第77話 ログの初夢! お年玉と混ざる未来予測記録!?
新年早々、記録庁に異変が起きた。
──ログスキルが未来を映し始めたのである。
「……何このログ?“初夢記録予測機能”って、去年までなかったよね!?」
朝から庁舎内で絶叫していたのは俺こと高野一朗、職業・記録庁長官(仮)。
ログの一覧画面には、“未来予測:3日以内に庁舎屋根から餅が降る可能性99.2%”などと書かれている。
「なんで餅!? ていうかそんなピンポイント!?しかも予測ログに“甘みLv.高”とか書かれてるけど!」
「これは未来夢ログの影響です」
横から葵が静かに説明してくる。手には湯気の立つお茶と、なぜか小さなお年玉袋。
「元旦から記録スキルが“初夢”と連動した未来予測機能を一時的に解禁したみたいで……」
「勝手に!? アプデのお知らせとかないの!?」
「夢ですから。説明書は幻想です」
妙に納得しかけたところで、ユグがぬるっと登場。
「我、未来ログに“豆腐を喉に詰まらせたクラヴィス”を視た」
「やめて! その未来は今からでも防げるから! というかクラヴィスは?」
「現在、お年玉記録申請フォームに苦戦中です」
一方その頃、クラヴィスは記録庁受付カウンターにて額に汗をかいていた。
「……お年玉、とは……通貨か……? 文化的儀礼か……? 扶養控除に入るか……?」
「クラヴィス、真面目すぎィ!!」
そのまま庁舎中が“未来ログ”に右往左往することに。
ログ室には「初夢:宝くじ当選」「初夢:婚姻」「初夢:世界終焉(ただし日付不明)」などの記録が山積み。
「この“初夢ログ”って、どこまで本当なんだ……?」
「真実とは限らないけど、“記録された可能性”は現実の起点になります」
「つまり……見た未来を信じれば、現実になる可能性も……?」
そのとき、一通のログ封筒が庁長室に投げ込まれる。
『お年玉未来記録:高野一朗、王になる可能性38.7%(もちもち国)』
「なにこれ!? もちもち国!? 聞いたことないよ!?」
「でも可能性はあります。記録が言うなら、きっとどこかに“もちもち王国”は……」
「やめて! 俺にもちを背負わせないで!」
混乱する中、ユグがふわりと舞うように一言。
「未来は記録できても、定着はできない。だからこそ、みんな夢を見る」
「……そのポエム調コメントは何??」
そんなこんなで、記録庁は“初夢ログ祭り”と化し、市民たちもログ提出に訪れるようになった。
「私、初夢で猫が喋ってたの! 記録できますか?」
「うちのじいちゃん、夢の中で大根と結婚したって……」
「おめでとうございます、記録します」
ログは夢をも記録する。
そしてその夢が、誰かの希望となり、笑いとなり、時には現実への第一歩になる。
ふと、俺は記録庁の壁に掲げられた言葉を思い出した。
『記録は、未来への橋』
庁内では今も、誰かが未来の自分をログに書き記している。
──そのすべてが、ちょっとだけあったかい。




