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【第一章 魔法少女の覚醒】5 (二上視点)

「……なんで……そこまで……」

 本気で、意味がわからないと、二上は混乱する。悪いのは全部自分で、そのために何故彼女が傷付いてまで助けようとするのか。

 ぼろぼろになりながらも、七海は言った。

「……普通でしょ。生きてる人が、誰かを助けようするなんて」

「普通じゃ、ねぇだろ……、こんな……歩いてて、人助けするのとは訳が、ちげぇだろ……!」

「違わない!」

 七海は言葉を重ねる。

 怒り、涙し、必死に。

「痛いって、助けてって、言ってたから! 無謀だって言われたって、自己満足でも何でもいい! 私が、あなたを助けたいって思ったから! それ以上の理由なんてないんだよっ! 苦しい時にそばにいてほしいって、辛い時に寄り添って一緒に泣いてほしいって! そう思うのは普通でしょ⁉」

 彼女の熱が、コンクリート越しにも伝わるようだった。

「私が、そうだったから……。……私はあなたを許さないし、だいっきらいだけど……でもッ‼ そんなの今関係ない! 死んでほしいだなんて思わない! 生きてよ! 私の、このぐるぐるした思いごと、全部丸ごと、捨てる場所をなくさせないでよ……!」

 二上は、七海の言葉を受け止めながら思う。めちゃくちゃだと。言ってることがちぐはぐで、何も筋なんて通っていない。

 なのに。涙を浮かべて怒りをぶつける七海の姿から目を離すことが出来なかった。

 悔しかった、そのカッコよさが。二上にはないものだと知っていたから。

 だから二上は、

「何、イキってんだよ……魔法少女でも、ねぇくせに……!」

「……!」

 つい、彼女を(おとし)めるような言い方をしてしまう。自分自身に跳ね返ってくることもわかっていて。

「イライラすんだよ……あたしより弱いくせに……! 図に乗ってんじゃ、ねぇ……!」

 力を籠める。助けなんて必要ない、自分で這い出てみせると。……そんな思いで抜けられる訳もないことを、知っていて。

「……そう、だよ。私は魔法少女なんかじゃない。ただの弱い、普通の、ううん、それ以下だって思う時もある、弱い人間だよ」

 二上は見上げた。自分には出来ない、弱さを肯定する強さを持った、七海雫九という少女の姿を。プライドで凝り固まった浅い自分を見下ろす、少女の姿を。

「それでもさ……! 願っちゃダメなのかな……! 強くなりたいって! 弱い自分を認めたまま、弱いまま生きたくないって! 思っちゃったんだよ……! 嫌なの! あの子たちみたいになりたいっ! かわいくて優しくて! いつでもニコニコ笑顔浮かべて! 誰よりも強いあの子たちみたいになりたいって! そう願っちゃったんだよ! 私には、出来ないから……出来ないまま諦めたくないって、あなたを助けて、その思いを証明したいって! もう暗がりの中だけで生きるのは嫌なんだよッ! あの日見た夢に近付きたい、そのために必要だって思ったこの一歩はもう、誰にも邪魔させてやらないんだからッ‼」

 その叫びは、二上の心を震わせた。

 眩しかった、その姿が。まるで光に包まれているようで……。

「……? なん、っだ……⁉」

 本当に、眩しくなった。彼女のブレザーの中から、何かが光を放ち、貫通してくる。

「……え、何これ……いつの間に?」

 七海は、溢れた涙を拭いながら、ブレザーのポケットから異物を取り出した。それは、小さなペンダントのようだった。

「んだよ、それ……⁉」

「わ、わかんない……! 私にも、何が何だか……、……!」

 七海の様子が変わった。何か悪いものでも見たような、青ざめた表情をしていた。

「……? お、おい、何が……」

 二上からは、外の状況など知りえない。視点は低く、辛うじて瓦礫から覗く程度。

「い、いや、ダメ、来ないで……ッ!」

 しかしそれで、気付いてしまった。空気が一変したと。……いや、始めからそうなる未来も予想出来たはずなのに、失念していたことを、思い出した。

 いるのだ、すぐそこに──モンスターが。

「……! だ、ダメェッ‼」

「……ッ!」

 七海の悲鳴に、二上も覚悟せざるを得なかった。

 もう、助からない。そう思った。

 直後に、その音を聞くまでは。

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