17 デュエル
累計PVが300を超えました。ありがとうございます。
僕の好きな数字が150の倍数なので報告しました。ここから戦闘シーンも増えます。
「俺とのデュエルでてめぇが勝ったら、な」
「デュエル?」
取り押さえられていたエリアスが意味の分からない提案をした。
ショウは話をさせるために一度エリアスを放す。
ゆっくりと立ち上がったエリアスがショウを見下すような口調でしゃべり始める。
「そーか、新入生だから知らないのか。いいぜ、教えてやる。デュエルっていうのはな、この学校の校則で認められてる一対一の決闘のことだ。降参するか動けなくなった方の負け、殺してしまったら校則とかの話じゃすまねぇ。負けた方は事前に決めておいた条件を呑むっていうのが基本的なルールだ。どうだ、やるか?」
「ショウやめておこうよ」
「俺が勝ったら、お前がしようとしたことを自白したうえで今後は俺らの座席について文句を言わないって条件でいいか? 俺が負けたら謝って席を譲ってやる」
「おう、いいぜ。死ぬなよ、俺が捕まっちまうからな」
「…………」
「じゃあ、行こうか。誰か、カール先生を呼んできてくれ」
訓練場に移動すると言われ、教室を出ようとしているショウをナナが引き留めようとする。
「ショウ待ってよ! ボクたちのことはもういいから、エリアスには勝てないって。リトたちでも無理なんだよ? だから止めておこうよ」
「ナナ、本当にいいのか? ナナが狙われたんだぞ。俺はあいつを許すつもりはない。それに負けるつもりもない」
「でも、あいつは強いんだって。それにショウは魔法も制限されてるでしょ! そんな状況でどうやって戦うの?」
「魔法なんて要らない。そもそもあいつはそこまで強くない」
「そうやって油断してると」
「油断なんてしてない。大丈夫だから」
言葉も出ないというようなナナを置き去りにし、ショウは訓練場へと向かった。
訓練場には、デュエルの噂を聞いた校内のデュエル好きと、1-Sが中心のアサレアの取り巻きたちが集まっていた。
「やっと来たか、ビビって逃げたのかと思ったぜ」
エリアスの声に合わせてアサレアの取り巻きたちから笑い声が起こる。
ショウは微塵も反応しない。
「チッ、無視かよ。まぁいい、先生も着いたみたいだし始めるか。先生、始めていいですよー」
エリアスが目線を送った先にいるのは1-Sの担任、カールだ。
カールは周りを見渡し、開始の合図をする。
「カール・バリエの名の下に、このデュエルが正式なものと認める。それでは始め!」
始めの合図が響いた瞬間、事前に魔法を準備していたエリアスが攻撃を放つ。
その魔法は土魔法で生み出した細長い岩を火魔法で熱し溶岩のようなものをつくりだす魔法、ラヴァ・バレットだ。
この魔法の威力は魔法の使用者の塩梅によって決まる。
つくった岩の鋭利さ、温度。それらを変えることで寒いときに手を温められるような物から相手に重傷を負わせる危険な物まで様々な物をつくることが出来る。
魔法は威力を弱める方が難しい。逆に威力を高めるだけならば、自分の魔力を全て注ぎ込めばいいだけなので簡単だ。
最初から全力全開のエリアスのラヴァ・バレットの威力は防げなければ一撃で致命傷になる威力に達している。
(クソ、威力に魔力を使いすぎているのか? 当てられねぇ)
「おい! 逃げてるだけか。こんな魔法も相殺できないような奴が俺に勝てるわけねぇだろ。諦めて降参しな」
自分の攻撃がショウに当たる気配が無く焦ったエリアスは言葉でショウを降参させようと試みる。
しかし、ショウは一言もしゃべらない。ただ淡々と攻撃を躱し続けるだけだ。
焦ったエリアスは熱量とサイズと速度のバランスを速度に傾かせ、ショウ目掛けて正確に魔法を放つ。
