11.『有刺鉄線』殺人事件
ガイシャ伊原時子と昨年暮れに葬儀積み立てパックの契約をしたが、仕事納めの日だったので、年を繰り越した。契約書を持って訪問したら死体。見なかったことにしたかったそうだ。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻・・・捜査一課辻班班長。
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午後1時。捜査一課。「有刺鉄線殺人事件」本部。
昼食の後、捜査員が帰って来て、捜査会議が始まった。
課長である開光蘭子が、言った。
「発見者は葬儀会館職員澤美奈子。ガイシャ伊原時子と昨年暮れに葬儀積み立てパックの契約をしたが、仕事納めの日だったので、年を繰り越した。契約書を持って訪問したら死体。見なかったことにしたかったそうだ。完全に儲け損なったからな。仕事納めに訪問したのは、以前、隣組の家宝生家と契約していて、昨年満期になった後に宝生家のご主人が亡くなったので、挨拶に行ったところ、宝生家の奥さんが、澤がもうすぐ定年退職になる澤に同情して、ガイシャを紹介した。澤は以前営業に回った時、タイミングが合えわず初対面だったが、快く引き受けられ、契約することになったそうだ。右脚が不自由だから営業は辛かったから、最後の顧客になる筈だったらしい。」
管理官は、淀みなく説明したが、課長の蘭子に促されて立った井関は、かなり嫌そうな顔をした。
ガイシャの伊原家に踏み込んだら、澤の言う通り、玄関に有刺鉄線に巻かれた伊原時子の遺体。死亡推定時間ですが、ほぼ一週間前。暮れに殺害、放置されたものと思われます。」
聞いただけで痛い遺体だ。
「聞いただけで痛い遺体だ。」つい、声に出てしまった。
「痛いのが好きなのか?今夜が楽しみだ。」
皆は、顔を背けた。冗談とは思えないからだ。
「まあ、間違いなく怨恨だな。大曲班は辻班と手分けして、怨恨の線を洗え。解散!!」
大曲班とは、大曲先輩と俺のことだ。
「あれ、何で鉄条網、いや、有刺鉄線なんですかね?」
「眩目。いいこと言うな。」
「え?」「被疑者は一人じゃない。どういう経緯があったにせよ、有刺鉄線は必須じゃない。」
大曲先輩は、叱られるのを覚悟で、住所録や電話帳、スマホを辻さんに渡し、家中を隅から隅まで観察して回った。
下駄箱の死角になる部分に四つ又杖があった。
「眩目。宝生家の奥さん、呼んでこい。」
俺は、すぐ奥さんを連れて戻ってきた。
「奥さん、これ、伊原さんの杖ですか?」「いいえ。亡くなった主人の杖です。伊原さんもいつか要るかも知れないと思って、お譲りしたんです。伊原さんが使ってた杖は傘立てに入っているのがそうです。
午後3時半。捜査一課。「有刺鉄線殺人事件」本部。
「大曲が持ち帰った、この四つ又杖、4点杖とも言うそうだが、これが凶器だ。」と、管理官は言った。
「血痕は見つからなかったが、これで体重かけて突いて肋骨が折れた。死因を誤魔化す為に有刺鉄線を巻いたんだ。」と、四つ又杖を智子から受け取った井関が言った。
「別口で、発見者の澤の周辺を調べたら、建設現場で働く、不法入国者の那珂国人が情夫いた。澤がホンボシで、その男が協力者だ。」と課長は断定した。
「有刺鉄線は、今建設中のドラッグストアの工事現場から盗まれていました。」と、秋野が報告した。
大曲先輩は、白星を挙げた。
午後4時半。取り調べ室から、蘭子が戻った。
「落ちたよ。大曲。プラス1点な。」「1点・・・。」
「管理官。共犯の指名手配をお願いします。」
「了解した。」
午後7時半。眩目家。
「ねえ、らんこー。なんで大曲先輩はプラス1点なの?今日のは大きいと思うけどな。」
「真吉。甘やかすのは、お前だけでいい。結局、ゲロしたところによると、澤は伊原と知り合いで、昔のいざこざがあるから避けていた。宝生さんのことがあるから仕方無く向かったが、また喧嘩になり、四つ脚杖で突いてしまった。肋骨折れて死んでしまい、慌てて澤は情夫に相談した。」
「あの脚では、大変な作業ですしね。」
「必要以上に脚の悪いのをアピールするのが気になっていたんだ。」
成程。しかし・・・。
目の前には、精力がつきそうな料理が並んでいた。
きっと、出産時にも病院から指示するんだろうな。
蘭子の視線は、ずっと俺を突き刺していた。
恐い。
―完―




