15 初登校
「ショウ、おはよう」
「おはよう、リト」
魔法学校の寮に入った僕はルームメイトのリトに挨拶をする。
なんか変な感じがするな。でも嬉しい。
「制服も似合っているな」
「そうかな。あんまりしっくり来てないんだけど」
僕は納得していないが、リト的には良い感じらしい。
この学校の制服は黒のズボンと白のシャツにネクタイ、その上に黒のローブだ。
ローブの裏地の色と胸元のバッジでその人の所属クラスが分かるようになっている。
裏地の色は下の学年から順に緑、黄、赤、青。バッジはCクラスから順にブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナと別れているそうだ。
ちなみにそれぞれがバッジの素材に使われているわけではない。名称だけだ。
僕は裏地が緑のローブにゴールドのバッジだ。
「おっ。そろそろ時間だから行くか」
「うん」
僕とリトは部屋を出て、寮の玄関で待つリナとナナの2人と合流した。
僕がAクラスになったことは昨夜の夕食の時に話してある。
2人と合流したので僕たちは教室に向かう。
「まさかショウ君もAに来るなんて。これから楽しくなりそう!」
「全然楽しくない。こんな危険な人が来たら授業に集中できないよ」
ナナは僕を見つける度にすぐ危険、危険と言ってくる。
もう僕に近づかなきゃいいのに。とは思うが、仲良しのリナが僕に興味津々なので仕方なくついてきているようだ。
でも、事あるごとにチクチク言ってくるのは止めて欲しい。
「そうだ、ショウ。今日の予定を教えておいてやるよ」
「それ昨日のうちに教えられなかったの? 掃除してるときに時間あったじゃん」
「ちょい、ショウ!」
リトに腕を掴まれ道端に連れて行かれる。
リトはかなり焦っている様子だ。何故だろう。
「どうした?」
「頼む、俺の部屋が汚かったことリナだけには言わないでくれ」
「なんで?」
「アイツ怒ると怖いんだよ」
ははーん、これはいいカードをゲットしたな。
これにはニヤけが止まらない。
このカードは必殺級だ。
「何ニヤニヤしてるんだよ。頼むから本当に言わないでくれ」
「ソーユーコトナラ、イイデスヨー」
「何だよ、その言い方。本当に言うなよ?」
まぁ、ふざけただけで言わないけどね。僕だってそんなことでリトとの仲を悪くしたくはない。
逆にそんなにガキだと思われていたのか? それは悲しいなぁ。
「リトどうしたの?」
「あ、いやなんでもない」
「ふーん」
まさか寮から学校までのこの僅かな間にリトとリナの上下関係という重要な情報を得られるとは。
リトたちと出会ってからの僕は運が良い気がする。
そんな他愛もないような会話をしていたらすぐに教室についてしまった。
教室は階段教室で、大きな黒板の前に教卓がある。至って普通の教室だ。
教室にはすでに生徒たちが登校していた。
中には寮で見かけたことのある生徒もいるが大体の人が初めましてだ。
「想像はしてたけど、みんなの視線がキツイなぁ」
「それは、仕方ないだろ」
「そうなんだけどさ?」
この学校に来てから。いや、村を出てからこういう視線を受けることが多々ある。
しかし、全くもって慣れない。
僕はキツイ視線の中、最前列の席に座る。
個人的には後ろの方が良いのだが、リトたちはいつもこの席らしい。
「もうすぐ担任先生が来てHRが始まるからショウ君の自己紹介は多分その時だよー」
「わかった。ありがと」
担任の先生か、どんな人なんだろう。優しい人がいいなぁ。
少ししてざわついていた教室もだんだん静かになり、時報の鐘と共に担任の先生だと思われる人物が入ってきた。
「はい、皆さん席についていますね……!」
入ってきた教師と目が合った。
彼女は一瞬だけ僕のことを見て少し笑った。
「おい、リト。あれが担任か?」
「ああ、見た目と変わらず優しい人だぞ」
や、やさしい?
僕は気づいてしまったのだ。この人は恐ろしいと。
おそらく、先生に僕の監視を頼まれたのだろう。
それにしてもエンニさんを先生と呼ぶと他の先生方と被るな……普通にエンニ先生でいいか。僕はいつの間にかルーナ様に引っ張られていたみたいだな。
おっと、話が逸れてしまった。問題はこの人が僕のことを警戒していて、いつでも攻撃できるように準備をしているということだ。
警戒するのは分かるけど、ちょっと過剰じゃないか?
「HRを始めますね。ショウくん前に出てきてくれますか?」
「は、はい」
僕が何もしなければ大丈夫だということは理解している。
しかし、今の彼女はすぐに攻撃が飛び出してきてもおかしくないくらいの警戒心を放っている。
他の生徒たちが気にしないのが逆に気になる。
僕は先生につられて警戒心を高めながらも教卓の前に立った。
「私の名前はフェリーネ。このクラス、ショウくんの担任ね。よろしくね」
「こ、こちらこそよろしくお願いしますぅ」
「なにか気になるの?」
そりゃ、気になるよ。このままでは精神が持たない、いっそのこと聞いてみるというのもアリだ。よし、そうしよう。
僕は意を決してフェリーネ先生に小声で話しかける。
「フェ、フェリーネ先生」
「なぁに?」
僕は今も、この柔らかな小声からは想像できないほどの威嚇ともとれる警戒心を感じ取っている。
本当になんで皆気づかないんだ。鈍いにも程があるぞ。
「その、僕本当に何もしないんで。そ、そんなに警戒しないでください」
「ワオ。驚いたね。これに気づくなんて団長かテレくらいだからね」
「それで止めてくれるんですか?」
「いいよ。ちょっと試したくなっちゃっただけだからね」
試すって。僕が何かした瞬間にノータイムで攻撃しようしてたくせに。
僕はこの瞬間、フェリーネ先生の前では気持ちを切らないようにしようと心に決めた。