「おいおい。もう逃げるところなんてないぜ?」
先ほどまでの攻撃により地面が溶岩だらけだ。ショウの足場が減りつつあるこの状況を見てエリアスは勝ちを確信する。
(なんだよ、焦らせやがって。後は足場を減らして高火力の一撃を食らわせるだウッ……)
「ゲホッ……クッ。いま何を……」
身に覚えのない痛みと苦しみを感じたエリアスの意識はその原因を知る前に暗転した。
「しょ、勝者ショウ・オルティス」
カール先生が呼んだ勝者の名前が静かな会場に響く。
この戦いを見に来た者は皆、何が起きたのか理解できずに唖然としている様子だ。
ショウを心配して追いかけてきたナナも唖然としているが、その理由は他の生徒たちとは異なる。
彼女の家は、王国随一とも呼ばれる武道が継承されている一族なのだ。
そのため本来であればこの学校に来る必要はないのだが、5人兄弟の末っ子で二女ということもあり、親友のリナや友達のリトが入学するこの学校に入った。
そんな彼女はこの学校に魔法以外の戦闘で自分に勝てる者などいないと思っていた。
それがいつもの3人組で1番魔法が苦手なナナの唯一の自信であり、それは他の2人も理解していた。
しかし今この瞬間、その唯一の自信すらも無くしてしまった。
魔法も一切使わない、純粋な戦闘技術と身体能力だけで魔法師を完封してしまう人に出会ってしまった。
「なに今の、あんなのパパにも出来ないよ」
ナナの声は震えている。
彼女の心は自分の中に混在する様々な感情に飲み込まれていく。
自分を助けてくれたという感謝の気持ち。武道を歩む者として一種の究極体を見ることが出来たという感動。自分だけの強みを奪われたという妬み。自分には到底追いつけないという無力感。
ありとあらゆる感情に飲み込まれていくナナの体は無意識にその場から走り去っていた。
エリアスを嬲った僕はナナを探した。
あまり覚えていないが訓練場までついてきていたのは覚えている。
しかしナナの姿は見つからない。
あきれて帰っちゃったのかな。てっきりやりすぎだと怒られると思っていた。
「ショウ!」
名前を呼ばれて振り返るとそこには、リトとリナ、それにフェリーネ先生がいた。
フェリーネ先生は呆れた様子だが、今回は僕に非はない。ルールの範囲内で、ルールを破ろうとしたやつを返り討ちにしただけだ。
「ショウくん? 何でこうなったのかな?」
「僕は何も悪くないですよ。そこに転がってるやつが校則を破ろうとした挙句、デュエルとかいうのを持ちかけてきたので倒しました。あ、魔法は一切使っていませんよ」
「うん、確かにショウくんの魔力の痕跡はないね。わかりました。ショウくんを信じますね。でも、今後こういったことは控えてくださいね」
その後、意識を取り戻したエリアスはナナに対して魔法を使おうとしていたことをこの場にいる全員に自白し、カール先生や他の先生方に職員室まで連れていかれた。
これで、絡んでくるやつがいなくなるといいけど。
「リト、ナナのこと見てないか?」
「いや見てないぞ。次の教室にいるんじゃないか?」
「そっか」
やっぱり、途中で引き返したのだろうか。
席を取られないように早めの移動をしたんだ。当然か。
「3人も早く教室に行きなね。授業に遅れるよ」
「そうでした。リナ、ショウ、行くよ」
「うん!」
「うん……」
僕たちは授業に遅れないように教室に戻った。
教室に着いた僕は真っ先にナナを探したがやはり居なかった。
あいつの仲間に、攫われたのか?
「あれ、ほんとだ。ナナいないや」
「トイレにでも行っているんじゃないか?」
いや多分違う。僕とナナは教室間の移動中にトイレに寄っている。
体調が悪いようでもなかったし、やっぱり。
僕は嫌な予感がして行く当てもなく走り出した。
「僕、探してくる」




