4 強盗を捕まえる
「だれか! アイツらを追ってー!」
宿のベッドで眠りかけていた僕は宿のおばさんの叫び声で飛び起きた。
その声と共に、2、3人の慌ただしい足音が響いてきた。
おばさんの声だ! なにがあった。
僕が階段を駆け下りると、脚を押さえて座り込むおばさんの姿があった。
「おばさん! 何があったんですか」
「お金が。お金が全部盗まれたのよ」
そんなことを言っているがおばさんは脚を怪我している。
僕はこっちが先だと結論付けた。
「おばさん。それより早く治療しないと」
「お願いだよ。私はいいからアイツらをお追ってくれないかい? あのお金がないと宿の経営どころか生活すら出来ないのよ」
「――わかった」
おばさんの必死さが伝わってきたため、僕は渋々承諾した。
理由はそれだけではない、他の部屋からもお客さんが出てきていておばさんの治療にあたってくれる様子だったので僕は急いで強盗犯を追った。
宿を飛び出て直ぐに、おばさんの声を聴いた近所の人たちが何かを追いかけている後ろ姿を発見した。
とりあえず走ってみたらすぐに5人組の追手に追いついた。
みんな夜中だから疲れてるんだろうな。僕もじいちゃんとの訓練の後だとこの人たちと同じくらいの速さでしか走れない。
僕と5人組の前方にはさらに3人組が走っている。あの人達はこの人達より元気そうだ。
しかし、今一緒に走っている5人組全員の視線が僕の顔と3人組を行き来している。
もしかしてあれが犯人?
とも思ったがそんなに近くにいるはずがない。
であれば、あれは追手の先頭ということだろう。まずはあの人たちに追いつこう。
僕がペースを上げようとした時、一緒に走っている5人組の一人から質問が来た。
「こんな状況で聞くことではないが君は何者だ?」
本当に今聞くことじゃないな。
「僕ですか? 僕はその辺の村人ですよ。じゃあ、僕は先頭の方々に合流しますね」
「ん? いや、あいつらが」
「ではまた。 無理なさらず」
最後なんか言おうとした? まぁいいけど。まずはあの人たちに追いつかなくっちゃな。
僕はそれなりに全力で走った。昼間は結構働いたので疲れているのだ。
王都に向かっているのに何してるんだって?
そりゃ、困っている人がいたら助けるでしょ。あと旅に飽きた、それだけ。
おっと。先頭に追いつけたぞ。
「犯人はどこに?」
「は? な、何の話だ?」
僕はかなり簡潔に質問をしたのだが。伝わらなかったみたいだ。
それにしてもその返答は無いだろ。もういいや、情報だけ聞いておこう。
「強盗犯を追っているんですよね? 今どこに?」
「何言ってんだお前。馬鹿はこれでも食らっとけ! エアカット!」
人のことを馬鹿って言うな。馬鹿が! あとエアカットってなんだ?
そう思った瞬間、ショウの本能が自らに警鐘を鳴らす。
ヤバい。なんか来る!
その直後、3人組の一人の手から放たれた何かがショウ目掛けて飛んでくる。
その『何か』がショウに届くまでのその刹那の間、ショウの頭には『眼』に映る情報が入り込んでくる。
空気と何かが混じり合い薄く延ばされ、鋭利な刃物のようになるのが視えた。それと同時に男から僕の首元を目掛けて殺気に似た何かが向けられているのに気づく。
この感覚……じいちゃんの技を初見で食らう時と似ている。
しかし、どういうわけか脅威は全く感じない。
それにこれはなんだ? 空気の塊?
いや! それより、これはよけなきゃ。 スピードは遅いけど、当たったらどうなるかわからない。
この3人が犯人だとさすがに分かったショウは攻撃を避けることにした。
ショウはその攻撃を3人の進行方向を塞ぐように半身を切りながら避けた。
ショウが避けた空気の刃物は建物に当たり土埃が巻き上がっているのを見て避けて正解だったと安心する。
予想通りスピードはじいちゃんの攻撃と比べ物にならないくらい遅いけど威力だけはある。
そんなことを考えたのが原因か、じいちゃんとの訓練がフラッシュバックする。
今の避け方をじいちゃんが見たら絶対に怒られる。
昔じいちゃんの技を跳んで避けた時に『ほう。お前はワシの技を空中で避けられるのだな?』とガチな目で言われてボコボコにされた苦い思い出がある。
「はぁ? なんでこの距離で避けれんだよ。おい! お前らも打て!」
「「「エアカット!」」」
おっと。今度は先ほどの攻撃が3つ来るようだ。全部避けられるのだが、周辺への被害は避けたいところだ。
先ほど避けた攻撃が建物に当たってしまい、かなりの被害を受けている。
クソ。しょうがない。全部受け止めるか……。
ショウが覚悟を決めた時、彼の目の前に何かが広がった。
それと同時に、また情報が頭に入り込んでくる。
先ほど空気と混ざり合っていた『何か』がそのモノだけで固まり、盾のように形を変え、ショウを守るように広がっていく。
強盗の攻撃はその壁のようなものに阻まれ、小さな振動が起こる程度に収まった。
ショウが閉じかけた目を開けると、先ほどの盾のようなものが変形し犯人達を閉じ込めているのが見えた。
この光景を目の当たりにしたショウが唖然としていると、通りに大きな声が響く。
「動くな! もうお前たちは包囲されている。全員持っている武器を置け!」
「チッ! 警備隊かよ……」
馬に乗った騎士のような男が忠告をする。逃げ場を失い、諦めた様子の犯人が舌打ちをしながらショウを睨む。
まだ状況が整理できていないショウに下馬した騎士のような男が声をかける。
「君が奴らを足止めしていてくれたのか。感謝する。名前を聞いても?」
「あ、はい。ショウ・オルティスです」
「ショウ君、本当にありがとう。怪我はないか?」
「はい、大丈夫です」
「今日はもう遅い。明日、詳細を聞きたいのだが予定は空いているか?」
「あ、はい。大丈夫です」
ショウの脳は今さっき起こったことに理解が追い付かず。その男との会話にも集中できないまま終わってしまった。
とにかく疲れてしまったショウが覚えているのは、そのまま宿に帰ろうとしたところまでだ。




