第7話「残念な正社員隊、強制パーティ再編成」
「さて、“残念な正社員隊”再編会議を始めるぞ!」
「ちょっ! 名前ほんとにそれにしたんですか!?」
「当然だろ? 勇者パーティ(笑)とか、こっちが恥ずかしいわ」
「うぅ……元勇者……」
「……現・残念な正社員(佐藤)だろ?」
というわけで、俺はパーティリーダーとして復帰──じゃなくて、
“上司”として正式に就任した。
異世界でも、正社員どもを“部下”にできるとは思ってなかったな。
「じゃあメンバー表見せろ」
「こ、これです……」
■旧・勇者パーティ
田島 課長(聖騎士):土下座担当
佐藤(勇者):軽口&調子乗り担当
森本(僧侶):空気
浜野(魔法使い):やる気ゼロ
「……まず森本。お前、何もしてなかったよな?」
「は、はい……癒しの光って言ってましたけど、実は……ただのLED効果でした……」
「お前それヒーラー名乗る資格ないわ。はい、クビ」
「えぇぇええええぇぇ!? 転職制度とかないんですか!?」
「スキル《記録》で確認済み。君、“僧侶スキル”未習得。神にすら選ばれてない。ただのインテリ眼鏡」
「うわぁあああん!」
次。
「浜野。お前さ、魔法使いのくせに一度も詠唱してないよな?」
「だって……詠唱長いし……恥ずかしいし……燃費悪いし……」
「そんなんで異世界生き残れるか!」
「いやでもリアル魔法少女とか見て育ったらなんか無理っていうか」
「浜野、実は一度も魔法成功させてないって記録でバレてんだよなぁ……」
「うそっ!?」
「実際出てた火の玉、あれ隣のキャンプファイヤーの火だから」
「えええええ!?」
「はい、クビ。ついでに《お荷物》って称号ついてるからな。神から」
「うわぁぁあぁ!!? 神ぃぃいいい!!」
最後に佐藤。
「……お前はどうする?」
「えっ、えっと、ぼく……ちょっとだけ役に立ててると思います! この間、モンスターの位置、1秒だけ早く見つけました!」
「……つまりそれ以外何もしてないと?」
「ぎゃふん……」
「ただし、お前には“ボイスメモ担当”という新しい役職を与えよう」
「え、それって……」
「お前の土下座ボイス、すっげえ使えるんだよ。脅しにも広告にも。異世界SNSでバズらせるぞ」
「ひ、ひぇぇ……!」
こうして――
■新・残念な正社員隊(仮)
俺(高野):リーダー兼スキル研究&現場全指揮
佐藤(元勇者):音声記録担当(再生不可避)
田島(元課長):雑用・謝罪係・盾役(物理的にも)
他は全員追放した。
おっさんのジャッジメント、異世界でも冴えてる。
「じゃあ、お前らには、まず明日から“村の畑の耕し方”を記録してこい」
「え? 魔物討伐じゃないんですか?」
「お前らには、まず地に足つける努力が必要だ」
「うぅ……サラリーマンの頃より厳しい……」
「異世界舐めんな。あと、課長は農作業中も土下座の姿勢を保つこと。反省が足りん」
「えぇ……(泣)」
おっさんは今日も、自炊小屋で鍋を煮込みながら、
“スキルなし無職”の復讐と、無双成長を地味にコツコツと進めるのだった。
(第8話へつづく)