
辻班は、主に聞き込みを担当している。
今年、定年退職する辻には、大変な白星だ。
課長の蘭子が言った。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
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午後1時。捜査一課。「同級生事件」本部。
昼食の後、捜査員が帰って来て、捜査会議が始まった。
志摩管理官が、言った。
「今回は辻班の大手柄だ。皆、拍手!!」
皆は盛大に拍手した。
辻班は、主に聞き込みを担当している。
今年、定年退職する辻には、大変な白星だ。
課長の蘭子が言った。
「今、管理官が言われた通り、肝心な点を見逃す所だった。被疑者堺屋めぐるは、間違い無く奥野正の殺害を行った。だが、辻さん達の入念な聞き込みのお陰で、堺屋は『勘違い』で殺人を行ったことが判った。辻さん。」
「はい。過分なお褒めの言葉を頂戴しまして恐縮です。実は、事の発端が去年行われた同窓会にあるということで、大学同窓会参加者に聞き込みに回ったんです。そこで、同級生女子の数人が、堺屋がずっと勘違いしていたのではないか、という証言を得ました。当時、同じクラスに奥野正と言う学生と、岡野正と言う学生が在籍していました。岡野正は、同じ同級生の伊藤千佳子という学生に言い寄られ、レイプされそうになり、告訴すると言われ、退学しました。一方、奥野は、イメージチェンジで服装や髪型を変えました。そこで、堺屋の記憶が混同してしまったのです。堺屋は、『レイプされかかった』という事象だけを認知していた。同窓会で、40年ぶりに再会した者達で女子は『笑い話』として、岡野の話をしたんです。蒔。」
「似た名前が同級生の間で出てきたので、大学に問い合わせました。今、班長が言われた通り、岡野の方は、途中で退学、同級生の誰とも連絡をとっていませんでした。岡野の郷里の埼玉県に行き、確認しました。未遂だし時効だしと言うと、素直に話してくれました。伊藤に顔を合せたくないから退学し、他の大学に編入したそうです。」
蒔の話を継いで、辻は「堺屋も伊藤が好きだった。でも、アプローチは出来ないままだった。そこで、女子からレイプ未遂の話が出てカッとなった。奥野の話を何も聞かなかった。」と言った。
そこで、大曲は「取り調べで、『勘違い』のことを話すと、呆然としていました。哀れとしか言いようがなかったです。凶器は自宅から見つかった十徳ナイフ。脅す目的で持って行ったそうです。発見したのは、奥野の妻。情状酌量なんか認めない、と言っているらしい。」
「そう言えば、誰かさんもショートヘアに気づかず、明くる日ウィッグのロングにも気づかなかったなあ。」と蘭子が言い、「男はパット見しか目に入らないのよねえ。」と智子が言い、「俺に振るなよ、智子。」と井関が言い、秋野が「えと。ガイシャのご遺体にあった血痕と、ナイフの血液型は一致しました。」と、報告した。
午後4時半。本部長からの差し入れで、蕎麦が振る舞われた。
午後7時半。眩目家。
猛然と、蕎麦を啜る蘭子に、俺は尋ねてみた。
「大曲先輩、鈍感だから、愛想尽きたの?」
「そ。お前は敏感肌だから。今、何考えているか判ってるね。」
「お風呂沸かしてくるね。」
俺は、浴室に走った。
やっぱり恐い嫁さんだ。
―完―




