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20 魔法実技

「2人ともどこで何をしていたの?」


 バラクロフさんに見つかったナナと僕は現在、職員室のフェリーネ先生の机の前で正座をしている。

 そんな僕たちの頭上からはとてもやさしい声が響いてくる。

 しかし僕は頭を上げることすらできない。それはナナも同じらしい。

 やっぱりこの人が一番怖い。この人の雰囲気はただ強いだけではなく冷酷といった印象だ。


「答えてくれないの?」

「そのー。ねぇ、ショウ」

「ナナが言えよ」

「どちらでもいいから、早く答えてね」


 僕とナナは同時に背筋が伸びる。

 しょうがないので僕が答える。


「寮の隣の空き地で訓練というか、ゲームというか」

「ゲーム? 遊んでいたんですね?」

「訓練です! ショウ。変なこと言わないで」


 僕が適当にしゃべったらナナに怒られた。

 確かに今の発言は軽率だった。この人の前では特に気を付けなければいけない。


「訓練ね。それは授業より大切なのですね?」


 僕らは全力で首を横に振る。


「次はありませんよ。いいですね?」


 僕らは全力で首を縦に振る。


「はい、おしまいね。教室に戻りなね。午後の授業始まるからね」

「「はい! 失礼しましたー!」」


 緊張から解き放たれた僕たちは大きく溜息を吐いた。

 本当に怖かった。あの人はいったい何者なのだろうか。こんな人が教師をしていて良いのだろうか。


「ナナは、フェリーネ先生がああいう人って知ってたのか?」

「し、知らなかった。は、吐きそう」


 訓練のときよりも確実に疲労がたまってしまった。

 僕たちは、重い足取りで教室に向かう。

 教室ではリトとリナが待ち構えていた。

 ナナの姿をみたリナがナナに飛びつく。


「よかったー。どこに行ってたの?」

「寮の横にある空き地」

「え、なんで?」

「リナ、俺も気になるけどひとまず授業に向かおう。遅れるぞ」

「わかった」


 僕とナナは急いで準備をしリトとリナについていく。

 次の授業は魔法実技なので僕たちは訓練場に向かっている。

 訓練場に着くまでの時間で僕とナナは授業をサボっていた理由をリトたちに話した。


「普通にサボりだよね、それ」


 リナの言葉に僕たちは何も言い返せない。

 助けが欲しい僕らはリトを見つめる。


「今回はどうにもできん。というか授業を忘れるなんてことがあるか?」

「あったんだよ。怖いだろ? どんな魔法なんだろう」

「変な方向に話を持っていこうとするな」


 リトはかなり呆れている様子だ。

 この学校に来て2日目なのにこの有様だ、僕がこの学校を出るまでに何人に呆れられ、何人に叱られるのだろうか。

 僕はこれからの学校生活に不安を覚えた。


「次は魔法実技だからな。ショウ、変なことするなよ」

「魔法が操れないんだからしたくてもできないって」

「どうだかな」


 僕のことを何だと思っているんだ。ルームメイトのリトにはもう少し信頼してほしい。

 そうはいっても、次の授業は僕も不安だ。

 現状、僕には使える魔法がない。

 今日の授業で何かコツを掴めれば良いけど……。

 僕らがついて1分も経たずに授業が始まった。


「この授業は実際に魔法を使いますので、危険のないように集中して臨んでくださいね」


 やはり、魔法には危険がつきものらしい。

 比較的優秀なAクラスとはいえ注意が必要なようで、フェリーネ先生が細かいところまで注意をしている。

 注意されたことは大きく分けて3つ、説明を最後まで聞いてからやること、いきなり全力でやらないこと、他人に向けないことだ。

 このクラスにそんなことをする人なんていないだろうに。

 僕がつまらなそうな顔をしていると、約4名からの熱い視線を感じた。


「それでは皆さんグループを作ってください」


 スペースの関係でいくつかのグループに分かれて練習をするらしい。

 僕はというとメンバーを探す時間すら与えられずに、リトたちにつかまった。


「ショウ、ちゃんと話きいてたか?」

「おん、きいてた」

「本当? あの説明、ショウ君だけにしてるようなものだよ?」

「いつもしてないの?」


 確かにレベルの低すぎる注意だとは思ったけど、僕に対して言ってたのか。

 さすがの僕でも、怖くてそんなこと出来ない。

 エンニ先生に怒られて以降は自分の魔力を感じる事すらしてないのに、そんな人が適当に魔法を使うわけがない。

 僕は少し過剰すぎる僕への警戒態勢に呆れてしまった。


「グループはできましたね。今日教える魔法はアイスウォールです。水と風の混合魔法ですね」


 混合魔法っていうのは昨日リナが教えてくれた、合わせると強力になるってやつかな。

 アイスってことは氷の魔法は水と風なんだね。ウォールって言ってたし、なんとなく想像できる。でも待ってほしい。

 属性魔法を単体で使うことすらやったことのない僕にいきなりこんな魔法が使えるわけがない。

 とりあえずはリトのお手本を見てみよう。


 リトが地面に右手を付ける。

 リトの目線の先の一帯の気温が下がっていく。

 集中した目つきのリトはいま冷やした空間に水魔法をかけた。

 次の瞬間、僕らの前に人が一人隠れられるほどの大きさの氷の壁が現れた。

 リトが地面に手を付けてからここまで約2秒といった所だろうか。

 凄い、冷やした空間ぴったりに水が出てきた。

 さすがリトだな。素人の僕でも今の魔法が美しいとわかる。


「リトってやっぱりすごいな。最初に冷やした範囲ぴったりだったぞ。ちょっと感動した」

「範囲? なんのだ?」

「え? いや、リトが先に空気を冷やしただろ」

「すまない。よくわからん」


 自分でやったのにわからないってなんだよ。

 まさか、リトは感覚派なのか?

 魔法師にもそういうタイプがいるのか。


「ナナは分かるよな」

「わかんないよ」

「リナさんは?」

「ごめん、わかんない」


 衝撃的事実、僕の周りには感覚派しかいない。

 しょうがない、エンニさんならわかるかもしれないな。後で会ったら聞いておこう。

 話は変わるが、僕は先程のリトの動きに疑問を感じている。

 リトが手をついた意味が分からないのだ。

 別に手から水魔法が使われたわけじゃなかったし、魔法を使用する位置をイメージするのなら、別に手をつく必要もない。

 もしかしたら、リトにとっては一番イメージしやすい形かもしれないな。


「よし!」

「「「ん?」」」


 僕は何もない空間に向けて手のひらを翳す。

 そして、自分の魔力とこれから使う魔法に集中する。

 昨日はエンニさんのパンチをするイメージというのに引っ張られてしまった。

 今日はさっきのリトの魔法をイメージしてみよう。


「ショウ、どうした?」

「…………」


 集中しているショウの耳にはリトの声は届いていない。

 さっき見たリトの魔法の工程をイメージすればいい。

 それにリトは魔法の名前を言っていなかった。

 ということはイメージさえ固まっていれば魔法は使えるのだろう。

 僕はもう一度リトの魔法を思い出して、強くイメージをする。


「おいショウ! 止めておけ!」

「ショウだめ!」

「ショウ君!」

「やめなさい、ショウくん」


 4人が気付いた時にはもう遅い。

 ショウの魔法は発動している。

 さらにその魔法は完璧に発動していた。

 そして驚くべきことに先ほどリトが使ったアイスウォールと同等の完成度だ。

 これにはフェリーネを含めた1-A全員の開いた口が塞がらない。

 ただし、1名を除いて。


「なるほど、これでいいわけか。これならやりようはあるな。しかし、誰かの魔法を実際に見ないといけないのが面倒だな。エンニ先生にみせてもら」

「ショウくんいま何をしたの?」


 誰よりも早く状況を理解したフェリーネ先生がショウに迫ってくる。


「アイスウォール? ですけど」

「何であなたがこの魔法を使えるんですか」


 確かに僕も使えないと思っていた。

 しかし、あまりにも普通に使えてしまったので忘れていた。

 それにしても、生徒の成長は喜んでほしい。

 僕はこの学校に来てから褒められたことがない。


「あなた、これを消す魔法を知っているんですか?」

「消す?」


 そういえばリトは自分で出した氷の壁を最後に消していたな。

 でも、それなら心配はいらない。

 僕はリトがつくった氷の壁が魔力に戻り空気中に溶けていくのをしっかり見ていた。

 それをイメージすればできると思う。

 僕は自分でつくりだした氷の壁に手を翳し、目の前にある氷の壁を魔力に分解するイメージをした。

 すると、リトがやった時と同じことが起きた。

 どうやら、魔力に戻すだけで勝手に空気中に溶けていくみたいだ。

 ショウは魔法のコツを掴めてとても満足そうな顔で何度もうなずいている。

 

 

 一人で納得しているショウをその場にいる全ての人が見つめている。

 ショウの秘密を知らない人たちは何がおかしいのか理解しておらず、ただ注目しているという様子だ。

 しかし秘密を知っている4人は違う。

 魔法というモノを知って2日の素人が、使ったことのない魔法を一度見ただけで再現してしまったのだ。

 その事実と神業を目の当たりにした4人はその場に立ち尽くしている。

 中でもフェリーネは考えることが多い。

 上司であるエンニに、また意味の分からない報告をしなくてはならないと頭を悩ませている。


(お願いだから、もう変なことしないで)


 フェリーネの願いが叶う日は訪れるのだろうか。



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